前川の言葉

 先々週の2月8日、京都市は京都会館のネーミングライツ(命名権 )を売却したと発表しました。

 相手先は市内にある半導体メーカーの「ローム」で、50年52億円という破格の規模。施設として古くなった会館を改修したいという京都市の思惑と、ロームの地域貢献が一致したとありました。

 そんな事もあり、昨日は京都へ。

 京都会館は京都市左京区、平安神宮も近い岡崎にあります。

 日本の近代建築化に大きく貢献した、前川國男の代表作で、完成は1960年。築50年を超えました。

 疎水沿いに建つその姿は、古めかしく映るかもしれません。

 この日は、ブラスバンド大会があったようで、結構賑わっていました。

 前川の代表作としては、上野の東京文化会館などがあります。

 いずれも鉄筋コンクリート造ですが、その重量感を適切なものにするため、前川は腐心していたと思います。

 木造であるかのような、細やかなデザインが細部に行き届いているのです。

 手摺もRC(鉄筋コンクリート造)ならではの造形を、軽やかに楽しく仕上げられています。

 質感の違う素材の組み合わせも巧み。コルビュジエに師事し、丹下健三を育てた彼の言葉が、私は好きです。

 「建築で一番大切なものは永遠性だよ」

 「人間は、はかない存在である。頼れる確固たる存在が必要だ。それに建築は応える必要がある」
  
 「一本の鋲を用いるにも 一握のセメントを用いるにも 国家を 社会を 農村を思わねばならない」

 「自然は美しいね。なぜだと思う。自らに責任を持っているからだよ」

 ホテルフジタ京都は鴨川沿いに建つ名門ホテルで、同じく近代建築の巨匠、吉村順三の設計です。

 先月末、経営難も有り閉館されるとニュースにありました。今年で40年目。近くで見ると、解体の準備か、バリケードがはられていました。

 対比を書きたいのではありませんが、その建築の運命を決めるのは、根底に流れる哲学が影響すると思います。

 責任を果たすため、懸命に生きるからこそ自然、人は美しいのです。