甘いスイカ

 先週の中頃、弟からスイカの差し入れを貰いました。

 仕事先からの頂き物を、事務所の皆で食べたのですが、これがびっくりするくらい甘かったのです。

 祖父は生前、裏山にある果樹園の手入れを一番の楽しみにしていました。

 早朝からスクーターで山に登り、柿、みかん、桃などの世話をしていました。この季節はやはりスイカ。

 私達兄弟も、夏休みの半分は倉敷で過ごしたので、スイカを井戸で冷やしてもらい、丸ままの半分をスプーンですくって食べたものです。

 種は土間にペッと吐き出しながら、従兄弟らと食べたその味といったらもう……とはならないのです。

 頂き物より、断然に水っぽく、甘みの薄いものでした。祖父の所には、白桃等は近所から買いに来る程でしたから、素人仕事ではなかったと思います。

 頂き物がとても美味しかったのに、こんな事を言うのも何ですが、最近の果物はちょっと甘すぎる気がするのです。例えば「今年のみかんは糖度がいくらで、こんなに甘いのです」というのがニュースになります。

 果物の歴史は、知恵と努力による品種改良の歴史だと思います。しかし、度が過ぎると、同じエサを与えられた、養殖のハマチとマダイが同じような風味になるのと同じ事にならないか、と思うのです。果物本来の風味には、酸味だってあるはずですから。

 足るを知るという言葉もあるので、甘さの追求はひと段落してはと思います。更に身勝手を承知で言えば、思い出の味くらいは、そっとしておいて欲しいのです。