もしも火事が起こったら

 先々週だったか、事務所の前が急にあわただしくなりました。

 サイレンが鳴り響き、救急車や消防車が3台、4台と……

 野次馬が集まりだしたので、消防士から”本件は火事ではありません”と事情説明が。近所の人が何かに挟まれ、身動き取れなくなったようです。

 そう言えば今年の夏、私の住むマンションでの事。

 夜の10時頃、火災報知器がけたたましく鳴り出しました。外に出てみると、下階から煙らしきものが上がって来ます。1階のホールまで下りると、前が見えないほど、煙が充満していたのです。
 
 急いで4階まで戻り、妻に身支度を命じ、寝ている子供を毛布にくるんでマンションを出ました。

 消防車がサイレンを鳴らしながら、続々と集まって来ます。私達はそれを返り見ることなく、近所の実家へ向いました。その晩はそちらに泊ったのです。

 翌日、マンションの住人に聞くと昨晩は小雨が降っていたので、中学生くらいの子が玄関ホールで花火をし、何かが少し燃えたとの事。

 建物の中で花火とは全く人騒がせな、と憤りましたがホッとしたのです。

 その晩私が持って出たのは、仕事カバンと2歳の長男、妻もカバン一つ。

 もしマンションにあるものが全部燃えても何とか生きていけるな、と話たのです。

 現在都市部に建つ建築の規定は厳しく、昔に比べる燃え難くなっています。

 しかし日本は元来木造建築の文化です。失火した場合でも故意だったり重大な過失が無い限り、責任は問われません。要するに、火事は十分起こり得るし、お互い様という発想です。

 いざと言う時、人が持てるものは僅かです。手は2つしか無いのですから。沢山持って出たいと言う人は、リュックサックに入れておかなければ物理的に無理なのです。

 当たり前ですが、地震や火事の備えをする事は、ネガティブな事ではありません。何が起こってもポジティブに生きるという意志だと思うのです。
 
 とは言え、実際の火事では無かったのですが、マンションを離れた時の気持ちは何とも言い表し難い感情でした。年末にかけて火の元にはご注意を。