『ケインとアベル』

 映画を観るときや、本を選ぶときの基準で一番大切にしているのは、誰かの推薦です。中でも「まだ、この本を読んでいないなんて、羨ましい」といった類の感想を聞いた作品は必ず読んだり、観たりします。
 私の好きなタレントさんが、そんなコメントをしていたのが、ジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」(新潮文庫)です。
 1906年4月18日に、アメリカとポーランドの全く異なる環境に生まれたケインとアベルが出会い、互いに成功し、互いに憎しみあいながら、互いの成功を妨害します。その一方で、知らないところで相手の人生の危機を何度も救ったりもします。ストーリーは交錯しては離れ、二重奏のように複雑に展開していく2人の男の人生を描いています。
 歯ごたえがありそうで、楽しませてくれそうな小説は、いつも探しています。小説はフィクションであるからこそ、作家の全てを注ぎ込み、言い訳無用の潔さと人生を感じるからです。
 読んでいる時間を楽しませてくれれば十分なんですが、その話の中には、必ず心に引っかかるところがあります。たとえば「ケインとアベル」の場合は次の一節です。
 「運命は勇者に微笑む」 ジェフリー・アーチャー著『ケインとアベル』より