一人前とは

 人の入れ替わりは世の常で、変化のない組織は衰退します。

 よって、実はということも無いのですが、9月に若い男性スタッフが退職しました。辞めるという結論を出したなら、何故とは聞かない事にしているので、本当の理由は分かりません。

 これは自分の経験から決めた事です。

 24歳の時、初めの事務所をクビになった後、ひらってくれた先輩がいました。その設計事務所で働いて1年ほど経った頃、ちょっとしたことで「辞めます」と言ったのです。

 止めてくれるだろうという気持ちが、いくらはあったと思います。しかし結果は「あっそう」という感じでした。

 辞めたいと言っておきながら、止めて貰うもないのですが、大方の若者は私と同じように、自分の発言に責任を持ったことがないと言えば言い過ぎでしょうか。

 いつも誰かが「考え直したら」とか「長い目で見たら為にならないから」とか正しい選択へ導いてくれたと思うのです。

 25歳の時に「辞めずにもう少し頑張ってくれよ」と言われていたら、私はまた違った生き方をしていたと思います。現実は1つしかないので、どちらが良かったを考えるのは全くのナンセンスですが。

 大学生の頃、下宿をしていた同級生が「一人前になるまで帰ってくるなと、父さんに言われている」とよく言っていました。

 しかし、やや違和感を覚えていました。一人前ってなんだろうと。

 「一人前とは逃げないこと」 
 
 出所を忘れていまったのですが、これより分かり易い言葉はありません。意地悪な言い方ですが、一人前は郷里には帰らないのです。

 新聞で、社会派小説家、城山三郎の言葉が紹介されていました。

 「1人のホンモノに触れれば、100人のニセモノを忘れさせてくれる。それが人間社会の有難さである」

 人間関係の問題が、一方にしかないことはあり得ません。勿論私も至らなかったのは間違いないのです。
 
 何度か紹介したのですが、社員の7割に知的障害を持つ人たちを雇用し、チョークを製造している会社、日本理化学工業の大山泰弘会長の言葉を書いてみます。彼は人としての、4つの究極の幸せを定義しています。

 「愛されること、褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること」

 いずれも他者が介在しています。この意味が分かれば、大切なのは自分の都合や考え方でなく、どれだけ誰かの役に立てるかこそが、自身の存在意義だと納得できると思うのです。

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