鬼門のお話

 建築、特に家を設計する際には、いろんな制約があります。鬼門もその一種と言えますが、やや趣を異にします。

 こだわるか、こだわらないかを別にしても、解釈が一通りでないのです。概ね”北東を鬼門、南西を裏鬼門とし、玄関や水廻りを避ける”というものですが、起源の諸説をいくつか上げてみます。

1-古代中国の家創りの知恵で、黄河中流域から見て、北東から攻めてくる匈奴に代表される遊牧民、南西から吹く強い季節風を防ぐ為、玄関を設けない。
2-中国では、地域によって違いがあるもの、北東と南西の風が多く、カマドの火の粉が家の中に入らないよう、台所を設けない。
3-北東は日当たりが悪く湿気がこもりやすい。南西は日当たりが良すぎるので水や食べ物が痛み易いので、水廻りを設けない。
4-風水学に基づいて。

 4は学問なので取り上げるのは止めますが、世間で言われる事は、中国から伝わったものと、生活からの知恵が入り混じったものと言えるでしょう。

 関西ではこだわる人が多いそうで、建売住宅でも、北東に玄関とトイレを作らないのは定石のようです。”大阪城には北東にトイレがあったから、太閤さまは早くに亡くなった”とか言う話は会話として聞いた事があります。
 
 実際に家の設計をする際、仮に北東と南西に向かって45度の範囲とすれば、全体の1/4が凶となってしまいます。これが二世帯住宅等にになると、もう大変なのです。気にする方に対しては、出来る限り工夫しますが、実際問題として、鬼門封じに頼ることもあるのです。ちなみに、京都の北東に比叡山延暦寺があるのも鬼門除けと言われています。

 その鬼門除けですが、これもまた諸説様々。家の場合それぞれに社を作る訳にはいきませんから、その方向に植物を植える。それも中国の故事にちなんで桃の木とか、”難を転じる”のでナンテンとか。魔よけに柊やザクロなどと言うのも聞いた事があります。また白は清浄を表すので白い玉砂利を敷いたり、清めの盛り塩をしたり。

 起源まで立ち返ると、台風などで家が吹き飛ばない(当たり前)ようにし、水廻りに対しては、風通しを良く、光の入りすぎをコントロールすれば良いはずですが、何より住まい手の不安を残さないようにしなければなりません。

 絶対の正解がないのは、それはそれで難しい事と言えます。これは家創り全体にも言えるのですが。

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