味と匂いが付く原理

 先日クライアントとキッチンのショールームに行っていた時のこと。たまたまガスコンロを使って、調理の実演指導をやっていました。

 以前から疑問に思っていたので、その人に「最近のグリルは何故魚を焼く時に、水を入れなくて良くなったの」か聞いてみました。

 魚を焼いた時には脂が落ちます。グリル内の底は熱せられているので、発火する恐れがあったのです。

 しかし最近は底の部分に空気が流れるような設計になっていて、そこまで温度が上がらないようになったそうです。鉄の部分には概ねフッソ加工がしてあり、汚れが取れやすくなったのも要因の一つとのこと。

 逆に「ガスグリルをもっと有効に使って貰う啓蒙活動をして欲しい」と言われました。その一つとして、例えば魚を焼いた後に、続けてパンを焼いても匂いは移らないという事実。

 何かを焼いている時、食材からは水分が蒸発し続けています。この状態で何かを取り込むことは有りません。しかし食材を冷めるまでその中に置いておくと、今度は空気中の水分を取り込み始めます。この時にグリル内の匂いを含んだ水蒸気を取り込むのです。

 なのでグリル内に水が無い事は良いことなのです。 同じ原理で、食材は熱せられている時に、あまり味は染みこみません。一旦温めてから冷えて行く時に味成分が素材に入っていくそうなのです。

 経験的に「煮込む」ということが無意味な場合が多いと思っていました。例えば肉なら煮込めば煮込む程固くなります。美味しくなっていかないと思っていたのです。

 これで「味を染み込ませる」と「煮込む」の違いに裏づけが出来ました。一日経ったカレーが美味しいのは当然だったのです。

 この事を妻に伝えると「それはそうでしょう」という反応。料理する人は誰でも知ってる話のようでした。それはどちらでも良いのですが、何かが解決するのは気持ちよいことです。