カテゴリー別アーカイブ: 02 ことば・本

食を書く作家

 先月は私の好きだった作家が2人お亡くなりになりました。海洋小説の第一人者、白石一郎さんと、もうひとかたが水上勉さんです。

 「飢餓海峡」、「雁の寺」などがとくに有名ですが、私は「土を喰う日々-わが精進十二カ月」が一番心に残っています。

 軽井沢で暮らす水上氏の四季の食卓を綴った本で、その日々の暮らしぶりには、幼いころを過ごした禅寺で学んだことが生かされています。自然にあわせ、野菜と相談しながら料理をする・・。食と生について深く感銘を受けた随筆です。

 幼い頃の、師の教えで、寺の畑に何もないような、寒い冬の来客に、心を砕いて「ご馳走」を用意するくだり。

 「ご馳走とは、旬の素材を探し、馳せ走ってもてなすことだ」

 とういう師のことばがあったと思います。

 精進料理の「精進」とは、精進するための料理ではなく、精進して作る料理だという考え。

 文面のいたるところから、謙虚で慈しみ深さが伝わってきました。

イチロー語録

イチロー選手の活躍は今年に限ったことではありませんが、アメリカの国技〈ベースボール〉の158年の歴史の中で、年間最多安打記録を更新し、頂点に立った今年のことばには凄みを感じます。

「モチベーションが落ちたことは無い」

「目標を設定して到達してしまうと努力しなくなる。満足は求めることのなかにある」

「第三者の評価を意識した生き方はしたく無い。自分が納得した生き方をしたい」

そして子供たちには夢を与えてくれます。

「体がでかいことにそんなに意味はない。僕は見てのとおり、大リーグに入ってしまえば一番ちいちゃい部類。日本では、中間クラスでしたけども、大きな体ではない。そんな体でも、大リーグでこういう記録を作ることができた。これだけは、日本の子供だけではなく、アメリカの子供にも言いたい。
『自分自身の可能性をつぶさないでほしい』――と。

あまりにも、大きさに対するあこがれや、強さに対するあこがれが大きすぎて、自分の可能性をつぶしてしまっている人がたくさんいる。そうではなくて、自分自身の持っている能力を生かすこと、それが可能性を広げることにもつながる」

このことばは、私達大人にも大きな希望を与えてくれます。

スポーツ選手のことば

 アメリカのメジャーリーグで、シアトルマリナーズのイチロー選手が84年ぶりに、年間最多安打記録を更新しました。
 一流のスポーツ選手のことばには、その無駄のそぎ落とされた体のように、シャープで、なお心に響くものがあります。それは成功者の説得力と、常に勝負の世界で生きる人間の、溢れ出てくる感情を併せもっているからでしょうか。
 26歳でアメリカのメジャーリーグに挑戦する初渡米前の会見での野茂英雄
 「希望はあるが、不安は無い」
 イタリアでサッカーのセリエAで活躍する中田英寿
 「失敗も成功も全ては未来の糧となる」
 元サッカーの日本代表で<Jリーグ>立ち上げの最大の功労者、川淵三郎は“抵抗勢力”を前にして
「時期尚早と言う者は100年たっても時期尚早と言う。前例がないと言う者は200年たっても前例がないと言う」

海洋小説

 先週、作家の白石一郎さんの訃報を新聞で見ました。海洋歴史小説の第一人者として高い評価を受けておられて、私も大好きな作家でした。
 1987年の直木賞受賞作品の「海狼伝」は、戦国時代に対馬で育った青年が海賊船に乗り込んで、海の男として成長する長編小説ですが、潮の流れや、風を感じることの出来る秀逸の作品でした。他の作品にも「戦鬼たちの海 織田水軍の将・九鬼嘉隆」など、素晴らしい作品がたくさんあります。
 小説はどんな時間、場所でも楽しめる、自分次第のエンターテイメントだと思います。ワクワクできる作品にめぐり合った時などは、なんとも言えない幸せな気分になりますし、その作品を書いている作家は、無条件に尊敬してしまいます。そして何より安い!
 次の作品を心待ちにしている数少ない作家が亡くなったのは大変残念ですが、多くの時間を楽しませてくれたこと、ワクワクさせてくれたことに心より感謝して、ご冥福をお祈りいたします。
 ちなみに現在読んでいる小説は、ジェフリー・アーチャー「ケインとアベル」です。