裏をみせ 表をみせて 散るもみじ ‐1202‐

 日曜の天気予報は二転三転して晴れになりました。

 奈良へ行っていたのですが、帰りになら100年会館へ寄ってきました。

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 なら100年会館は、JR奈良駅の西側にある多目的ホール。開館は1999年ですが、私が大学生の頃計画が発表されました。

 設計は磯崎新で、そのパースを見て「実物を見てみたい」と強く思ったものです。実際見たのは昨日が初めてでしたが。

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 楕円の平面に、更に大きな楕円を重ね、アプローチとしています。

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 外壁は、工場生産の打放しコンクリートパネル。

 この有機的な曲線に、瓦のようなタイルが貼られています。

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 内部空間もその形状が活かされているのです。

 磯崎新は、東京都庁等を設計した丹下健三事務所出身のエリートです。1960年代から第一線で活躍し続ける建築家。

 現在84歳ですが、私が初めて見た作品は、1984年完成の西脇市岡之山美術館でした。

 他にも色々見に行きました。 

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 2006年の1月、奈義町現代美術館

 岡山県北部の山手にあり、自然の美しいところです。

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 荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛の為の美術館で、とても分り易いコンセプトで創られています。

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 荒川修作らとコラボレートした円筒状の館があります。

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 この建築自体が劇術作品なのです。

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 彼の出身は大分で、九州にも多くの作品があります。

 北九州市立美術館は1974年の完成ですが、2014年の8月に訪れました。

 プリツカー賞こそ受賞していませんが、海外での受賞暦も華々しいものがあります。生きる巨匠と言って間違いありません。

 年初から『建築における「日本的なもの」』という彼の著書を読んでいました。

 結論が分らない程ではありませんが、分り易い文章ではありません。(文末に抜粋しておいたので、興味がある人はどうぞ)

 自分のよりどころにしてきた文章があります。

 人々にとって何等かの生きるよすがと成り得ない小説を、私は一作たりとも書きたくない。

 私は複雑で高邁なものは信じないし虚無に対して常に反抗的である。

 それぞれの場所で傷ついたり挫折したりしながらも、なお闘おうとしている人々のために、私は小説を書いてきたし、またこれからも、そうであり続ける。

 -宮本輝-小説家

 磯崎が創る建築は分り易いのですが、ロジックは難解です。

 難しい事を平易な言葉で伝えることがプロの仕事だと思ってきました。しかし、難しい事を知らなくて良い訳ではありません。

 真理に近付きたいと勉強して来たが、逆のことが足りていなかったのでは。

 磯崎の仕事を見てそんな事を考えます。

 裏をみせ 表をみせて 散るもみじ -良寛-

 光と影、正義と悪。単純と複雑。表だけ、裏だけで進むことは出来ません。

 生きるとは、単純で複雑なものです。

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