先週末に引越しを終えた「遠里小野の家」。
ちらと寄ってきました。
子供用自転車が、生活の始まりを教えてくれます。クライアントは不在でしたが、今回はご両親に会う所用がありました。
近所にあるご自宅へ伺うと、お母様が「先に、守谷さんへ伝えておきたいことがあるの」と仰るのです。
大阪にあったお母様の実家は、かやぶき屋根だったそうです。「新しく建ったあの家に入ると、故郷の記憶が一気に蘇って来たのよ」と。
お祖母ちゃんも一緒に暮らしていたのだけれど、石臼で一緒に大豆を挽き、きな粉を作るの。石臼には3つの穴があり、そこに私が豆をいれて……そんな風景を思い出し、涙が出てきたのよ。
最近建った家を何件か見たけれど、どの家も機能的なお家でした。この家も、スッキリとした現代の住宅だけど、軒の深いかやぶきの家から中庭を見ているような気持ちになるの。何故かしら、昔の日本の風景を思い出すのよ。
子供たちは、本当にいい家を建ててもらったと思ってるの。
喜びの声、叱咤激励と、様々な声を掛けて貰いましたが、涙を流したと言って貰ったのは初めてです。
クライアントと一緒に考え、悩み、決断しこの家は出来上がったのですが、それ以上に、日本人が持つ感性と、建築のもつ可能性を知ることになりました。
孫たちが遊びにきたくなる家になって、代々引き継がれて行けば、これより幸せなことは無いわ。家はお金で買えないものね。
建築家と家を建てると聞いたとき、ご両親にも不安があったと思います。そんな中、若い夫妻と私達を、温かい目で見守ってくれたことに、心から感謝します。
家はお金で買えない。物であり物ではないのが家なのです。