食を書く作家

 先月は私の好きだった作家が2人お亡くなりになりました。海洋小説の第一人者、白石一郎さんと、もうひとかたが水上勉さんです。

 「飢餓海峡」、「雁の寺」などがとくに有名ですが、私は「土を喰う日々-わが精進十二カ月」が一番心に残っています。

 軽井沢で暮らす水上氏の四季の食卓を綴った本で、その日々の暮らしぶりには、幼いころを過ごした禅寺で学んだことが生かされています。自然にあわせ、野菜と相談しながら料理をする・・。食と生について深く感銘を受けた随筆です。

 幼い頃の、師の教えで、寺の畑に何もないような、寒い冬の来客に、心を砕いて「ご馳走」を用意するくだり。

 「ご馳走とは、旬の素材を探し、馳せ走ってもてなすことだ」

 とういう師のことばがあったと思います。

 精進料理の「精進」とは、精進するための料理ではなく、精進して作る料理だという考え。

 文面のいたるところから、謙虚で慈しみ深さが伝わってきました。