鬼の筆‐1120‐

 竹中工務店は、建設会社の最大手の1つです。

 名古屋で創業、神戸に進出し発展しました。その神戸に「竹中大工道具博物館」があります。

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 その新館が、この10月にオープンしました。新神戸駅のすぐ東。坂を上がった所にあります。

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 深い庇は、雨から木造建築を守るためのもの。日本古来からの木造建築の粋と言えます。

 それを、無駄なく、美しく仕上げるかが、作り手のこだわり、心意気。

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 内部にもその意思が伝わってきます。竹中工務店は、ゼネコンの中でも、デザインに拘る会社として知られます。

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 様々な樹種も、実物を見るのが一番。設計者にとっては、実物カタログのような博物館です。

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 梁の継ぎ手も実物が手に取れます。複雑な刻みは、まるで知恵の輪のよう。大工の経験と知恵、そして精密な道具によって生み出されたものです。

 道具の電動化、機械化が進む中、それらを保存するのが、この館の目的とありました。

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 「鬼」と言われた法隆寺の宮大工、西岡常一。唯一の内弟子、小川三夫の大工道具が展示されていました。

 小川は修学旅行で法隆寺を見て、宮大工になることを決意。西岡に弟子入りを懇願します。

 弟子入りを断られた小川は、まず仏具屋で腕を磨きます。

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 その時の彼に当てた手紙が公開されていました。

 理想を、希望を物によって表現されたもの、即ち心の表現こそ芸術というものでしょう。

 単なる形だけにとらわれた作品は本物ではありません。

 作品をとおして、世の人々に何かを呼びかける心が宿っていなければなりません。

 堂塔建築の基盤は此の心の問題です。自らが仏者となり、衆生済度の大願をもって事に当たらねばなりません。

 技術の優秀さは此の心の上に花開くものです。

 (中略)

 作品、それは作る人の魂の深浅によってきまります。

 精進又精進を祈ってやみません。

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 弟子入りを断った若者に熱のこもった手紙を書いているのは、将来を期待してのことでしょうか。それとも、皆にこのような手紙を書いたのでしょうか。

 「鬼」の異名とは全く違う、厳しくも、温かな筆致です。極めれば、人は鬼から仏へと変わっていくのか。

 気が付けば12月。良き年末、新年を迎えられるよう、精進又精進です。

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