タグ別アーカイブ: 二上山

命のないところに煙は立たず‐1857‐

2021年も残すところ1ヵ月になりました。

前回、東熊野街道の美しさについて書きました。

時間帯によって、全く違う景色になるのです。

奈良盆地の東側から見る、二上山の美しさにも触れました。

そういえば2年前の11月、家族で二上山に登りました。

年賀状に使える写真がなく、慌て皆のスケジュールを調整したのです。

この時も、モミジが紅葉していました。

ひときわ赤い訳です。

二上山から奈良盆地を見下ろせば、大和三山を一目で見ることができます。

左端から耳成山。

中央あたり、少し見難いのが天の香久山。

その右が畝傍山です。

この時期は、あちこちから野焼きの煙が上がっています。

畝傍山の麓でも幾筋もの煙が上がっていました。

東熊野街道沿いの民家では、薪で風呂を沸かしている家が残っています。

林業の町なので、薪に困ることはないでしょう。

父の実家は材木商だったこともあり、40年前くらいまで、材木の端材で風呂を沸かしていました。いわゆる五右衛門風呂です。

今から1600年前、聖帝と言われた仁徳天皇は、民家のかまどから煙が登らないのを見て、貧困を感じとります。そして3年間、徴税を禁じた話はよく知られています。

ゼロカーボンを目指す現在ですが、人類史の大半において煙は生きる証しでした。

寒い時期になり、かまどの煙はなくともつい家路を急ぎたくなります。

煙、湯気、水蒸気……いずれも火や熱によって上昇していくもの。そこに人の営みがあるサインと言えます。

命のないところに煙は立たずと言えそうです。


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■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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85歳、職業タクシー運転手‐1657‐

 年賀状のやりとりも、ひとまず一段落です。

 家族分は、11月に慌てて行った二上山

 会社用は住吉区歯科医師会館としました。

 年賀状は減少する一方ですが、私にとっては年の節目です。

 昨年末も、いくつかの忘年会に声を掛けてもらいました。

 勿論のこと会場もまちまちです。

 ある時は、中津のお野菜BAL。

 大国町、木津市場近くの時もありました。

 阿倍野の裏路地もなかなか雰囲気があります。

 勝手知った仲間と過ごす夜は、あっと言う間に時間が過ぎて行くのです。

 私は最後まで居るのがポリシーです。(誰も求めていませんが)ひとりでも残っていれば2次会でも3次会でも。

 昨年はニューヨークで働く同級生2人が、大阪に立ち寄ってくれました。

 友人の店で作って貰ったカクテルは、ニューヨークとマンハッタン。

 とっくに終電は終わっているので、必然的に帰りはタクシーになります。

 深夜なので眠たくはありますが、出来るだけ運転手さんと話すことにしています。

 おそらく、散々自慢話を聞かされているはずなので、基本、こちらから質問するようにします。

 運転手さんの多くは鉄板ネタを持っているものですし。

 この日も「今日はどこを回っていたの」とか「いい日だった?」とか聞いていると、「お客さん、実は私85歳なんです!」と衝撃のカミングアウト。

 聞いた瞬間にもう目がパッチリ覚めました。

 急いで腰のあたりのシートベルトを確認したのです。

 免許証まで見せれくれる念の入れようで、疑う余地は全くありません。

 私がシャキっとしたのを見て、運転手さんが「言わない方が良かったですか?」と。

 「聞いても聞かなくても、結果は一緒なので聞いておいた方が良かった」と訳の分からない返答をしたのです。

 「ナビができて便利になったね」と言うと、「私は使い方が分からないんです」とも。

 どのエリア所属なのか忘れましたが、個人タクシー協会の中には、更に高齢が2人居るそうです。

 「お客さん!私はギネスに載るまで頑張るので見てて下さいね!」と、颯爽と去って行きました。

 そこまで運転が不安な感じはありませんでしたが、立ち上がりの加速は若干早めだったでしょうか。

 高齢者の運転事故が増える中、時代的には免許返納を促する雰囲気です。

 勿論その流れには賛同します。

 タクシーの運転手は別としても、働ける人はどんどん働いた方が良いと思います。

 男性の平均寿命でもおよそ80歳。あくまで平均ですから、ちょっと元気な人なら90歳くらいまでは普通に生きる時代です。

 どの新聞のコラムだったか忘れましたが「労働力不足と言うけれど、まだまだ働ける高齢者の方が沢山居るのでは」という意見もありました。

 高齢者の長所はやはり豊富な経験でしょう。反対に短所は、柔軟性を失いがちなことでしょうか。

 今年の年賀状に「高齢のため年賀状のご挨拶を今年をもちまして失礼いたしますので宜しく!!」というコメントがありました。

 あくまでも主役は現役世代。感謝とサービス精神があれば、それらも解決できるような気がするのです。

 大学の卒業時、ゼミの先生から頂いた色紙にはこうありました。

 己の立てる所を深く掘れ

 そこには必ず泉あらん

 プライベートジェットで逃げ出した、パスポートを4つも持つおじさんに、立てる所を深く掘った85歳運転手さんから説教して貰いましょうか。

 「ぜひみて欲しい!」と思える写真が撮れる1年でありますように。

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『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』2019年12月3日で「「中庭のある無垢な珪藻土の家」」が5位に選出
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『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
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『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
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そこに山があるからさ‐1640‐

 そろそろ年賀状の準備をと思い、写真を見返しました。

 しかし家族4人の写真が全く無し。

 娘が6年生で、旅行にはあまり行けずの1年でした。

 ということで、金剛山地北端にある二上山(にじょうざん)へ。

 奈良盆地から大阪平野に注ぎ込む大和川のすぐ南にある、「ふたこぶらくだ」のような山と言えば分かって貰えるでしょうか。

 高い方が雄岳、低い方が雌岳。雄岳でも517mという高さです。

 すぐ南に日本最古の官道、竹内街道が通っており、橿原へ抜けるメインストリート脇に位置します。

 秋晴れの下、雌岳山頂から東を見ると、奈良盆地から大峰山系を望む素晴らしい景色。

 登り30分、下り20分という記載を見て気楽に訪れたのですが、想像より大変でした。

 大阪側の麓にある太子町からアプローチします。

 結構な標高まで車で登ることができるのです。

 二上山登山口に車を停め、登り始めました。

 高松塚古墳の石棺も、ここで切り出されたものです。

 縄文時代、サヌカイトは矢じり等として使われましたが、それらも採れる重要な石の産地だったのです。

 岩屋の石窟寺院は8世紀に創られたものです。大陸からの影響が色濃く表れています。

 1つ前の写真で横たわっているのは、樹齢600年岩屋杉とありました。

 先に進むと、だんだん勾配が急になってきました。

 子供達2人は急斜面をスイスイと小走りで登っていきます。

 仕事が……などと言っておらず、もっと鍛えなければと痛感したのです。

 盛りとは言えませんが、まだアザミが咲いていました。

 「花ならアザミ」は志水辰夫の小説。この花をみるといつも思い出します。

 真っ赤な花弁をつけているのはツバキでしょうか。

 目で救われるのです。

 丁度30分で雌岳の山頂に到着。

 大人にとっては大汗ハイキングとなりました。

 しかし景色は最高です。

 東には大和三山を望みます。

 一番左は耳成山でしょう。

 少し下った万葉広場からは、西の大阪平野が一望できます。

 右から六甲山地、左からは淡路島が大阪湾へせりだしているのがよく分かるのです。

 遠くは明石海峡大橋まで見えていました。

 気候も丁度よく、家族写真を撮り終え、山頂での束の間の時間を楽しんだのです。

 午後には娘の塾があり、少しルートを変えて下り始めました。

 鹿谷寺(ろくたんじ)跡を目指したのですが、ちょっとしたロッククライミングくらいの険しさです。

 10分くらいで到着。

 こちらも8世紀に創られたものと言われていますが、十三重の石塔は風化が進み、逆に凄みを感じます。

 塔全体が岩の中から削り出されたものと聞けば、もう恐れいってしまうのです。

 日本最古の貨幣である和同開珎が発見されたのもこの周辺とのこと。

 昨秋、近つ飛鳥博物館へ行ったのですが、この石塔のレプリカだったとようやく分かりました。

 日本最古の石窟寺院とある割りには、保護の仕方がやや乱暴な気もします。

 石窟内をのぞいてみました。

 何とか仏像の姿を確認することができました。

 1300年前の手跡が残っていることと、石が風雨だけでここまで削り取られることの両方に驚嘆します。

 勿論のこと信仰対象だったのですが、娯楽の少ない時代、ここでの景色、体感は最高のアトラクションだったと想像します。

 官道1号線沿いでアクセス抜群。大和国最大のテーマパークだった、といったところでしょうか。

 私はどちらかと言えば平地派です。

 街歩きは何時間でも、何日でも全く苦になりません。

 それでも気分爽快だったので、子供に「山登りもいいな」と言うと、長男が「そうやなあ。でも、なんで登るかは分からへん」と。

 「そこに山があるからさ」

 と言うと笑っていましたが。

 人は困難を望む生き物です。

 そうでなければ、結婚も、子育ても、仕事も、勉強も説明がつかないないことが多すぎます。

 「山=困難」としてみます。

 使い古されたフレーズですが、人間と人生の本質をついているからこそ、愛されているのだと思うのです。

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