安藤だからこそ万能ではない‐1186‐

 今日は海の日で祝日。

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 この連休は湖にいたので、私にとっては湖の日でした。

 先週金曜日、安倍首相は、国立競技場コンペのやり直しを発表しました。

 最優秀案に選ばれたザハ・ハディドと共に、注目を集めることになった安藤忠雄。この国際コンペの審査委員長でした。

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 2006年1月9日 住吉の長屋。

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 2006年4月29日 本福寺水御堂。

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 2014年11月4日 TOTOシーウィンドウ淡路。

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 2012年5月4日 西田幾太郎記念館。

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 2006年2月19日 光の教会。

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 2015年1月3日 光の美術館。

 今までに、かなりの数の作品を見て来ました。

 安藤は、シンプルで、秩序ある構成に、ミルマル(最小限)な表現を追求して来た建築家です。

 一方、ザハ・ハディドはアンビルド(実現しない)の女王の異名をとる通り、奇抜で複雑な建築を得意にしています。

 審査委員長を務めた彼が、建設計画を説明する有識者会議を欠席し、かなりのバッシングを受けました。

 食道ガンに続き、すい臓を全摘出していたとあり驚きましたが、勿論出席すべきだったと思います。

 コストコントロールの責任が誰にあるのかが、重要な焦点だと思いますが、少し調べるだけで、分かり辛い、また不可思議な構造が見えてきます。

 今回は国際コンペであるが故、デザイン案をコンペで選び、日本の設計チームが法的、技術的な部分をチェックする、「デザイン監修者+設計者」という構成になっています。

 ザハ・ハディドはデザイン監修者で、法的に設計の責任は負いません。

 クライアントである、日本スポーツ振興センター(JSC)が、その選定を委託したのが審査委員会で、その長が安藤です。

 日本の設計チームとは、どのような段階で、どのような契約になっているのかは知りません。

 また、技術的に大変難易度が高い屋根部分は、競争見積りでなく随意契約となっているようです。

 参考までに、当事務所が、クライアントに企画案を提出し、契約までの流れを書いてみます。

 オファーを貰うと、まず会って話を聞きます。

 要望、動機を聞かせて貰い、先方も提案をして欲しいと思い、私達も提案したいと思ったなら、プランを練って行きます。

 そして、基本計画図面、模型等を作成し、設計料を示した上でプレゼンテーション。

 今回も問題となっている工事費ですが、この時点では詳細な実施設計図がないので、正確には分かりません。

 過去の全作品のデータに照らし合わせて、要望の工事費に、何とか納まるだろうというプランを模索するのです。

 「全ては予想ですが、希望の金額になるまで、減額案を考え続けます。ベストを尽くしますが、絶対という約束は出来ません。しかし、共に戦って頂けるなら、とことんやります」

 こう付け加え、判断を仰ぐのです。

 実施設計、法的チェックをクリアするには、膨大なマンパワーが必要です。全て描き上げ、見積りを取った上で、判断を仰げれば一番良いのですが、それは物理的に不可能です。

 計画が、進むことになれば実施図面を描きあげ、競争見積りに入ります。最も希望に近い施工会社数社と折衝、減額案を積み重ねながら、金額を合わせて行くのです。

 私のやり方だけが正しいとは思いませんが、今回のコンペ、またその後の進め方で、コストの責任を取るべき人は誰なのか。

 結論を言えば、居ないのです。

 ザハは自分の思うデザイン案を提出し、安藤を長とする審査会は、与条件にしたがって選考し、決定。

 デザイン案を出す人と、設計者が同じでないと、このような事が起こります。実現出来るシステムになっていないのです。

 民の仕事をする私達が、これだけの責任を負って仕事をしているのに、国家プロジェクトになると、途端に関係が緩くなる。

 それなら、国家プロジェクトの仕事をしようかと思います。今回のコンペに参加する資格を、当事務所はまだ満たしておらず、それは適わないのですが。

 今はこの世にない仮説を、共に実現するのが、クライアントと建築家の関係です。

 互いに求め合ってこそ、意味があると思うのですが。

 何事も極めれば、万般に通ずという考え方もありますが、建築はどうもそのようなジャンルで無い気がします。

 おそらく反対で、角の立った主張に、あるクライアントが反応し、何かが始まるものではと思います。

 世界の安藤は創るプロフェッショナルですが、評価するプロではありません。当然オールマイティではないし、むしろ最も角張った人だったはずですが。

 あくまで私の知りえた情報での判断ですが、責任無きところに、成功なし。

 当然の結果だと思います。

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