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毎回、食事は真剣‐1707‐

 明日からは雨が続くようで、今のうちにと現場を回ってきました。

 商店街の入口に昔ながらの八百屋さんを見掛けました。

 こちらの商店街もシャッターが目立ちますが、奮闘しているお店もちらほら見えます。

 左に見えるバケツはおつり入れでしょうか。

 ゴムで伸びるザルからおつりを取り出し、新聞紙を巻いてくれる風景もすっかり見なくなりました。

 手書きの値札に、発泡スチロールの陳列台。

 これなら、季節季節の変化もた易いでしょう。

 イチジクの甘い香りに誘われて、近所の畑をのぞいてみます。

 カボチャの黄色い花が咲いています。

 実は葉に隠れて上手く撮れず。

 トウモロコシ。

 ナスビ。

 そしてトマト。

 まだ熟していませんでしたが、夏野菜が勢ぞろいです。

 夏野菜、何とも美味しそうな響きなのです。

 2004年に亡くなっった、作家・水上勉の「土を喰う日々-わが精進十二カ月」は、食に関する珠玉のエッセイです。

 軽井沢での四季の食卓を綴ったものですが、その暮らしぶりには、幼い頃を過ごした禅寺で経験が生かされています。

 貧しかった家庭の事情で、京都の禅寺に預けられたのですが、寺の畑には何もないような寒い時期、来客に食事を準備する場面で、師にこう教えられます。

 「ご馳走とは、旬の素材を探し、馳せ走ってもてなすことだ」

 料理であれ、仕事であれ、全ては心の所産です。

 気持ちの入ったハードワークの先に、悪い結果など出るはずがないのです。

 ある女性クライアントのお母さまが、「下の娘は、仕事が終わると『今日のご飯は何?』と必ずメールしてくるのよ」と笑いながら教えてくれたことがあります。

 こちらの女性、クラッシックバレエのダンサーで、ロシアへの留学経験もある方。

 「毎回、食事は真剣ですから」と言われていました。

 その気持ち、よく分かります。

 出来る限り体を動かすようにはしていますが、それでもバレエダンサーと比べると雲泥の差。

 それで、月水金は出来る限り粗食にし、火木土日を「食べて、飲んで良い日」にするというシステムを思いつきました。

 打合せの関係もあるので完全ではありませんが、15年位は概ねのようなリズムとしています。

 今日は木曜日。

 妻からタイの昆布じめとトンカツだと聞いています。聞いているということは、私にとっても「毎回、食事は真剣」なのです。

 冷えたビールと美味しい肴。適温のキャンティとカマンベールチーズが少しあれば、そこは私にとっての天国。

 今日はもうそんな口になってしまったので、そろそろ上がることにします。

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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【News】
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
■7月21日BS朝日『大改造!!劇的ビフォーアフター』「住之江の元長屋」再放送
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

馳せ走ってもてなす、ご馳走‐1400‐

 7月も最終日になりましたが、暑さは増すばかり。

 夏に花をつける樹は限られますが、サルスベリと夾竹桃がその代表格でしょうか。

 ともに濃桃色。この気温の中で咲き誇るのですから、何ともタフな花弁です。

 昨日は、ある計画のプレゼンテーションでした。

 その際に、夏野菜のお土産をいただいたのです。


全て採れたての手作り野菜。美しいことこの上ありません。

 この暑い中、打合せ前に収穫していただいたと聞き、申し訳ないのと、有り難いのと……

 早速、その日のうちにいただきました。

 塩が少しあれば十分です。

 ゴーヤの淡い苦味は、食欲が増します。暑い地域の知恵はさすが。

 美味しい野菜の嬉しさは、若い頃の比ではありません。

 作家・水上勉は「飢餓海峡」、「雁の寺」など知られます。

 「土を喰う日々-わが精進十二カ月」は食にかんするエッセイで、軽井沢で暮らす水上氏の、四季の食卓を綴った本なのです。

 氏は家庭の事情で、小さい頃から禅寺へ修行に出されます。

 そこでの体験から、自然にあわせ、野菜と相談しながら料理をするという考えに導かれていきました。

 寺の畑に何もないような、寒い冬の来客に、心を砕いて「ご馳走」を用意する場面があります。

 「ご馳走とは、旬の素材を探し、馳せ走ってもてなすことだ」

 師のことばに、全てが表されているのです。

 精進料理の「精進」とは、精進するための料理ではなく、精進して作る料理だとありました。

 中心は自分ではなく、常に相手。

 その考えかたが心を育み、自分を成長させてくれるのでしょう。

 トマト大好きの娘は、モリモリと赤ばかり食べていました。

 これこそ幸せのいろどり。四季の味です。

 そして、心ある人になって欲しいと願うのです。