タグ別アーカイブ: たこ焼き

賽銭箱にとりもち‐1792‐

 昨日から、大阪、兵庫、京都、東京を対象に、三度目の緊急事態宣言が発出されました。

 今回は、飲食店での酒類提供の禁止など、罰則のあるかなり踏み込んだ内容となってしまいました。

 政府は感染源をかなり絞り込んでいるのだと感じますが、対象となっている業種には本当に厳しい局面だと思います。

 また、3/4が関西というのも気が重いのですが、そこは数字が全て。解除も数字で証明するしかありません。

  

 大阪は上町台地を馬の背の頂点とするなら、東西へは下り坂が続きます。

 西側で言えば、松屋町筋くらいまではかなり下っており、そのあたりに建つのがマイドーム大阪です。

 5500年くらい前の海岸線にあたりますが、時代が時代なら完全なるオーシャンビューを楽しめたのです。

 写真で高低差を表すのは難しいのですが、このアングルならかろうじて伝わるでしょうか。

 そのマイドーム大阪の南に建つのは大阪商工会議所。

 白と紅のハナミズキは花を落としはじめていましたが、新緑も美しく、カーテンウォールの背景によく映えていました。

 そのまま南へ歩いていくと、隣地とのあいだに初代会頭五代友厚像を見つけました。

 奥をのぞくとツツジの花道の先に小さな祠が見えます。

 若宮商工稲荷神社は、大阪商工会議所初代会頭の五代友厚が大阪の商工業発展を祈念して奉祀した「商工稲荷神社」と内本町の大阪商工会議所移転建設用地内にあった「若宮稲荷神社」のご神体と合祀され、新たに建立されたものです。

 背後に見えるのはシティプラザ大阪。最上部にある楕円型のデザインが印象的ですがそれを従えるかのようです。 

 「五代友厚は信仰心に厚く、大阪の商工業発展のため商工稲荷神社を建立し、
我が国の商工業の発展のために祈願したといわれています」とありました。

  折角ならと参ってきたのですが、賽銭箱が見当たりません。

 よく見ると、この細長いブロンズの角パイプが、賽銭投入口でした。 

 これでは千円札は入らないなと言い訳しながら、小銭をポトリと流し込んだのです。

 4月の中旬に、近所のたこ焼き屋さん「チャッピー」が閉店しました。

 先代の店主の時からのファンでしたが、外食する習慣のほぼ無い私が、どれだけここで買ったかと言えば本当に申し訳程度です。

 閉店の告知もごくひっそりで、スタッフに「ご存知かもしれませんが、明日閉店のようです」と教えて貰ったのです。

 会社の隣に建つ、マンション「R Grey」は弟がオーナーです。

 作品のページにもチャッピーのたこ焼きの写真を上げていました。

 子供達も大好きだったので、最後のたこ焼きを妻に買ってきて貰いました。

 相変わらず美味しく、なおさら寂しい気持ちになったのです。  

 スエズ運河の海運事故で、キッチン食洗器の納品が遅れ、竣工時期に影響がでました。

 クライアントの配慮で、そこは許して頂きましたが、他のプロジェクトでは5月1日(土)のショールーム周りが、グランフロントが休業につきキャンセル。

 グローバル化が進む中、必ず自分達にも何かしらの影響が出てくるはずです。

 そう考えると、今回の閉店の件は何とも堪えました。

 セキュリティ付きハイテク賽銭箱を初めてみたのですが、昔の賽銭箱なら、「本当に困った時は少しくらい拝借してもいいよ」くらいの緩さがあったように思います。

 紐の先にとりもちをつけて……などと言う場面が、落語にはよく出てきそうです。

 マイドーム大阪前に「西町奉行所跡」の碑がありました。

 遠山の金さんや、大岡越前守は、法を度外視した名裁きをしたものです。

 泥棒も不正も許してはなりませんが、もう少し穏やかで、融通の効く社会であって良いのでは、などとも思っていたのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

80円で天国‐1665‐

 この冬一番の寒気だそうで、昨晩は革手袋をしていても指先がしびれる程でした。

 寒いのは辛いと言いながらも、少しほっとしたのが正直なところでしょう。

 やはり冬は冬らしくあって欲しいものです。

 庭木の老梅が満開です。

 お向かい宅のキンカンも、大きな実をつけていました。

 近所は古い家が多いのですが、季節ごとにバランス良く庭木が植わっているのが分かります。

 個人の庭ですから、どんな樹を植えるのも自由です。

 それでも、多少街の景色をイメージしながら庭木を選んでいたのでしょう。それが昭和という時代なのかもしれません。

 下町を車で走っていると「たこせん120円」という看板が見えました。

 「たこせん」は、せんべいでたこ焼きを挟んだものです。

 私が子供の頃は、満月ポン2枚にたこ焼きを2個で30円。

 それが亀田のカレーせんに変わっても値段は同じく30円。私はどちらかと言えば「カレーせん」派でした。

 大きなえびせんを2枚に割って、たこ焼きが3個の「えびせん」もありました。

 これは50円だったと思います。

 駄菓子屋のおっちゃんが、たこ焼き用の目打ちで中央にキズを付け、パリンと割ってくるのです。

 飲み物は「みかん水」で50円。あのビビッドな黄色が、自然の色ということはないでしょう。

 大阪の下町のガキンチョはこれらで成長したのです。

 そんなジャンクフードで育ったんですと言ったら、あるクライアントが「それはソウルフードですよ!」と。

 なる程、言葉は選びようだなと感心したのです。

 中国なら医食同源と言いますし、ソウルフードということは自身の精神性にも大きく影響を与えることになります。

 ロンドンならフィッシュ&チップス。

 バンコクならパッタイ。

 大阪ならたこ焼き。

 気楽に食べられると言うことは、高価すぎる物はNGです。

 リーズナブルだけどジャンクでない。

 ここに本質がありそうですし、商いの原点も全く同じでしょう。

 近頃はローコスト住宅のオファーが随分減りました。

 若い頃はびっくりする位の低予算でオファーを貰うことが結構ありました。

 とっても個性的なクライアントと、唯一無二の物語を創ってきたという自負もあったのです。

 社会は概ね三角形です。お金持ちが一番多い逆三角形にはなりません。

 そう考えると、コストが高い仕事が少なく、低い仕事が多い方が自然です。

 今もローコストの建物を設計したくないということは全くありません。

 ミース・ファン・デル・ローエが

 Less is more.

 と言った通り、少なきことは豊かなことでもあると思うのです。

 「厳しいですね~」などと言いながら、何とか建築を生み出して行く。それが私の日常でした。

 若い時に「君の得意はどっちなんだ」と聞かれたことがあります。

 「クライアントが本気なら、どっちでも構いません」と答えると、「そんなことでは差別化できないよ」とアドバイスを貰いました。

 それはそうだと思いますが、思っていないことを口にすることはできませんし、設計料には下限を設けているので、尚更なのです。

 小学生の時は、たった80円で天国へ行けました。今でも、220円のビールをプシュとやれば結構幸せです。

 本質は何も変わっていませんが、子供が受験をし、スマホを買えといい、海外研修など聞こえてくると、800円、8千円、8万円……

 もう我武者羅には働くしかないのです。そして分かったことがあります。

 少なきこと=豊かなこと

 ではなく

 少なきこと⇒豊かなこと

 なのだと。

 ピンチの中以外に、チャンスなどある訳がないのです。

■■■ 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』2019年12月3日で「「中庭のある無垢な珪藻土の家」」が5位に選出

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【News】

『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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流しそうめん、始めました‐1501‐ 

 暑い日が続きますが、夏の現場は壮絶を極めます。

 昨年のこの時期は「R Grey」が最後の追い込みに入り、入居募集を始めたタイミングでした。

 webサイトには、その特徴、長所を書いています。

 その甲斐があってか、なくてかは分かりませんが、ありがたいことに現在満室です。

 サイトには「チャッピー」のたこ焼きも載せています。

 前の道を向かって右に進むと、突き当りにある小さな店舗です。

 ここのたこ焼きはサクッとトロッとで、娘の大好物でした。あまりの美味しさに、お礼の手紙を送ったことも。

 しかし、店主のおじさんは高齢を理由に、そろそろ引退を考えていたようです。

 偶然、店を出したい人と繋がり、40歳くらいの人に代替わりしたのが今年の春頃でした。

 外装は新しくも店名はそのまま。生地のレシピもしっかり伝えたそうです。

 正直、開店当時は「前のほうが……」という気持ちもありました。

 しかし、努力しているのか、日に日に美味しくなってきました。

 たこ焼き以外のメニューは当初から充実しており、なかなかに繁盛しています。

 2代続けてファンとなった娘が「流しそうめん」があるから行ってくると。

 食べ方で、そうめんの味がそう変わることは無いと思いますが、何でも工夫です。

 大繁盛していました。

 味がそう変わることはないと書きましたが、「美味しい」という感情は、環境や雰囲気に大きく左右されます。

 風情、清涼感、エンターテイメントと、あらゆる要素がここに詰め込まれているのです。

 合理的という、一見否定しようのない落とし穴に、現代人は陥りやすいと感じるのは私だけでしょうか。

 合理的とはその文字の通り、理にかなっているということです。理にかなっているので無駄が少ない。

 これは理解できますが、人生なんて無駄で成り立っているような気もします。

 合理的≒楽をしたい

 もしそうだとすると、かなり危険です。

 楽をすると、人の感情は動きません。人の感情が動かなければ感謝されたり、求められることはありません。

 その人の価値が無へ向かってしまいます。

 流しそうめんを大げさに書いていますが、この賑わいは全てを表しているとも言えます。

 そもそも流す必要などないのですから。

 とても気になっている店がありました。

 外壁は剥がれ落ち、窓は動きそうになく、側面はブルーシートで覆われています。

 この建物の1階に焼き鳥店が入っていたのですが、先月末で閉店しました。

 全体写真は載せませんが、衛生上も良くないだろうし、建物もいつ倒壊してもおかしくない程危険です。

 店に入ったことはないので、流行っていたのかは分かりませんが、他人事ながら「もうやめておかれたら」と思っていたので、正直少しほっとしました。

 もし、店を続けたいのなら、こうなる前に何かの手を打たなければならなかったはずです。

 お金がないから、修理ができなかったというのは、自分達にしか通用しないロジックです。

 新「チャッピー」の流しそうめんは、1人200円だったそうです。

 それは安すぎるだろうと思いますが、そのサービス精神が、また新たなお客さんを呼んでくるでしょう。

 名経営者の稲盛和夫さんは「土俵の真ん中で相撲をとれ」と言います。

 急に徳俵に足がかかることはありません。現実をよく見て、普段から全力で働けという意味です。

 流しそうめん、始めました

 ギターの弾き語りで、ネガティブに歌う芸人のネタのようですが、結構色々な場面に応用できる気もするのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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【Events】
■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

【News】
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

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直感を信じる勇気、失敗を許容する寛容さ‐1361‐

 塾でテストがあった日、娘はたこ焼きを食べに行きたいと言います。

 大阪で、たこ焼きの昼食は「あり」ですが、娘は会社近くにある店「チャッピー」限定。

 確かに、ここのたこ焼きはまわりがサクッとしていて、なかなかに美味しいのです。

 おじさんは「ちょっといい粉を使ってます」と言っていましたが、多めの天かすも理由かもしれません。

 しかし、ここまで好きだとは分かっていませんでした。

 店のおじさんに、手紙を書くと言い出したのです。

 たこ焼きのイラスト付。

 先日「冬になってお客さんが減ったと、おじさんが言ってたよ」という話になりました。

 「あの店がなくなったら、もうあのたこ焼きが食べれない。自分が食べに行かなくては」と、気が気でなかったようなのです。

 大阪のたこ焼きで、美味しくないところもそうありませんが、よければ食べてみて下さい。

 8個300円。味は私が保障します。

 一応、地図も貼っておきます。

 おじさんは、店を辞めても手紙は置いておくよと言ってくれました。

 この高度情報化社会、SNSやインターネット網に引っかかれば勝者、そうじゃなければ敗者というような風潮です。

 娘の舌がすごく肥えているとは言いませんが、彼女にとって手紙を書きたいほどの店。

 客足が遠い現実をみて、何が正しいのだろうかと考えます。

 彼女の好物はアジの刺身で、醤油を付けずに食べます。また、味の濃いラーメンなどは「辛い、辛い」と全く食べません。

 味覚はは小学4年生くらいが最も鋭いようなので、案外一番味が分かっているのかもしれません。

 たまの外食は「やっぱり美味しかったね」が理想です。

 しかし、飛び込みの店で「見ためより美味しかったわ」や「完全に見掛け倒しだったねえ」も、もちろん「あり」です。

 誰しも失敗は嫌ですが、長い(短い)人生、失敗の数こそが、そのまま成長への係数になるような気がします。特に若い頃は。

 長男がスマホで検索する姿をみて、どうしても寛容な気持ちになれないのは、このあたりにあるのかもしれません。

 はずれの店もよし、時にはぼったくられるのもまたよしなのです。

 ネットで検索して、知ったような顔になっていないか。自分の目、直感を信じる勇気をもっているか。

 そして、多少の失敗を許容できる寛容さをもっているか。

 これらは、大人側の問題だと言えそうです。