一級建築士事務所アトリエm 守谷 昌紀 のすべての投稿

大阪市平野区、設計事務所。建築家 守谷昌紀

孤高のオールラウンダー

 今回のオリンピックで、日本人選手はスケートでメダルを獲得しました。今後、最も注目を集めるのは、女子フィギアスケートでしょうか。

 私は学生時代からしていたこともあり、アルペンスキーが気になります。

 日本人選手は、技術系と言われる「回転」にしか出場しませんが、高速系と言われる「滑降」と「スーパー大回転」の放送がありました。技術系から順に「回転」「大回転」「スーパー大回転」「滑降」という並びです。

 長らく見ていなかったのですが、アメリカのボディー・ミラーが、「滑降」で銅メダル、「スーパー大回転」で銀メダルをとりました。技術系から高速系までこなす選手を、オールラウンダーと呼びます。彼は息の長いオールラウンダーで、今年32歳。攻撃的な滑りと、自由奔放な性格が人気の選手です。

 ワールドカップや、オリンピックでは、国のバックアップを受けるナショナルチームで望むものですが、彼はプライベートチームで戦っていた時期があるのです。

 こうした例は他にもあります。80年代から90年代にかけて、アルペンスキーに、マーク・ジラルデリという選手がいました。彼は幼少の頃からオーストリアのナショナルチームにいたのですが、父親とコーチが対立。オーストリア代表として、試合に出れなくなります。

 そこで、国籍をルクセンブルクに変え、家族だけでトレーニングをして、ワールドカップを転戦。オールラウンダーのあかし、年間総合チャンピオンを5度成し遂げるのです。

 ミラー、ジラルデリとも、行動は破天荒ですが、結果を出し続けました。そして何より、ファンに愛されていました。今回服装問題のあった、日本のスノーボード選手も、思うところがあるでしょう。しかし、全てを自身が一番やりたい事にぶつけ、結果を出し続け、愛される選手になって欲しいと思います。

 マーク・ジラルデリは「孤高のオールラウンダー」と呼ばれました。皆が尊敬の念を持っていたのです。

脳の鍛え方

 先週末、webで見て釘付けになった記事がありました。バンクーバー五輪の開幕に合せて、再掲載されたようで、北島康介選手に関するものでした。

 彼に脳のしくみを教え、アドバイスをした脳科学者、林成之氏の記事で、その著書もすぐ買いました。「勝負脳の鍛え方」は2006年初版となっていますが、北京五輪の試合後、北島選手は「勝負脳を鍛えたおかげ」と発言しているのです。

 林氏の記事を要約するとこうでした。テーマは-「集中力」が増す3つの仕かけ-。五輪選考会を見に来て欲しいと言われた場面から始まります。 

 北島選手は五輪選考会で、ラスト10mまで世界記録を体半分上回っていた。結果は0.43秒及ばず。脳は「ゴール間近だ」と思った瞬間に機能が低下し、運動機能も低下する。「自分へのごほうび」をモチベーションに働く部位があり、ここが活発に働かないと脳は活性化しない。

 重要なのは、ごほうびが得られそうだという「期待」によって起こる点で、結果を手にしたと思うと、むしろ機能は低下してしまう。

 それを伝えると、平井コーチと北島選手は、壁にタッチした後、振り向いて電光掲示板を見た瞬間をゴールだと考える訓練を重ねた。このアドバイスから1カ月後、見事世界記録を塗り替える。

 一流のスポーツ選手は「まだまだ努力が足りない」「たくさんの課題がある」という。一流になればなるほど、謙虚というより自然に口にする。彼らは、コツコツ努力するとは決して言わない。

 根源的な脳の3つの本能に「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」がある。「生きたい」から派生する、第二の本能と言うべきものに「自分を守りたい」がある。コツコツ努力するという言葉の背後には、「失敗しないよう慎重に事を運ぼう」という意識が隠れている。「失敗するかもしれない」という否定語は、この第二の本能を過剰反応させ、脳の働きにブレーキをかける。それゆえ、コツコツやるという人は、自分が現在持っている以上の力を発揮することが難しい。

 反対に、長距離走の場合でも、短距離走のつもりで全力疾走を繰り返すことで、あるところから人間の能力はぐーっと伸びる。ふと気付くと、到底超えられそうもなかった壁を突破しているものなのだ。

 アドバイスで難しかったのは、ブレンダン・ハンセン選手について。ハンセンは当時の世界記録保持者で、最大のライバル。人間は結果を求めると、持てる能力を十分に発揮出来ない。スポーツで言えば、「敵に勝とう」と思った瞬間、能力にブレーキがかかる。

 根源的な本能に逆らうと、脳のパフォーマンスは落ちる。「敵に勝つ」は、「仲間になりたい」という本能に真っ向から逆らう考え方。地球の歴史の中で絶滅した生物の共通点は、周囲にいる仲間とうまくやっていけなかったことである。

 「ハンセンをライバルだと思うな。自分を高めるためのツールだと思へ。そして、最後の10mをKゾーン(北島ゾーン)と名づけ、水と仲間になり、ぶっちぎりの、感動的な泳ぎを見せる舞台だと思いなさい」ハンセンとも水とも「仲間になれ」とアドバイスした。結果は北島は金メダル、ハンセンは4位に沈んだ。

 結果を求めるあまり能力を発揮できない愚を避けるには、目標達成の「仕方」にこだわるのがいい。勝負でなく、達成の仕方に勝負を懸ける。そして、損得抜きの全力投球をする。そんな時、人間は信じられない集中力を発揮する。損得勘定とは、結果を求める気持ちにほかならないからである。

●point 1:ゴールを決めない
●point 2:コツコツやらない
●point 3:結果を求めない

 最近ゴシップで騒がせたタイガー・ウッズ。このパットを決められれば自分が負けるという場面でも、ボールがカップに近づいた瞬間「入れ!」と心の中で叫ぶそうです。

 北島選手も、否定的な言葉を使わない、自己ベストを3割上回ることだけを考えたとありました。

 ウッズはその考え方を経験で得たのか、アドバイスでそうなったのか。一流選手は、考え方が一流なのです。

要る

 昨日はバレンタインデー。娘の誕生日でもあります。2歳になりました。

 実家でケーキを用意してくれました。近所で評判の、駒川中野にある「ミラベル」。生クリームが軽いというか、大人に人気です。

 当たり前ですが、ロウソクは2本。これがせめて20本になるまで、頑張らないとと思います。いつまで一緒に祝ってくれるかは、分かりませんが。

 こちらは全国共通のバレンタインデー。妻に「チョコレートは?」と聞くと「要る?」と。

 「そら要るワ」と言うと、「そしたら、子供達と一緒に買いにいってきまーす」と日曜の午前中、出掛けて行きました。

 大方はそんなものなのかもしれません。

 ハレとケ。ハレ(晴れ)は特別な日。ケは日常です。穢れるとは、ケ(気)がれる、気力が衰えるから来たという説もあります。

 ハレは、気を充電するため、日常を元気にする為にあると言えます。中国、日本では節目を大切にして来ました。その一つが、月初にあった節分です。

 節目、記念日=ハレは大切にするほうが良いのです。チョコレートが欲しいのではないのです……

小説

 今日2月11日は建国記念日。この季節にしては、生暖かい雨で変な感じです。

 最近あまり本を読めていませんでした。いつも一冊はカバンに入れていますが、一昨年は司馬遼太郎の「坂の上の雲」に時間が掛かり、昨年は何故か進みが悪く。今年は意識して読んでいます。

 私は実用書より小説です。事実でなくて良いという制限は、書き手の全てを問われていると思うからです。親愛なる開口健は「小さな説を書いて飯を食っている」といつもうそぶいていました。その説を教えられたり、共感したりしたいのです。

 最近読んだ2冊は「坂の上の雲」と比べて進むのが早いこと。司馬作品は好きなのですが、ちょっと時間が掛かるところが難点です。

『秘密』 東野圭吾 
2009/12/29~2010/1/21 
 ある日突然スキーバスの転落事故で、妻と小学校5年生の娘を失う。娘は奇跡的に助かったが、何故か精神だけが妻になっていた。

 娘の体で生きる妻は、色々な問題をかかえながらも、中学生、高校生と成長して行く。その過程は、夫婦とも親子とも言える奇妙な関係との葛藤だった。

 ある日、妻である時間と娘である時間が交互にやってくるようになる。徐々に妻である時間は減り、完全に娘となる日がやって来た。

 娘の結婚式の日、あることに気付く。娘が、最期の日までもって行く秘密は……

『クローズド・ノート』 雫井脩介
2010/1/22~2010/2/8

 教育大学に通う、女子大生が引っ越した部屋に、前の住人のノートが残っていた。小学4年生を担任をする、新人教師のもので、ある日そのノートを見てしまう。

 そこには、生徒達からの温かいメッセージ、不登校児と新米教師の奮闘、適わぬ恋の話まで。どんどん引き込まれて行くことになる。

 女子大生は文房具屋さんでのアルバイトをしていた。万年筆売り場を担当し、そこで若いイラストレーターと出会う。そこから彼女の淡い恋も始まるが、ノートはある日突然途切れた。
その真相を確かめると、驚きの事実を知ることになる。そして更なる真実を知った時……

 映画化されて沢尻エリカが主演。舞台挨拶で問題を起こしたまさにその作品。

 あらすじだけを書いてみましたが、最近の流行作家の作品が何と面白いこと。特に東野圭吾は他にもベストセラーを連発し、「ガリレオ」等ドラマの原作にも多く使われていました。

 雫井脩介は初めて聞いた名前でしたが、題はなんとなく聞いていました。作品の中で、女子大生はアルバイト先の社長に「魂を込めて売れ」といわれます。更に社長の娘である先輩に、魂とは「共感出来るストーリー」の事と教られます。そこに、共感するのです。

 今は重松清の「流星ワゴン」を読み始めています。雨の日の午後は、のんびり読書でも。

鳥羽で食べる

 週末は、友人家族と旅行に行っていました。

 高校の同級生で、子供の年恰好が似ていることもあり、何度か一緒に出掛けています。

 実は、昨年の秋口から、直前に二度キャンセルしていました。一度は弔事だったのですが、もう一度は完全に私の都合。

 本当に申し訳ないのですが、予定が立たないから断るのでなく、どうしても無理だった時は、分かってくれるだろうと思える友人なのです。

 土曜日はホテルで待ち合わせて、近鉄鳥羽駅前の寿司割烹へ。

 先代の出身が天王寺なので「大阪屋」。ここのエビフライはもう抜群でした。

 私はエビフライが一番の好物なのですが、今でも口に蘇って来るくらい美味しかったです。

 他にも、地元では藻魚というタケノコメバルの刺身、マコガレイの煮付けと、どれも美味しかったです。最後にオマケで、マグロの胃袋と肝の煮物を出してくれました。

 新鮮なら、魚は内臓が一番ですが、オマケで出してくれるその気持ちが嬉しいものです。この大将、憎めない感じの人で、話も楽しかったです。もう6年もブログを書いているとのこと。 

 二家族で1万6千円。鳥羽に行くなら、お勧めです。

 翌日は、ホテル前の浜で遊んででから、鳥羽水族館へ。

 かなり寒かったからか、意外なほどの人出でした。

 遅めの昼食は、肉料理「まつむら」へ。

 友人は医師で、美味しいものを食べる為に1時間ジョギングをしていると言う人。要は食道楽なのです。

 こちらもお勧めの店だけあって、流石の味でした。

 今回から、新たに増えた下の女の子は、ちょうど6ヶ月。ぐずることも無く、本当にかしこくしていました。

 長男同士は久し振りの再会にも関わらず、とてもウマが合うようです。

 次は春に出掛ける約束をしました。

細く、狭い

 昨日は京都に行っていました。

 四条河原町界隈でも、路地をのぞくと静かなものです。

 料亭の軒下に有るあの細工物。前から気になっていたので調べました。

 犬矢来(いぬやらい)とか犬防ぎと呼ばれるようです。雨だれの跳ねや、犬猫の糞尿から建物を守るものでした。

 奥にある馬のから守る、駒寄せから発展したという説や、壁際での盗み聞きを防ぐ為という記述もありました。

 小走りで行く芸妓さん。

 街並み、人。誰に拘束される訳でないものが、街の風情をかもし出します。

 それらは細く、狭いほどよいのです。

 朝、庭先を見ると梅の花が咲いていました。

 今日は立春です。

スキー板

 小さい頃からスキーに行っていたので、大学ではスキー部に入ります。

 それによって色々な経験をさせて貰ったのですが、子供にも同じ経験をさせたいかと言うと、話は別です。やはりスキーは、結構なお金が掛かるからです。

 しかし覚悟を決めました。スキー板を一日レンタルしても、3,000円前後。それならいっその事と、長男に買い与えました。

 一番安かった、ブーツ、スキー、ビンディング、ストックの4点セットで14,900円。高級品ではありませんが、立派なものです。3年くらいは履いてもらおうと思うので、かなり大き目なのですが。

 下の娘も、父の手製の練習マシンで猛特訓中。

 何故か、これを気に入っているのです。

 近場のスキー場、ベルク余呉に行ったのですが、ゲレンデをすいすいと歩きます。

 このスキー板も父の手製。

 どうもプラスチックスキーと違い、エッジがあるので扱い易いようなのです。 

 折角なら、あの風を切る爽快感を知るまで、続けてほしいと思うのです。

理念

 来月1日、日本航空(JAL)のCEO就任を前に、世間の注目を集める稲盛和夫さん。何度も講演を聞きました。

 技術者だった稲盛さんは、27歳で京セラを創業しますが、その際には経営の「け」の字も知らなかったと言います。その中で、どうすれば企業は永続的に発展出来るのかを考え、経営理念を作り上げました。

 著書に、こんな場面があります。

 商売の神様、松下幸之助さんの講演会に行った時のこと。その日は、ダムがなければ、大雨で川は氾濫し、日照りで川は枯れる。お金を水に例えた、有名なダム式経営の話でした。

 講演終了後の質疑応答の際、ある経営者が「ダムが大切なのは私達も分かる。ただ、そんな余裕がないから、どうすればダムが出来るのかを聞きたいのです」と質問します。多くの人の気持ちを代弁したものでした。

 幸之助は苦笑し、間を置いて「そんな方法は私も知りまへんのや。知りませんけど、ダムを作ろうと思わんとあきまへんなあ」と言います。場内には失笑がもれ、失望に似た空気が支配しました。

 その時、体に電流が走ったとあります。まずは、思わないといけない。全ては一人の思いから。

 JAL再生という難事業を引き受けた稲盛さん。JALの社員にどんな言葉で語りかけるのか、とても気になります。

 自分もこの質問者になっていないか?常に問いかける必要があります。

マイケル・ジャクソン『This is it』 

 昨年の6月。に急死したマイケル・ジャクソン。ロンドンでの公演を1ヵ月後に控えていました。直前リハーサルの映像を集めたドキュメンタリー映画が『This is it』です。

 何とか劇場で観たいと思っていました。アンコール上映も終了間際。滑り込みで間に合いました。

 スリラーのミュージックビデオリリースが1983年。特別なファンという訳ではなかったのですが、中学生だった私も繰り返し見ました。時代は、海外の映像が頻繁に日本で紹介され始めた頃です。

 通学の電車の中。初めて買ったウォークマンで色々な洋楽を聴きました。その中にはマイケルの曲も。洋楽体験の入口に、彼の曲があったのです。

 『This is it』ツアーの監督が、この映画の監督も務めています。

 リハーサル中、序々に熱を帯びてきたマイケルのダンスパフォーマスに、競演者達が盛り上がる場面があります。それに応えるように、マイケルも更に熱の入ったパフォーマンス繰り広げます。舞台の下で、競演者達は更に熱狂します。

 監督は「まるでrock’n rollの教会だ!」と。皆に応えるマイケルは、ほとんど息が乱れていませんでした。観客の前に、世界の一流が集まったスタッフを、完全に魅了していたのです。

 高音、雄たけび、うなるような低音、天使のようなささやき。ありとあらゆるダンスのバリエーション。よろめいたり、バランスを崩す場面など一瞬もありません。細くしなやかな体は、毛先までがコントロールされているかのよう。惰性のないその動きは小気味よく、観ているだけで快感を覚えるのです。

 死因には、麻酔や睡眠導入剤などがあがっています。映像には亡くなる数日前のものもありますが、そんな事は微塵も感じさせません。それどころか、50歳とは思えない軽快でシャープな動きでした。

 晩年は様々なスキャンダルにまみれましたが、今あるのは、彼のステージは永遠に見れないという後悔だけです。同じ時代に生き、チャンスがあったにも係わらず。リハーサルであのステージ。やはり見るなら超一流だと思ったのです。

 映画の終盤、スタッフと団結する場面で、マイケルは皆に語りかけます。

 「観客は日常を忘れる体験を求めている。未知の領域へ連れていこう」 

  King of Pop

 その称号に、亡くなる前とは違う重みを感じるのです。

工藤公康

 現役で実働最長記録を更新中の工藤公康投手。キャリアをスタートした西武を出て、3球団を渡り歩きました。47歳になる今年は、古巣に復帰します。

 一昨日から新聞にインタビューが載っていたので、抜粋してみます。

 プライドには2つある。「捨てなきゃいけない」ものと、「持ち続ける」もの。

 捨てなきゃいけないものは「過去の栄光」。「オレは昔ね……」なんて言い出したら終わり。ボクは自分の心に問いかける。「昔の自分と、今の自分は違う。しっかり現実を見ろ。野球を続けたいなら動け、トレーニングをしろ」と。

 逆に「持ち続ける」プライドは自分がやってきたこと(トレーニングや勉強)に対して。長く現役を続けるために人一倍やってきたつもり。

 私に過去の栄光などありませんから、勉強なしでは全くプライドのない人間になってしまいます。プライドを持ちたければ、ただ勉強あるのみ。

 連載最終日の今日は、家族の話でした。工藤選手には、5人のお子さんがいます。年齢は分かりませんが、努力と節制を持ってすれば、もしかすると孫に実際の投球を、という場面があるかもしれません。

 ただ登板できれば良いとは考えていないでしょう。今シーズンも注目しています。アンチエイジングなどとは違う、人の無限の可能性を感じます。