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不遇の直情家、ゴッホ‐1668‐

 新型肺炎で、観光地が閑散としていると言います。

 日本経済はインバウンドにかなりの恩恵を受けていたので、観光に携わる企業はかなりの痛手だと思います。

 世の中は繋がっているので、勿論他人事ではないのですが。

 しかし兵庫県立美術館はかなりの賑わいでした。

 1月25日から3月29日まで開催のゴッホ展です。

 開館30分前に到着しましたが、チケット売り場はすでに30人ほど列が。

 みるみるうちに列は伸びて行きます。

 最近は、演出も華やか。

 webサイトのTOPページにある『糸杉』です。

 今回はこちらが目玉でしょうか。

 チケットを購入し、いざ展示室へ。

 いやがうえにも期待が高まるのです。


1887年9-10月 『パイプと麦藁帽子の自画像』

 観終わったあと、娘に小学館の「学習まんが人物館」を買い与えました。

 読んだ後、娘もそれなりの衝撃を受けているようでした。フィンセント・ファン・ゴッホの人生がいかに苦難に満ちたものだったかにです。

 1880年、27歳で画家として生きる決意をしたゴッホですが、生前は評価されずで絵も殆ど売れませんでした。

 画家としての才能を信じるのは弟のテオだけで、彼だけが良き理解者だったのです。

 これまで読んだ本からの印象ですが、情熱的ではあるがカッとなりやすく、ハンドルで言うところの「遊び」が少ない、直情家だと感じます。

 牧師の手伝いなどをした経験から、画家たちが集まってすむ修道院のような暮らしを理想という考えを持っていたようです。

 1888年2月、それを実行に移した場所が南仏のアルルです。


1988年6月 『麦畑』

 今回もその時期の描かれた作品が多数ありました。

 南仏の自然に魅入られたゴッホは、絵の具を厚く塗り重ねていく技法を確立していきます。

 ひまわり、麦畑、そして『夜のカフェ・テラス』で描いた、黄色く照らされた屋外席。

 私は『夜のカフェ・テラス』が一番好きなのですが、ゴッホの黄色はどんな展覧会場でも一番初めに目に飛び込んでくる気がします。

 当時、賛否両論だった印象派の画家とも知り合い、大きく影響を受けています。

 彼らをアルルに誘うのですが、実際にやってきたのはゴーギャンでした。

 ところが口論から「そんな役に立たない耳なら切り落としてしまえ」と言われ、あの耳切り事件が起こってしまうのです。

 1889年、自らサン・レミの精神病院に入院することになりますが、そのときに彼の心をとらえたのが糸杉でした。

1889年6月 『糸杉』

「糸杉のことを私はいつも考えている。-ひまわりの絵
のような何かを描きたい。私が糸杉を観た徳、誰もまだその絵を描いていないのに驚いた。線といい、形といい、エジプトのオベリスクのように美しい。そして緑が何とも特別なすばらしい色である」

 弟テオへの手紙でこう語っています。

 糸杉がモチーフとなっている絵は初めて観たと思いますが、最晩年の傑作だと思います。

 キャンバスからはみ出してしまっているその構図が、彼の興奮と息遣いを感じさせます。

 渦を巻くようなタッチは、彼の人生への迷いそのものでしょうか。

 その後、医師のガシェを頼ってオーヴェールへ。1890年の7月27日にピストル自殺を試み、29日に亡くなります。

 この『糸杉』を完成したおよそ1ヵ月後のことでした。

 7月に描いている『カラスのいる小麦畑』は、鮮やかな黄色の小麦畑を、暗い空が覆い、真っ黒なカラスが群れを成して飛んでいる構図です。

「自然が大変美しいとき、私は驚く程に澄んだ気持ちになる期間を経験する。私はもはや私心がない、そして絵は夢のように思われる」

 確かに死を予感させる一枚で、寒々しい迫力を感じます。

 それから97年後、1987年にゴッホの『ひまわり』を安田生命が53億円で落札します。

 この高度情報化社会ならという仮定はナンセンスですが、本当にゴッホの才能を見抜く方法はなかったのでしょうか。

 今年の7月ロンドンのナショナルギャラリーから『ひまわり』が大阪にやってくるようです。

 この不遇の直情家に何故か惹かれます。おそらく長い列ができるでしょうが、また出掛けて行くのだと思うのです。

■■■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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■2月3日 『Houzzの特集記事』「阿倍野の長屋」が取り上げられました
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
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地域情報サイトに掲載されました

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