カテゴリー別アーカイブ: 04 建築

すべてはドリームショトのために‐1047‐

 週末は、千葉、東京へ出張へ行っていました。

 土曜日は泊りがけで柏の家の撮影でした。日曜日は「芝公園ラボ」の撮影。

 前回は、手直し工事の最中だったので、完成形を見れたのは今回が初めてです。

 宇宙品質のクラブを世に送り出すのがこのプロジェクトの使命。やはり打っている絵がないと様になりません。

 スタッフの方に頼んだのですが、服装の雰囲気から、私が打つことになりました。

 ゴルフクラブを握るのは、およそ10年振りか。芝公園ラボには、最新の計測設備があります。

 その計測技術によって、完璧なオリジナルクラブを生み出せるのです。

 弾道は、正確にスクリーンへ描かれます。
  
 写真だけなので、形になっていればよいのですが、つい力が入ります。

 1打目はトップ。3打目だったか、完璧に捕らえた感触がありました。270ヤードを超え、スライス、フック無しで、コースのど真ん中。気分は最高です。

 映像とはいえ、以前の感覚が蘇ってきます。その後、大したショットは出ませんでしたが。

 父がゴルフ好きで、中学生くらいからコースにもでていました。自分の中では得意なスポーツだったのです。

 しかし、コースに出る前だけ、血豆が出来るほど練習し、体裁を保つのに疲れてきたのが30歳頃。

 中途半端は嫌いなので結局辞めてしまいました。

 ルネサンス期の3大発明といえば、火薬、活版印刷、羅針盤です。

 これによって、文明は飛躍的に発展しました。

 羅針盤によって、航海技術は発展。大航海時代がやってきたのです。

 FOR YOUR DREAM SHOT-すべてはドリームショトのために-

 この言葉を見た時、このプロジェクトの成功を確信しました。

 仕事、人生とは、未知の大陸を目指す航海のようなもの。

 そこにあると信じるものが、心の中の羅針盤を信じ、船を出すのです。

 「柏の家」の撮影は、宿泊、食事まで提供して貰いました。こちらはまたの機会に。 

晴るかす‐1046‐

 3月7日にオープンした「あべのハルカス」。

 以前、天王寺の密集した街に高層ビルは似合わない、と書きました。

 もし、ブルジュ・ハリファ(ドバイ)のように、大平原に建つなら別です。

 天王寺動物園、サバンナゾーンからの構図です。

 おぼつかなく思いつめたること、すこしはるかさむ
 (胸の思いをあなたに打ち明けて晴らしたい)

 名前の由来となった「伊勢物語」の一節です。

 「晴るかす」は「晴らす、晴れ晴れとさせる」という意味と、公式サイトにありました。

 ロゴを決め、後付の理由が多い中、意味合い、響きとも好感がもてます。

 春香す。 

 春化す。

 春ではなく晴るでしたが、天王寺界隈はこの世の春といったところ。

 「去る」3月を逃がさないよう、年度末までラストスパートです。

 わが心晴るかさむように。

お金では買えない、家‐1034‐

 先週末に引越しを終えた「遠里小野の家」

 ちらと寄ってきました。

 子供用自転車が、生活の始まりを教えてくれます。クライアントは不在でしたが、今回はご両親に会う所用がありました。

 近所にあるご自宅へ伺うと、お母様が「先に、守谷さんへ伝えておきたいことがあるの」と仰るのです。

 大阪にあったお母様の実家は、かやぶき屋根だったそうです。「新しく建ったあの家に入ると、故郷の記憶が一気に蘇って来たのよ」と。

 お祖母ちゃんも一緒に暮らしていたのだけれど、石臼で一緒に大豆を挽き、きな粉を作るの。石臼には3つの穴があり、そこに私が豆をいれて……そんな風景を思い出し、涙が出てきたのよ。

 最近建った家を何件か見たけれど、どの家も機能的なお家でした。この家も、スッキリとした現代の住宅だけど、軒の深いかやぶきの家から中庭を見ているような気持ちになるの。何故かしら、昔の日本の風景を思い出すのよ。

 子供たちは、本当にいい家を建ててもらったと思ってるの。

 喜びの声、叱咤激励と、様々な声を掛けて貰いましたが、涙を流したと言って貰ったのは初めてです。

 クライアントと一緒に考え、悩み、決断しこの家は出来上がったのですが、それ以上に、日本人が持つ感性と、建築のもつ可能性を知ることになりました。

 孫たちが遊びにきたくなる家になって、代々引き継がれて行けば、これより幸せなことは無いわ。家はお金で買えないものね。

 建築家と家を建てると聞いたとき、ご両親にも不安があったと思います。そんな中、若い夫妻と私達を、温かい目で見守ってくれたことに、心から感謝します。

 家はお金で買えない。物であり物ではないのが家なのです。

菊竹の狂気‐1011‐

 週末は出雲市で、 建築家展に参加していました。

 出雲大社は60年に一度の遷宮の年にあたります。日本で唯一「神在月」を許されるこの地に、全国の神様が集まります。

 まさに「神迎祭(かみむかえさい)」の真っ最中。多くの参拝者で賑わっていました。

 国宝の本殿は、今年屋根が葺き替えられました。檜皮にも、新しさを感じます。

 門をくぐると、まわりには荒々しくゴロタ石が敷き詰められてします。

 神様と人の結界を表し、非常に歩きにくくなっています。簡単には寄りつけないようになっているのです。

 本殿の手前、拝殿のすぐ横にある「庁の舎(ちょうのや)」。設計者は菊竹清訓で、神社のオフィスといった建物です。

 菊竹は1960年に発表されたメタボリズムの体現者。

 都市、建築には「新陳代謝」が必要という考え方です。東京で仕事が始まった時、その代表作「スカイハウス」を真っ先に見に行きました。。

 庁舎(ちょうのや)は、1963年の完成。この建物を見た瞬間から、夢中でシャッターをきり続けました。

 建物のモチーフは、稲穂を天日で干すそのフォルムです。

 しかし建物全体のイメージを決定づけるのは、側面を覆うルーバーです。これが建物内へ、柔らかな光を落としています。

 この日は朝から雨が降っていました。

 このルーバー状のコンクリートには溝があり、そこにポタポタと雨水が落ちています。

 言ってみれば、これらは全て軒樋だったのです。

 また、それに覆われているのではなく、樋と樋の間にはガラスが入っています。屋根であり、外壁であり、開口部でもあったのです。

 50年が過ぎ、わずかに雨がにじんでいました。

 これらが全て分かったとき、菊竹の狂気を感じました。

 もの創りにおいて、考え方が大切です。しかし、その考え方を動かす、情熱がなければ、何も達成できません。しかも「狂」がつくくらいでなければ、人の心など動かないと感じたのです。

 今回は仕事へ行ったのですが、多くの刺激とエネルギーを貰いました。

 出雲大社はあらゆる縁を結ぶ神様として知られます。それならこれも何か縁なのか。

クライアントのクライアントになってみる‐1009‐

 昨日は夕方から、萱島の写真スタジオ「Ohana」へ行っていました。

 前回来たのが娘の七五三。毎年来ようと言いながら、3年が経ってしまいました。

 カメラマンの石井さんと、一緒にこの店舗を考えていたのが2008年から、2009年にかけて。

 完成してから4年が経ちました。

 2階スタジオの小窓は、子供がのぞきたくなるようデザインしたものです。

 そこからのぞいているのは、うちの子でなく石井さん。

 全く変わらず、茶目っ気たっぷりの人です。

 まずは娘の証明写真から。

 頭の上にはすでに被り物で、見ている長男も爆笑です。

 「証明写真で笑わせる必要があるの?」と奥さんから突っ込まれながら。

 午前の撮影では「ウケ」がいまいちだったそうで、「ゲラ」なうちの子供で自信回復、と言っていました。 最近は、就活写真を撮りに来るお客さんも多いそう。

 撮影代1050円で、プリント315円はかなりリーズナブルな金額だと思います。

 その後、家族写真の撮影をして貰いました。

 これも涙が出るほどの大爆笑。

 このエンターティナー振りを、いつかYou TubeにUPしたいと思っているのですが。

 撮影の後は「センスの良い知人宅のリビング」と設定した、1階で写真を選びました。

 どの計画も、思い入れとストーリーが結晶化されたもので「Ohana」もその一つです。

 仕事をする側、仕事を依頼する側。

 この両者が、真の意味でのパートナーになった時、進歩、発展が生れるのだと思います。

 この関係性がなければ、言い方は難しいのですが、単価通りの仕事にしかならないと思うのです。

 石井さんの仕事ぶりを見て、またクライアントのクライアントになってみて、そんな事を思います。

ブランドの魅魔力 ‐1002‐

 ブランド(brand)の語源は「焼印からきている」と、「試験によくでる英単語」にあったはずです。

 諸説あるようですが、やはり牛に焼印を押す(Burned)から派生したというのが、有力のよう。

 銀座でのプロジェクトは、かなり高額なものを売る店舗のデザインです。

 それで、いわゆる高級ブランド店を見て回る事になりました。

 リニューアルしたばかりの銀座松屋のルイ・ヴィトン。外装のデザインは青木淳、内装はピーター・マリノ。

 中央通りを隔て、向いにあるのがカルティエとシャネル。

 カルティエは外観がシルヴァン・デュビュイッソン、内装が ブルーノ・モワナー。

 シャネルは再びピーター・マリノの設計でした。
 

 晴海通りのディオールは外装が乾久美子で、内装はまたまたピーター・マリノ。ピーター・マリノの独壇場です。

 空間興味で入る事はあっても、あまりこのような店には入りません。どちらかと言えば、建築家・石井和紘が言った「モノを持たずに空間を持て」という言葉に惹かれるからです。

 しかし、じっくり見るからには、それでは辻褄が合いません。

 で、「結婚10年目のプレゼントを探す」という、仮のテーマを設定しました。すると会話も至ってスムーズ。

 銀座界隈のショップを6件回ったのですが、4時間掛かりました。
 

 中でも、応対が丁寧だったのがブルガリ。

 ルイ・ヴィトンの北隣にあり、店舗デザインは本国からの指示通りとのこと。しかし、出てきた飲み物にもストーリーがあり、ブランドの生い立ち、強味、ポリシー等、熱心に語ってくれます。

 夫妻で時計にされてはと、まず紳士物の時計を出してくれました。260万円を手首に巻いたとき、かなり心を揺さぶられるものもあり……

 まじまじとダイヤのネックレスを見ると、やはり非常に美しいものだな、とも。その晩は東京泊。安い夕食を食べながら「あのくらいのバックならありえるのかもな」と少し思う私。

 大阪に戻り、そんな話を妻にすると「本当に買ってくれてもいいよ」と。

 完全冷やかしでは店員さんも気合が入らないと思い、仮のテーマを設定しました。しかし、丁度この秋で10年目でした。

 その位かもな、とは思っていたのですが、あながち冷やかしでは無かったのかもしれません。

 美しさの本質を見抜く、審美眼を持っていたいと思います。しかしブランドは、ある一定ライン以上を担保するものでもあります。

 この歳にして、もしかするとブランドの魅魔力を知ったのか……

子供と話そう -991-

 先週末は、東京オリンピック開催決定のニュースがありました。

 1998年、冬季の長野五輪の際は、独立して3年目で、時間もお金も無く。全く見に行けませんでした。今度こそ世界のトップアスリートを、自分の目で見たいと思います。

 反対に、宮崎駿引退のニュースは、複雑な気持ちでした。

 今日は昼から、ポートアイランドへ行っていました ポートライナーに乗ったのはいつ以来か。神戸メリケンパークオリエンタルホテルが良く見えます。

 なかなかかっこいいなと思いながら。

 元はダイエーの経営だったはず。そのダイエーがイオングループの傘下に入ったとのこと。

 それはそれで、何か寂しい気もします。

 ポートアイランドの中心あたりに、チャイルド・ケモ・ハウスという施設があります。小児がん治療中の子供達やその家族の為の施設です。

 病院は治療の為の施設なので、付き添いの人が寝るスペースはありません。それで、介護者は簡易ベッドや、ソファーベッド、酷い時には床でねる事になるのです。

 また小児がんは70%ほどが完治する時代になってきました。しかし治療には6ヵ月程の時間を有する場合が多いのです。

 また、治療中は外気との接触をなるべくさけなければなりません。その為、介護する家族は僅か3、4畳の空間の中で、暮らしの全てをおくるのです。

 そのような体験をし、かつ娘さんを失ったお母さんが、この施設立ち上げのプロジェクトの中心になったのです。

 実際に病院を使う人の意見が多く取入れられています。天窓は、ベッドで過ごす時間が長い子供達にとって、最高の景色を与えてくれるでしょう。

 私の娘も1ヵ月以上入院したことがありました。妻も同じ様な体験をしています。

 その際に、小児がんと戦う子供達の姿もまじかに見ました。

 このような施設は日本ではここしかなく、この年末に初めてオープンするのですが、費用の多くが寄付で賄われているそうです。

 宮崎駿は「アニメは子供の為にあるもの」と言いました。少子化の時代に入り、子は宝という言葉がさらに重みを増してきます。子供は未来で、人類の希望であるのは間違いありません。

 気持ちだけ寄付してきました。また、チャリティーグッズも買ってみました。これがなかなかいいデザインです。

 それを買う時、子供のサイズが分らないのです。結局、適当に2種類かって来ました。今日は帰って、子供と話でもしようと思います。

張り出し30m

 昨日は「柏の家」の現場へ行っていました。

 千葉では竜巻があったりと、不安定な天気が続いています。建築中の建物に雨が入ったと一報がありました。

 監督と話をするとレンジフードのダクトからとの事。決して褒められたものではありませんが、原因が分り、ひとまずほっとしたのです。

 クライアントとの打合せまで時間が出来たので、千葉市のホキ美術館へ寄ってきました。

 日本初の写実主義専門の美術館として2010年にオープンしました。

 何と言っても圧巻はスチールキューブの張り出しです。

 その長さ30m。

 2011年、日本建築家協会の日本建築大賞を受賞しています。

 更に驚いたのは、ごく普通の住宅地に建っていること。

 唐突感は否めませんが、高さも色彩も抑えられ、非常に好感がもてました。

 写実主義の絵はあまり見ることがなく、その緻密さに驚かされます。

 平日の朝一番にも関わらず、館は賑わっていました。

 ディティールも見どころ沢山。

 それでも興味は張り出しです。

 観覧者が減った時を見て、最先端で軽くジャンプしてみました。

 体感としての揺れは感じません。

しかし先端部の外にサワラの樹が有り、これが目安になります。

 良く見ていると、1cmくらいゆっくり上下に揺れていました。

 制振構造により、大人が飛んでも1/3000にまで揺れを制御しているのです。

 満足し、納得し、「さあ頑張るぞ」と現場へ向かったのです。

 打合せも終わり、東京駅に着いたのが6:30pm頃。

 東海地方の大雨で、新幹線のダイヤが乱れていました。

 予約している便が出発するのか分からない状態。

 駅員に詰め寄る姿を見ると、何とも言えない気分になります。

 そんな時こそ「どんな行動をとるんだ」というトレーニングだと思うようにしました。

 結論は来た便に乗り、デッキに立って大阪へ。3時間立ったままは、結構堪えましたが。

 以前、満員の車内で老夫婦に席を譲った若者の話を聞きました。

 もう10年くらいなら何とか自分にも出来そうかなと……言った以上は。

模型

 金曜日から本日夜7時まで、私の職場は阪急ビルオフィスタワー。

 下記の建築家展に参加しているのですが、目の前には丸ビルが見えます。

 安藤忠雄とダイワハウスが 進める丸ビル緑化プロジェクト。

 丸ビルが、いつか大木となる予定です。

 講演会で安藤忠雄に「本当にそれは完成するんですか」と質問されたそうです。

 彼は「分からないところがいいんですよ」と応えました。

 なるほど。いつ出来るかより、トライするほうが何倍も大切な訳です。

 日曜日のイベント前、クライアントと大阪駅で待ち合わせました。

 あいさつもそこそこにカフェに入りました。

 席に着くと紙袋から……

 クライアント手製の模型です。

 私が持って行った1/100より一回り大きいものでした。

 ボール紙で作ったそうですが、色まで塗られています。

 色々なクライアントと仕事をしてきましたが、自分で模型を作られた方は初めて。

 この計画は敷地にかかる規制が厳しく、なかなかプランが決まりませんでした。クライアントと打合せをし、プランをまとめ、それから行政との折衝。

 それらを繰り返していたので、模型はその都度持ち帰っていたのです。作って貰ったことに感動すら覚えますが、申し訳なく思います。

 しかし「自分で模型を作ったおかげで、設計の意図、デザインの意図が良くわかりました」と言って貰ったのです。

 今春入ったスタッフ田坂は、あるクライアントがまとめた要望書、スケッチ等を見て、本当に驚いていました。クライアントはいつも本気なのです。

 奥さんは「楽しみになってきました」と。その期待があるからこそ、行政との折衝も頑張れるのです。

男のロマン

 明日から4連休がスタートします。

 前半は賢島へキャンプ、後半は梅田でのイベントに参加する予定です。5日、6日に時間のある方、良ければ梅田へ遊びに来て下さい。

 早起きして、ぼつぼつとキャンプの用意もしています。

 道具を置いているのが実家の一角。自宅からすぐの所にあります。

 実家はガラス屋で、その一角を借りているのです。

 例えば釣りにしても、準備をしている時が最も楽しいもの。

 何故なら、結果が出る前の夢は無限だから……です。

 キャンプも良いイメージをつくりながら、荷を積んでいきます。

 佐川急便のバイト時に教えて貰った「前面合わせ」で荷台も美しく。誰もそんなところは見てくれませんが。

 小さい頃から、1階が仕事場という暮らしをしてきました。

 よって土間の無い暮らしをした事がないのです。

 この時父は、船のアンカーを溶接していました。

 そこまでするかは別にして、土間にはリミッターがないのです。

 土間のイメージを定義するなら「気兼ねなく汚しても良い、タフな屋内」でしょうか。

 土間、それはまさに男のロマンなのです。