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秋の夜長に哲学する‐1623‐

 今日は気温こそ28度ありましたが湿度は20%少し。
 
 エアコンを一日付けなかったのは7月中旬以来。過ごしやすい一日となりました。

 長かった夏も、ようやく終わりが見えてきたでしょうか。

 とは言え、昼間の日差しはまだまだ力強いものがあります。

 会社の隣にある「R Grey」は、弟がオーナーのマンションです。2年前の今頃から入居が始まりました。

 当初は入ってくれるだろうかと心配しましたが、有り難いことに現在も満室です。

 コンクリート打ち放しは青空によく映えるのです。

 昨日、移動の途中に近所のイオンへ立ち寄りました。

 昼を随分過ぎていたのでフードコートで昼食を済ませることに。

 数日前だったか「スガキヤの店舗が多数閉店する」というニュースがネットにでていました。

 喜連瓜破駅前店は大丈夫なのかなと思っていたのですが、昨日時点では営業していました。

 私のクライアントは、節制している人が多く「糖質制限」などと言う言葉も良くでてきます。

 久し振りに食べた対極にある昼食ですが、これで610円(笑)

 私が小学生の頃からあったので40年以上営業していることになります。

 周りを見渡すとスガキヤ人気は結構なもので、「赤字店を積極的に閉鎖」とでていた効果もあったのかもしれません。

 スガキヤと言えば、スプーンとフォークが一緒になったこれです。

 ラーメンを食べることだけを追求した究極の道具、スプフォークです。

 勝手に命名していますが。

 建築は装飾も可能ですが、そこまで予算に余裕があることは稀です。

 なら、機能、用途のあるものを突き詰めて行くしかありません。

 久し振りに「R Grey」に入る用事がありましたが、この階段も、できる限り単純化した美しさを追求したつもりです。

 階段室2階の窓はコンクリートの溝にガラスを差し込んでいるだけ。

 アルミ部分はありません。

 3階の窓も同じ構成ですが、1枚物のガラスでは施工が難しくコストも上がるので、2枚に分割されています。

 ただ、等分するのでなく、右端の1枚は2階と同じ大きさとしました。

 コストを抑え、光を取り入れるという機能を限界まで追求したつもりです。

 今年引退した、イチローのバットづくりも担当した元ミズノのバット職人、久保田五十一さんは落合博満元監督にこう教えられたそうです。

 「商品は人が手にして喜ぶもの。道具は人が手にして使うもの。遊びはいっさい不要」

 スガキヤのラーメンが商品なら、スプフォークは道具です。

 建築は「生きるため道具」でした。

 しかし現代社会においては「人生を豊かにする道具」と言った方が適切かもしれません。

 これは、落合元監督の言葉からすると、すこしブレがあります。

 しかしそこが、芸術と生活の中間にある建築の奥深さとも言えるのです。

 「建築設計とは哲学すること」

 誰だったか忘れてしまったのですが、ある建築家の言葉です。

 哲学は英語でフィロソフィ。ギリシア語で「知を愛する」という意味です。

 秋の夜長で哲学する時間はいくらでもありそうです。

■■■『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載

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【News】
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

適切に自慢を‐1461‐

 寒かった2月が終わりました。

 昨晩の強い雨風と雷で、目が覚めた人も多かったと思います。

 3月は、強烈な春一番からスタートです。

 保育園の終わったあと、公園で遊んでいる子供達も増えてきました。

 猫は屋根の上を駆けていきます。

 この1週間で、すっかり春めいてきました。

 ♪ 春はお別れの季節です~ ♪

 にメロディーがついたなら、40歳半ば以上が確定です。

 新大学生、新社会人と、新しい生活をスタートする人も多いはず。

 そんな人達かは聞いていませんが、私が設計した「R Grey」の空き部屋が、ようやく残り1部屋になりました。

 「永住したい打ち放しのマンション」をテーマに計画がスタート。土地は父のもので、建物は弟がオーナーです。

 近隣マンションには空き部屋も多くあるらしく、両親も「入ってくれるのだろうか」と心配していました。

 竣工は昨年の8月末でしたが、工事中に2部屋が決まったこともあり、すぐに満室になると私は確信していました。

 その後、見学はあるものの中々入居が決まらないようで、仲介会社のwebサイトを通してようやく5部屋が決まりました。

 まだ1部屋残っていますが、多少ほっとしたのです。

 アポイントなしの営業は、全てお断りしていますが、面識のある建築関係会社の方が来られた時のこと。

 「設計士さんも、施工側も、自分の都合ばかり言って、クライアントの方を向いていない。

 設計士さんは、自分の作品と思っているので、自分がしたいことをするし、施工側も施工側で、利益のことしか考えていない」

 という会話がありました。

 こんな話を、本当によく聞きます。ということは、何度も話しているので、順にお答えしました。

① 設計だけをしている訳ではないし、そもそも「設計士」という言葉はない。私は「建築家」でいたいと思うが、「建築士」という資格にも興味を持っていない。

② 理由は、「建築士」とは、ペテン師と同じように技術を売る仕事で、芸術家のように心に響く仕事をするのが「建築家」だと教えて貰ったから。

③ 自分の仕事は「作品」だと思っている。ただし、その定義が眺めて楽しむ骨董品の類を指すのなら作品でなくてよい。実際の暮らしが始まってからの写真しか撮らないのは、それが理由。

④ クライアントの幸せを実現するのが仕事だが、それは自分達の幸せとほぼ一致する。働くことは一方通行ではないので、何が幸せと思うかは、互いに明確にしたい。

⑤ 厳しく現場監理はさせて貰うが、クライアントにとってのヒーローになって欲しい。施工者には、それを実現できる技術があるはずだし、必要。

⑥ それらが、とびきり高くてもよければ苦労しないのだが、その仕事を適正な金額で実現するために常に競争見積となる。

 順番や例は、折々に変えますが、概ねこのような流れです。

 恥ずかしながら、自慢のような、偉そうな話をする必要がある場面なのです。

 「R Grey」の長所も、何度かここで書きました。

 満室になるという保証はありませんし、実際まだ1部屋空きがあります。

 しかし、何とか実現できるギリギリのラインまで金額調整をした、弟と私達が身をもってそのコストパフォーマンスを分かっているつもりです。

 そんなことは、借りる側には分からないじゃないかと言われるかもしれませんが、お金を払う時、人は厳しい目で選んでくれます。

 大きな金額であればあるほど尚更で、そう考えると建築はとても恵まれているのです。

 自分達の存在意義、価値を伝える為には、ただ謙遜していればよい訳ではありません。

 「私など、ろくなものではありませんので」と私が言って、仕事を依頼してくれるクライアントは居ないはずです。

 かといって、自慢ばかりしている人が好きな人など、たったの1人もいないのですが。

 状況に合わせ、適切な自慢を。これはかなり難しい、永遠のお題です。

 「R Grey」は、この規模では考えられないくらい頑丈な建物です。適切に自慢しておきますので、よければどうぞ最後の1部屋を。