カテゴリー別アーカイブ: 04 建築

屋上プール

 弟の家には屋上があります。

 夏にはプールを出しているので、長男を連れて遊びに行ってきました。これが結構大きくて本格的なのです。

 タツノオトシゴからは噴水がで、滑り台の滑りを良くします。

 これが尼崎の「コストコ」で2、3千円で売ってるそうです。

 コストコはアメリカのスーパーチェーン。クライアントにも何人かファンがいました。

 量も多く、安いので、年会費4,200円をどう考えるかだけでしょうか。ちなみに駐車場もアメリカンサイズとのこと。

 屋上では、3歳、3歳、10ヶ月で小一時間遊びまわっていました。

 下階に下りて、クワガタを皆でつつきまわしていました。

 セミの鳴き声もうるさくなって来ていよいよ夏本番です。

 市街地の住宅で、大きなプールを置くのは大変です。そういう意味で、屋上は使い勝手の良い屋外です。

 しかし屋上は一般の屋根と比べると高くつきます。防水をした上で、歩けるような構造体が必須で、古来よりの木造建築には無かったものです。

 少し専門の話をすると、19世紀の前半に活躍した近代建築の三大巨匠の一人、ル・コルビュジエは「新しい建築の5つの要点」として以下を上げています。

 「ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面」

 屋根の上は、近代建築になって手に入れたエリアと言えるのです。

 現実的な話もすると、屋根を一般形状にするか、屋上にするかは、相当なコスト差があり、大きな分かれ目です。弟の家もご多分に漏れず、金額を合わせるのに随分苦労をしました。私が設計したので良く知っています。

 家を創る時、どんな選択をするにしろ、悪い結果になることはまずありません。何故だか分かりませんが、希望、コスト、いろんな条件を突きつけられ、真剣に悩んだ結果は必然と言えるのかもしれません。

 この家の屋上も、有って然るべきだったのだと思います。

北浜あたり

 先週末は生憎の雨でしたが、私は北浜へ。

 水の都、大阪を象徴するのが大川。中心地を東から西へと流れ、大阪湾に注ぎます。

 その中州が大阪市役所、中央公会堂のある中之島。北浜はその南東部に位置します。

 中之島とは難波橋で繋がり、欄干には2匹の狛犬が居るので別名ライオン橋。八百八橋を象徴する橋と言えるかもしれません。

 東には口を閉じた吽型像。

 西側は口を開けた阿形像。阿吽となっている訳です。

 後ろには雨の梅田。中央公会堂も見えています。

 堺筋を南に振り返ると左手には大阪証券取引所。秀吉の時代から大阪経済の中心地でした。

 「北浜」の由来には 二 説あるようです。

 ひとつは「船場北の大川に沿った浜」、もうひとつは「大川前の店が全て北に向いていたから」という説。

 辺りには明治終わりから、大正、昭和初期にかけて建った近代建築も多く残っています。

 まずは高麗橋野村ビルディング。 安井武雄による設計です。昭和2年築。

 新井ビルは旧報徳銀行大阪支店。大正11年。

 1階には「五感」という有名なお菓子屋さんが入っています。結構美味しい。

 生駒時計店は昭和5年。なかなか愛想のある建物です。

 旧三越の後には、日本で一番高いマンションが建設中です。

 このマンションの一室を改修する計画をしているのです。

 「建つ前から改修とは」となるかもしれませんが、意外と多いらしいですよとは、クライアントの弁。

 高さ209m、54階建て。奥においやられている浴室を窓際にもってこようという計画です。

 大阪城を眼下に。さて、どんな眺めになるのか。

トイレの話

 洋便器の蓋は開けておくもの?閉めておくもの?

 事務所内では閉じておくようにしています。閉じておくのが無難でしょうが、そもそもあの蓋の意味は何なのでしょうか。

 元々ヨーロッパには固定式の便器という概念は無かったようです。どうしていたかと言うと、便器と兼用のイスが有りました。イスですから、蓋は取り外し式の座面だったのです。使わない時は家具なので、豪華に装飾されたものも有りましたが、早い話大人用の「おまる」だったのです。

 代わって、日本の衛生機器メーカーによると

①日本人はカバーするのが好きで、むき出しより良いと感じる人が多い。
②汲み取り式便所の時代に臭気を防ぐ為に有ったものの流れ。

 とあります。

 現在の用途から考えると、どうしても必要ではないけれど、封水(臭気が上がるのを防ぐ水の溜まり)の蒸発を防いだり、暖房便座の節電効果もあります。

 バロック建築の代表作ベルサイユ宮殿にはトイレがほとんど無く、貴族も庭で用を足していたのは有名な話。近代になって土に返す場所が足りなくなり、汲み取り式、水洗となったわけです。

 「家の中で唯一有益な場所はトイレである」といった建築家がいました。そこまでかは別にしても大切で、有益な場所に違いはありません。

代官山、六本木

 先週末は東京へ出張でした。

 朝の6時台の新幹線なら片道1万2千円です。この金額に辿り着くのに随分苦労しました

 打ち合わせは昼から。一通りの準備を終えると渋谷、代官山、六本木あたりを回りました。

 まずは渋谷の南東にある青山製図専門学校。設計は渡辺誠、90年代の快作です。

 カラート77は葉祥栄。完成は’97年。

 法規制に忠実に従い、恣意的なデザインを極力排除した結果が、この形というのですから不思議です。

 ヒルサイドウエストは槇文彦の設計。現在、自身の事務所もこの中にあります。

 モダニズム建築の正統派で、数々の賞を獲得している重鎮です。その品格はさすがで、清楚な佇まいでした。

 ※モダニズム―19世紀までの、様式にとらわれた建築を批判した運動。

 ヒルサイドウエストとカラート77はこんな位置関係にあります。

 現地に行くまで、こんなに近いと想像できませんでした。

 このあたりが、東京の密度と質と言えるのかもしれません。

 そのまま旧山手通りを東に行くと同じく槇文彦設計のヒルサイドテラス。’67年から’02年までの6期に分けて計画されています。

 一人が25年をかけ、広範囲にわたって街をデザインするのは稀な事です。

 そのまま六本木ヒルズへ。話題だった森タワー。

 左には再び槇文彦設計のテレビ朝日が僅かに写り、東京タワーが見えます。

 最近のヒット映画「ALWAYS 三丁目の夕日」では象徴的に使われ、200万部を売ったリリー・フランキーの小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~ 」では題名に。

 槇文彦はこう言っています。みちは都市の切断面。その切断面と建築の表皮に街の風景の大部分がしみだされてくる。

 法律とは言え、この色には問題があると思います。しかしその表皮が最も大きい建築かもしれません。

 しみだし続けてすでに50年。日本の山が富士山なら、都市の風景を象徴するのは東京タワーかもしれません。

『スーパーニュース』で「境内の中の家」が紹介

 土曜日は大雪でした。大阪で2㎝の積雪は11年振りで、1997年と言えば「たまごっち」」の年。雪の日の事は思い出せません。

 前回書きました、番組の日程が休み明けに決まりました。

 フジテレビ(8ch)スーパーニュースで6:16pm頃から20分間。(CS、ケーブルテレビはフジテレビ739 7:00pm~8:00pm)

 残念ながら関東ローカル枠なのですが、単純に喜んでいます。

  大阪の神社の境内にある住宅の建替え計画を、昨年の夏から取材して頂きました。VTRは見ていませんが、”密着200日。光りの入らない平屋が、明るい家へ生まれかわる!”建替え版ビフォアーアフターのような感じだそうです。

 恥ずかしながら、私も少し出ています。メインキャスターの安藤優子さんがどんなコメントしてくれるのか、気になりますが、 関東にお住まいの方は是非ご覧下さい。

一級建築士事務所 アトリエ m

素材は揃った

 何度か途中経過を紹介した境内の中の家。計画開始から1年と2ヶ月を経て竣工しました。

 ずっと取材して貰った、テレビクルーのみなさんもこの日で最後になりました。

 アトリエでは掲載誌の撮影とコメント撮り。映像を見ると火が出るくらい恥ずかしいんだろうと、今から覚悟はしています。

 解体、着工、竣工、引越し。20分の番組を創るのに、費やされた時間と労力は膨大です。

 ディレクターは「撮り残しは無いナ。よし!」素材は揃ったと、自分に言い聞かせました。後は編集作業。楽しみにして待つだけです。番組の性質上、放映日はディレクターも少し前にしか知らされないそうです。2月中旬から下旬にかけて、関東のみの放送ですが、ここで告知したいと思っています。

 どの計画も、初めの図面にはテーマを書きます。この計画では”緑溢れる境内に、家族の空を持つ家”。

 目的は達成出来たと思います。

 竣工写真の完成はもう少し先ですが、一番面白い場所から撮った写真です。

 計画地は平安時代より前からあるという神社の境内。神聖な場所での仕事ですが、日々の現場通いでは、つい礼拝を忘れてしまいます。

 竣工の日は、今までの失礼をお詫びし、感謝の気持ちで頭を垂れて来ました。

 一年を通してに神社に伺い、自然溢れる境内で強く感じたのは「この国の四季は本当に豊かだな」という事。どの国にでもあることではないのです。

モダンリビング NO.177

 2月7日発売の『モダンリビング NO.177』「加美の家」が掲載されました。

  P215の1ページだけですが、加美の家は初掲載なので素直に喜んでいます。

 ただ、写真がやや赤っぽくなっているのは残念なところ。前にも同じような事がありましたが、印刷物の色というのは、繊細で微妙なものだそうです。

 加美の家は、私としても自信を持っている仕事です。そんな気持ちとは裏腹に、色々な事情でなかなか取り上げられませんでした。メディアに載る事だけが評価とは思いませんが、作品を通して、世に何かを問うてみたいという思いはあります。

 空間を感じるには、その場に立つ意外に方法はありません。それに次ぐのが、完成度の高い写真。その写真を多くの人に見て貰えるのが出版物です。

 Web全盛の時代ですが、紙媒体に対するこだわりはあります。細部の表現力、手にとった重み、新しいページをめくる喜び、紙の匂い。それらと一緒に、感じる事が多くあると思うのです。

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書籍に掲載

 一昨日の11月27日(火)ニューハウス出版より『1000万円台で建てた家2』が発売されました。

 当事務所の作品「城陽の家」(本の中では「Tさんの家」)が掲載されています。

 この出版物は書籍(Book)です。新聞と書籍の中間に位置づけられるのが雑誌(Magazine)。定期的に発行され、ニュース性の強いものを指します。

 ムック本というカテゴリーは両方の中間という意味で(Mook)。これは日本での造語です。

 今回は書籍なので、長く書店に居てくれるはずです。寄られた際には是非手に取ってみて下さい。

 設計事務所を始めて11年。色々なMagazine、Book、Mookで紹介して貰いました。中でも「城陽の家」の掲載回数は4回目です。
 
 どの作品も一生懸命創りました。それぞれに思いとストーリーが詰まっています。それでものこの家が多く取り上げられるのには理由があるかもしれません。

 クライアントのこだわりは、執念に近いものがありました。一回の打合せ時間は平均3時間、長い時は6時間。延べ打合せ回数は約50回。長ければ良いと言う訳ではありませんが……

 しかし、今回も表紙は取れませんでした。

棟上に思う

 建築工事には色々な工程と式典があります。

 中でも風景が大きく変わるのが棟上。

 一昨日、棟上式がありました。構造体の完成と、工事の無事を祝う式典なのです。

 どんな分野でも技術革新は進み、多くの作業はオートメーション化されます。

 効率がUPし、間違いが減り、コストが下がるのは良い点でしょう。建築の分野でもユニット化が進み、現場作業は減る傾向です。

 それでも、建築現場には多くの職人の手が必要で、その経験がものをいいます。木組みをするのは大工さんで、数人のチームが呼吸を合わせて進めて行くのです。

 経済効率には、手も汗も不要です。しかし、建築が立ち上がって行く姿を見る時、何度経験してもある種の感動が残ります。これは完成したものをいきなり見ても無い感情なのです。
 
 自然は飛躍しません。咲く、実る、散る。その過程を含めて、何かを感じると思うのです。もしそうでないなら、過程そのものである私達の人生も、意味の無いものになってしまうのです。

「光庭の家」掲載

 本日9月21日発売の『新しい住まいの設計-11月号-』(扶桑社)に
「光庭の家」が「よみがえる家・実例編 Kさんの家」として紹介されました。

 紹介サイトの右中に1ページ分だけUPされています。既存住宅の改修です。

 今月号は「行列の出来る建築家スペシャル」と「リフォームでよみがえる家」の2本立て。

 残念ながら『新しい住まいの設計』選定の「行列の出来る建築家」には、選ばれませんでしたが、後者のテーマ内では2番目に載っています。

 冗談はともかく、良く書店に置いてある建築雑誌なので、お立ち寄りの際は是非ご覧下さい。

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