カテゴリー別アーカイブ: 02 ことば・本

仕事は好きの近くに

■■■オープンハウス開催■■■

 2月26日(日)午前10時~午後4時 「あちこちでお茶できる家」

 ※詳細は後日お知らせします

 先週金曜日、京都大学も秋入学に前向きというニュースがありました。

 世界基準は秋なので、優秀な人材を集めたいというのが主な理由。東京大学は5年後をめどに実現すると言っています。

 反対意見、理由も色々あります。高校生でも大学生でもない「中ぶらりん」の期間をどうするかというものには異論があります。

 推進派は、インターンシップにあてる、海外を見て回るなどを提案していますが、勿論賛成です。

 裕福な家庭はインターンシップもできるが、機会の少ない地方、余裕のない家庭はどうするのか、というのが反対理由。しかし、それら全て含めて、人生、仕事だったはずです。自分で切り開いていくしかありません。

 何より、仕事を始める前に一旦エスカレーターを下り、自分が何者かを見つめ直す時間は、絶対あったほうが良いと思うのです。

 秋入学を大学だけでなく、小学校から全部変える案もあるかもしれません。サクラサク、春の入学は季節感があり、良いものではありますが。

 アトリエの打合せスペースには模型を展示しています。

 これらは出来の良いもので、いわば一軍です。

 計画当初、模型は1/100くらいのものから創り始めます。

 最終形に至るまで、多く試作があります。

 模型は増える一方で、採用されなかったものは破棄せざる得ません。

 しかし、計画中のもの、手を入れている最中のものは、私の机の上に並んでいます。

 この模型に、人並みなら興味を示しているのが甥っ子です。

 長男と1つ違いで、4月から小学生。

 彼は年始に受験をしていました。両親、祖父母の心配をよそに、見事合格。

 直前にはその勉強もあり、色々と我慢していたようです。試験が終わったら、したい事に「家の模型作り」を上げていました。早速、材料の端材をあげました。

 これは長男作ですが、こんなのを作っては壊ししているのです。

 先日、オープンデスクに来ていた若者がいました。よく話を聞いてみると「本当は音楽の仕事がしたい」と。

 そんな時「そろそろ現実を見ないと」とは言いません。

 本当にやりたいのなら、どんな事情があるにしろ、何らかの行動を起こすべきです。

 一切気遣いは無用なので、オープンデスクを打ち切って、自分のやりたい事をすればいいのではと伝えました。

 打合せ中、背後から目線感じた時。甥っ子がのぞいています。クライアントは驚きますが、説明すると勿論笑って理解してしてくれます。

 長男とも、3年生になったら手伝いに来てと言ってあるのです。しっかり学べ甥っ子よ、という感じです。

 得意は好きの近くにある

 この言葉を聞いたとき、何か力がみなぎる気がします。出来るだけ多くの若者に伝えたいと思ていいます。

コラムの真髄

 先週の事ですが、読売新聞大阪本社へ行ってきました。

 読売新聞が運営する、専門家サイト「マイベストプロ大阪」のセミナーがあり、参加していたのです。

 社屋は西天満にあり、初めて新聞社なるものに入りました。

 エレベータ前にはガードマンがおり、やはりセキュリティーは厳しいんだなと思う反面、建物は意外に小ぶりでした。

 会場のモニターに案内映像が流れており、発行部数は1千万部弱で世界一とのこと。

 これは知りませんでした。

 セミナーの内容は、専門家サイトの活用方や、コラムの書き方など。

 地域は限定、得意分野に特化する方が良い。

 最もで、良く分かるのですが、日本全国、または海外でも仕事をしたいと思っています。

 求められれば、どんな要望に対しても、自分の回答をだせる建築家で有りたいと思っているので、それは自分のやり方でやろうと思います。

 このあたりに対しては頑固に行きます。

 その帰り、北新地のはずれにある、「クアー」というショットバーへ寄ってきました。大学の同級生が店を出しているのです。今年で7年目ですが、今回は約1年振り。

 「時々はキタに出てこいよ」と言われました。出来ればそうしたのですが、そんな状況がいつになればやってくるのか……それ程望んでいないのが原因なのですが。

 新聞社は違いますが、1月26日の産経新聞に以下のような記事がありました。少し要約しています。

 長嶋茂雄は立教大学に入学した頃から、日本のプロ野球をどう変えて行くかで頭が一杯だった。

 ユニホーム、ギャラ、野球の技術、あらゆる面でアメリカ、メジャーリーグを手本にしていた。そんな「ミスタープロ野球」も時代の制約からは逃れられなかったと言える。もし今、現役の選手だったら「世界一の打者になる」と海を渡ったかもしれない。

 レンジャースに移籍するダルビッシュ有(25)は札幌ドームのファンの前で、初めてメジャーを選んだ理由を語った。日本では真剣勝負をする相手が見当たらず、モチベーションを保つのが難しかったと。

 高度成長も、バブル経済も知らない今の若者はかわいそうだという声をよく耳にする。反面、恵まれた才能を生かし、懸命な努力を続ければ、世界を舞台に活躍できる特権を持つ世代でもある。

 テニスの全豪オープンで錦織圭(22)は惜しくも準々決勝で敗れたが、世界一の座が夢でない事を示してくれた。時代に恵まれず、それ以上に才能に無縁だった中年記者にも、若者達の挑戦を見守る楽しみがある。

 事実を伝え、時代背景をふまえ3人のスポーツ選手を例に上げ、コミカルな表現も交えながら、読者を前向きにさせる。今年読んだ中で一番のコラムでした。

 私は最後の「読者を前向きにさせる」というところにこだわります。

 どんなに情報を的確にとらえ、豊富な知識で鋭い評論をしても、読んだ人に何らかのプラスの影響を与えなければ、全く意味がないと考えます。何が起こっても、より良い未来を求め、生きる他ないからです。

 このコラムの筆者は才能に恵まれずとありますが、いやいやどうして。名前が知りたいくらいです。

 雑誌売上1兆円割れのニュースもあり、紙媒体が置かれる立場は、これからも厳しさを増すでしょう。しかし、人、才能が急に無くなるものではありません。

 新聞の面目躍如といったところでしょうか。

媚びない、群れない、属さない。そして辞めない

 「あなたにとってプロフェッショナル」とは?」という質問で終わるNHKのドキュメンタリー番組。
 
 その世界で一目置かれている人がその質問に答えます。昨年末、ある町工場の経営者の答えはこうでした。

 媚びない、群れない、属さない。そして辞めない。

 実現を信じて諦めない、辞めないことが大切と続けていました。
 
 人は、無力だから群れるの ではない。群れるから無力なのだ。
 
 これは「反骨のルポライター」竹中労のことば。

 日本で使うプロフェショナルという言葉には、その道のエキスパートというニュアンスが含まれます。誰にも出来ない課題を、解決、改善していく専門家と考えれば、常に孤独なものだと言えそうです。

 エキスパートであるから、その困難な課題がそこに持ち込まれるのですが、鶏が先か卵が先かという話で言えば、元々困難を避けていた人がエキスパートになる事はありません。

 進んで困難と孤独を求める。

 文字だけ見ると、まるで修行僧のようですが、ここに真理があるというのが、竹中労のメッセージだと思っいます。

 困難を解決した時には確実に達成感がありますし、成長できます。そもそも、困難だと思っていただけで、向かい合ってみれば、大した問題ではなかったという事が、大半なのですが。

 先々週、友人の作家が事務所に遊びに来ました。彼は大阪の公園で気流部という一風変わった活動をしています。
 
 その時の写真をUPしていました。

 

 事務所は未だスタッフ募集中。

 進んで困難を求める人お待ちしています。もちろん仕事中だけですが。

クリエイティブ

 昨年末ですが「イタウバハウス」へ1年点検へ行っていました。

 その際の現場日記に、光熱費のことを書きました。このタイメイングで、出来るだけ聞くようにしているのです。

 その時に教えて貰った金額が、調べてみると少し違ったと、クライアントからメールがありました。

 それで1年分の電気代、ガス代を整理して送ってきてくれたのです。

2011年 「イタウバハウス」
家族構成:夫婦、幼児2人、乳児1人
電気料金/ガス料金
1月  12,237円  /  8,899円
2月  10,864円  /  9,995円
3月  12,456円  /  9,078円
4月   7,870円  /  6,773円
5月   7,146円  /  5,416円
6月   9,134円  /  5,546円
7月  10,733円  /  4,113円
8月  11,081円  /  3,697円
9月   9,265円  /  4,116円
10月  6,699円  /  4,646円
11月  7,840円  /  5,272円
12月 11,445円  / 11,211円

この家は、建築関係の金額だけでなく、土地、土地売買に係わる諸経費、ローンに掛かる費用、テレビ、エアコン、カーテンにかかる費用など、いえにほぼ全ての金額をwebサイト、雑誌に公開させて貰っています。

その動機は、これから家を建てる人の参考になればというもの。私がお願いしたからではないのです。

「感謝」という言葉しか思い浮かびませんが、この言葉をジョブズは一回り大きな視点で使っていました。

 何が僕を駆り立てたのか

 クリエイティブな人というのは、先人たちが残してくれたものに感謝したいと思っているはずだ

 僕が使っている言葉も数学も僕が発明したわけではない

 同じ人類の先人たちが作ってくれたものなんだ

 僕は全力で心の奥底にあるものを表現しようとした

 先人が残してくれたあらゆるものに感謝しようとしてきた

 そしてその流れに何かを追加しようとしてきた

 そう思って僕は歩いてきた

-伝記『Steve Jobs』-

「同じ人類の先人が残してくれてた」というくだりに、軽い衝撃を受けました。

 当然ですが、建築家という仕事は私が発明したものではありません。この仕事が現在あるのは、先輩たちが脈々と引き継いできたからこそ。そういったことへ感謝の気持ちは持っていました。

 しかし、言葉や数学をつくりあげて来た人類の先輩に、感謝の気持ちを持つなど考えたことさえ無かったからです。

 creative(クリエイティブ)は創造的という意。それはある日突然で生まれるのではなく、先人たちへの感謝の気持ちがベースにある。

 ジョブズはその理想の高さゆえ、部下へはかなり厳しい人だったようです。しかし、彼が最も革新的な創造者であったのは、誰より強い先人への感謝の気持ちがあったから。そうであれば、納得できる気がします。

勤労と安楽と充実

 11月も下旬に入り、徐々に寒さも増して来ました。

 しかし今日は気持ち良い秋晴れです。

 築37年を迎える我が家には、縁側があり雪見障子で仕切られています。

 ここにいつの間にか小さな穴が開き、知らぬ間にのぞけるようになっているのです。

 経緯を聞いても、遊んでいたらなっていたとか、誰々が当たってしまったとか。真相は闇の中。

 すぐに貼り替えようか、とはならない理由もあり、そのままにしていると、妻が補修していました。

 寒さがちょっとはましになるだろうと。貼り替えへ至らない理由は、またの機会に書こうと思います。

 すっかり忘れていましたが、11月は文化祭の季節。

 長男が帽子を作ってきました。この感覚を大人になって持っていたら、ピカソかガウディーだな等と思うのです。

 昨日は勤労感謝の日。この時期になったのは、農業の収穫期というものもあるようです。

 「勤労をたつとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」為の祝日とあります。

 依然全国的に失業率も高く、生活保護受給者は過去最高とも。特に大阪市は深刻です。今この理念を、眺めるだけの額にしてはならないと感じます。

 教育、勤労、納税は国民の義務ですが、勤労を義務と考えると、人生は一気に息苦しいものになってしまいます。

 今までで、一番充実していた時間はと問われると、多くの人は、最も苦しかった時期を上げるそうです。安楽は充実を生まないのです。

 そもそも仕事と言うのは大変なものです。だからこそ、仕事となりえ、それをやり遂げた人には感謝と報酬が与えられるのですから。

 生きるとは呼吸することではない。行動することだ。
 -ジャン=ジャック・ルソー- 哲学者

 人生は恐れを知らぬ冒険か、無のどちらかである。
 -ヘレン・ケラー -

 それをやりにおれが生まれてきた。 そのことだけを考えればよい。
 -アーネスト・ヘミングウェー- 作家

 行動あるのみです。

 勤労という言葉には、労働+真面目さを感じます。さらに、その先の成果は問わないというニュアンスも含まれていると言えば言い過ぎでしょうか。

 勤労を尊ぶ。この考えは、もっと声高らかに謳われるべきだと思うのです。

日記を書こう

 もう10年程前でしょうか。信州へスキーに行っていました。

 確か白馬乗鞍だったと思います。

 次の日はレースに出る予定で、早く寝るつもりでした。

 ロッジの風呂に入りロビー脇を通ると、住み込みバイトが置いていったのか、沢山の漫画が置いてありました。

 何の気なしに見ていると「パチスロひとり旅」というタイトルに目が止まりました。

 パチンコは学生時代にした事がある程度ですが、何故か気になったのです。手に取って見ると、これが面白い。置いてあった2巻をすぐに読み終えました。

 大阪に帰って調べてみると、ブログのような物があると分かったのです。当時、ブログという言葉があったのかも分かりませんが。

 借金を背負ってしまった原作者はパチスロ(パチンコ店にあるスロット)で稼ぎ、これを返済しようと考えました。しかも旅をしながら。全国のパチンコ店を渡り歩くのです。

 勝った日はホテル、負けた日は車中泊。国取り物語風に、全ての都道府県でプラスにするという副題も掲げられていました。

 勝ち負けの内容と、旅先の風景等をそのサイトで発表していったのです。

 これに目を付けたパチンコ雑誌が、連載を始たのが事の始まりだと思います。

 その頃とサイトを久し振りに見てみました。 

 約600万円あった借金が完済したのかは知りません。

 今でも「何代目○○○」と名乗り、企画は続いているようです。こうなってくると、ビジネスの匂いが強すぎます。

 初期の手作り感のあるページには、何か惹きつけられるものがありました。

 半ばもうどうにでもなれという刹那的な感じと、その自由な生き方にちょっとした憧れがあったのだと思います。

 話の内容はギャンブルメインの旅日記ですが、何かとても身近で正直な感じがしました。いつUPされるか分からないのですが、とても楽しみにしていたのです。

 このサイトが、自分も日記を書いてみたいと思う、直接のきっかけになりました。

 自分の考えを正直に書くのはとても難しいことです。良く思われたくない人など居ないからです。

 さて今日は正直に書けたのか。まあ、自分の考えを書くところが少しだったので大丈夫と思っていますが。

一人前とは

 人の入れ替わりは世の常で、変化のない組織は衰退します。

 よって、実はということも無いのですが、9月に若い男性スタッフが退職しました。辞めるという結論を出したなら、何故とは聞かない事にしているので、本当の理由は分かりません。

 これは自分の経験から決めた事です。

 24歳の時、初めの事務所をクビになった後、ひらってくれた先輩がいました。その設計事務所で働いて1年ほど経った頃、ちょっとしたことで「辞めます」と言ったのです。

 止めてくれるだろうという気持ちが、いくらはあったと思います。しかし結果は「あっそう」という感じでした。

 辞めたいと言っておきながら、止めて貰うもないのですが、大方の若者は私と同じように、自分の発言に責任を持ったことがないと言えば言い過ぎでしょうか。

 いつも誰かが「考え直したら」とか「長い目で見たら為にならないから」とか正しい選択へ導いてくれたと思うのです。

 25歳の時に「辞めずにもう少し頑張ってくれよ」と言われていたら、私はまた違った生き方をしていたと思います。現実は1つしかないので、どちらが良かったを考えるのは全くのナンセンスですが。

 大学生の頃、下宿をしていた同級生が「一人前になるまで帰ってくるなと、父さんに言われている」とよく言っていました。

 しかし、やや違和感を覚えていました。一人前ってなんだろうと。

 「一人前とは逃げないこと」 
 
 出所を忘れていまったのですが、これより分かり易い言葉はありません。意地悪な言い方ですが、一人前は郷里には帰らないのです。

 新聞で、社会派小説家、城山三郎の言葉が紹介されていました。

 「1人のホンモノに触れれば、100人のニセモノを忘れさせてくれる。それが人間社会の有難さである」

 人間関係の問題が、一方にしかないことはあり得ません。勿論私も至らなかったのは間違いないのです。
 
 何度か紹介したのですが、社員の7割に知的障害を持つ人たちを雇用し、チョークを製造している会社、日本理化学工業の大山泰弘会長の言葉を書いてみます。彼は人としての、4つの究極の幸せを定義しています。

 「愛されること、褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること」

 いずれも他者が介在しています。この意味が分かれば、大切なのは自分の都合や考え方でなく、どれだけ誰かの役に立てるかこそが、自身の存在意義だと納得できると思うのです。

レディー・ジョーカー

 最近、低学年の子供が寝る時間は早まる傾向にあるそうです。

 共働きの家庭が増え、朝が早くなったのがその理由と新聞にありました。

 とても良い事ですが、我が家の長男は寝る時間が遅くなって来ました。起きている時間に帰ると、大概本を読んでいるのです。

 現在気に入っているのが「ヘンリーくんとゆかいな仲間たち」というシリーズ。

 横からのぞくと結構文字も小さいのです。

 朝起きてくると同時に読み始めるくらい、好きなようです。

 子供が本を読んでいる横で、テレビを付ける訳にはいかないので、私も食事を終わら一緒に本を読みます。

 おかげで、長らくカバンに入っていた「レディー・ジョーカー 高村薫著」をやっと読み終わりました。文庫本では上、中、下の3巻あります。

 ストーリーは、大手のビール会社、日の出ビールの社長が誘拐されます。

 数日拉致された後、開放。その間に、最小限の言葉で20億円の裏取引に応じるように言われます。

 レディー・ジョーカーを名乗る犯人グループからは「人質は350万キロリットルのビールだ」と脅され、ほぼ言いなりになる日の出ビールの社長。

 犯人グループは、薬局の老店主、競馬仲間の刑事、旋盤工、貸金達。

 事件を追う、警察、新聞社などが過去の事件、人間模様と絡み合いながら、物語は繊細に進行して行きます。

 特に、日の出の社長の日常、心理の動きが細やかに描かれているのですが、何の違和感もなく、実在する人物に見えてきます。

 とても面白かったのですが、読み終わった後、モチーフはグリコ・森永事件と知りました。

 80年代の半ば「かいじん21面相」「キツネ目の男」などで世間を騒がせたあの事件ですが、思い返せば同じような展開ばかり。一番違うのは犯人グループを誰だか知っているということだけ、と言えば言い過ぎでしょうか。

  小説では、警察には知らせないまま、犯行を収束させる為に日の出ビールは、要求通り20億円を犯人へ支払います。

 グリコ・森永事件は未解決のまま。高村薫が描いた犯人像が合っているのかは分かりませんが、こんな闇のストーリーがあったのかも、と思わせるには十分な展開でした。

 この本は知人に勧められ、作家、高村薫が男性か、女性かも知らずに読み始めました。この情報が多い時代、作家のことを全く知らずに作品を好きになるのは貴重なのかなとも思います。

 有名になれば、すぐにコメンテイターとして声が掛かるのでしょうが、発言している姿を見てがっかりしたことも多々あります。

 作家には、やや神秘性があったほうが良いと思っているのです。もしくは、そういう作家に私が憧れているだけかもしれませんが。

ジョブズ

 先週の10月5日(水)。スティーブ・ジョブズ死去のニュースが流れました。

 私はヘビーなMacユーザーではありませんが、反対にMacファンがウィンドウズを使うのとは全く違う動機を持っているのが良くわかります。

 社名の由良も諸説あるようです。

1. 創立の時、かじりかけのリンゴがそこにあったから。
2. 尊敬するビートルズが設立した会社がアップルだったから。
3. 人類に大きな変革をもたらしたリンゴがいくつかある。1つ目はアダムとイブが口にした知恵の実。2つ目は万有引力を発見したニュートンが見たリンゴ。3つ目のリンゴでありたいと考えた。

 3番目の話をどこで聞いたか忘れましたが、ストーリーがあって私は一番好きです。世間並みですが、ジョブズの言葉には力を貰い続けています。
 2008年8月21日(木)、この日記でも有名なスピーチを引用させて貰いました。

 スピーチの結びの部分を掲載したのですが、本来はもっと長いものです。ちょっとおこがましいのですが、段落毎に箇条書きにしてみます。

スティーブ・ジョブス、スタンフォード大学で卒業祝賀スピーチ
2005年6月12日

【1】  生い立ち
・私はリード大学を半年で中退したので、このスピーチが大学卒業に最も近い経験になる。 
・生みの母は、より良い教育環境を望んでおり、生まれてすぐに養子となった。
・実際のところ、育ての父親は高校を出ていなかったが、必ず大学に行かせるとの約束で、養子縁組は成立した。

【2】 大学中退 
・大学へ行き、半年で興味を失う。何がやりたいか全く分からなかった。
・大学を辞めてからは自分の直感の赴くままに生きた。これが後になって大変活きた。

【3】 点をつなぐ 
・大学は辞めたので、好きな授業だけにでた。哲学やカリグラフィー(西洋書道)の勉強をした。
・カリグラフィーは当時何の役にも立たなかったが、美しい書体を兼ね揃えた、10年後のマッキントッシュ・コンピューターへとつながる。
・ウィンドウズは単なるマックのパクリなので、この時カリグラフィーの勉強に寄り道していなかったら、美しいフォントを搭載したパソコンはこの世になかったことになる。
・未来を予測して、点と点をつなぐことは出来ない。その時点では、信じるしかない。信じることで全てのことは、間違いなく変わる。

【4】 アップルから追い出される
・人生の早い段階でやりたい事を見つけることができたのは幸運だった。
・実家のガレージでウォズとアップルを始める。10年後、社員は4千人になり、20億円企業になる。
・片腕として雇った優秀な人材とビジョンが合わず、また取締役会は彼を支持。30歳を前にして会社を追放される。
・大変落胆したが、やはりこれらの仕事が好きだと分かりピクサーを設立。世界で最も成功したアニメーションスタジオとなった。
・再びアップルに復帰することになるが、追放の経験がなければこれらの事は何1つ起こらなかった。今は最良の出来事だったと理解できる。
・成功者であることの重み、それがビギナーであることの軽さに代わり、人生の絶頂期に新たな1歩を踏み出すことができた。

【5】 死について 
・17歳の時「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう」という言葉を聞いた。強烈な印象を与えるものだった。
・それから33年間、毎朝鏡を見てこう問い掛ける。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定を私は本当にやりたいだろうか?」答えが“NO”の日が続くと、何かを変える必要があるなと悟る。
・死と隣り合わせにあることを忘れずに思うことが必要。何故なら、外部からの期待、己のプライド、屈辱や挫折に対する恐怖、こういったものは、死んだ瞬間きれいサッパリ消えていくものだと分かっていれば、自分が何か失ってしまうのでは、という思考の落とし穴は回避できる。これは私の知る限り最善の防御策。
・君たちはもう素っ裸。自分の心の赴くまま生きてならない理由など、何一つない。
              
【6】 ガンと診断される 
・今から1年ほど前(当時50歳)、治療不可能な癌と診断された。生きて3ヶ月から6ヶ月という見解だった。しかし手術で治せると分かり、現在も生きている。
・以前、死は概念だった。今は確信を持って、死にたい人などいないと言える。
・死は生が生んだ唯一無比の最高の発明品。古きものを一掃し、、新しきものに道筋を作っていく働きのあるもの。
・君たちの時間は限られている。他の誰かの人生を生きて無駄にする暇などない。自分の内なる声、心、直感は、君が本当になりたいことが何か、もうとっくに知っている。だからそれ以外のことは全て、二の次でいい。

【7】 STAY HUNGRY, STAY FOOLISH
・若い頃、”The Whole Earth Catalogue(全地球カタログ)”という出版物があり、同世代の間ではバイブルの一つになっていた。グーグルのペーパーバック版とも言うべきもの。
・その最終号にはこんな言葉が書かれていた。「Stay hungry, stayfoolish.(ハングリーであれ。馬鹿であれ)」。
・私は常に自分自身そうありたいと願い続けてきた。そして今、卒業して新たな人生に踏み出す君たちに、それを願って止まない。Stay hungry, stay foolish.
 Steven Paul Jobs

 CEO退任がニュースになったのが今年の8月25日でした。僅か1ヶ月程前です。56年の生涯全てを、革新、仕事に捧げたのです。

五七五

 「最近、字を書かなくなった」という会話をあちこちで聞きます。 

 スケジュール管理はスマートフォンという人も多く、ペーパーレス化が加速していると実感するのです。そんな事もあり、長男は書道教室に通っています。その教室で俳句大会があるらしいのです。

 さっそく五七五のルールを習ったようで、指を折りながら、言っています。

 草の中 バッタのレース おもしろい
 公園で ウンテイをして マメできた

 ただ文数を合わせるだけですが、それでも色々と考えているようです。先日買い与えた本には、小林一茶が載っていました。

 やれ打な 蝿が手をすり 足をする
 痩せがえる 負けるな一茶 是にあり
 めでたさも 中位なり おらが春

 一茶は、小さい物、弱い者の見方をする人でした、と解説にありました。

 歴史に名を残す俳人ですから当たり前ですが、たった17文字でここまで違うのです。

 コミカルだったりアイロニカル(皮肉)だったりする句は、一茶のお得意とも言えます。

 早くに母親と死に別れたり、その生い立ちとも関係しているようですが、アイロニカルな表現は、嫌味を感じるか、ふと笑ってしまうか紙一重。この辺りが一流との境目でしょうか。
 
 日本の文化には、金閣寺、日光東照宮、金の茶室など、豪華な貴族文化もありますが、利休の待庵などに代表される「わびさび」の文化もあります。これは、それらへの反発心からくる対比文化とも言えます。

 17文字の小宇宙。

 そんな言葉が頭に浮かびますが、俳句こそがミニマリズム(最小限主義)の行きついたところと言えるかもしれません。