月曜日、ジャンプの高梨沙羅選手は3位に入りました。
前回の4位と銅メダルの差は、明るい涙が物語っていました。まだ21歳。次回は頂点に立つ姿を見たいものです。
彼女のワールドカップ53勝は最多勝タイ。もうひとりはオーストリアの28歳、アルペンスキーのマルセル・ヒルシャー選手です。
自分が試合に出なくなり、全くアンテナを張っていませんでしたが、ワールドカップで6年連続総合優勝をなし遂げています。
「総合」とあるのは、アルペンスキーは主に4つの種目があり、種目別優勝もあるからです。
コース内の旗門をくぐりタイムを競うのは同じですが、最も旗門がすくなく、最もスピードがでるのが「滑降」です。
ピョンチャンのコースでは最高速度が120km/h。
そこから「スーパー大回転」「大回転」「回転」と旗門数が多くなり、ターンはより細かくなって行きます。
「回転」では、ターン技術や俊敏性が求められるので、「滑降」とは必要とされる筋力も変わっくるのです。
「滑降」と「スーパー大回転」を『高速系』、「大回転」と「回転」を『技術系』と区分けします。
マルセル・ヒルシャーは主に『技術系』の2種目にエントリーする選手。
2016-2017シーズンまでの総合6連覇の間、「回転」「大回転」ともに4度の種目別優勝。まさに絶対王者です。
しかしその彼も、オリンピックでは2014年ソチ大会で、回転の銀メダルのみでした。
5つ目の種目として、「滑降」と「回転」という両極端な種目の合計タイムで競う、「複合」という種目があります。
火曜日に、この種目で男子アルペンスキーは開幕しました。
まず前半は滑降。
ヒルシャー選手と、『高速系』のスペシャリストとの差は僅か1.32秒。安定した滑りで7位につけました。
そして後半は得意の「回転」。
前半の急斜面は、少しセーブしている感もありましたが、中盤から後半の滑りは圧巻。
早く美しい。
6人を残してトップに立ったのです。
2位のフランス人選手に0.2秒差に迫られましたが、そのまま逃げ切って、悲願の金メダルを手にしたのです。
絶対王者でも、簡単に勝たせてくれないのがオリンピックなのです。
極上のドキュメンタリー映画を観せて貰ったような気分でした。
まさか、世界最高の選手と張り合うつもりはありませんが、「回転」は私が最も得意としていた種目でした。
大学3回生の3月。岩岳で開催される、日本一大きな草大会に出場しました。
スタート順はほぼ最後尾の394番。1本目、荒れに荒れたコースを攻めて、300人抜きの100位に入りました。ゴールエリアで僅かに歓声があがったのです。
回転は、1本目が早かった順からスタートし、2本合計で競います。2本目はコース状況も良いので、100人抜きのつもりで攻めました。
が、気負いすぎて片足通過反則でタイムなし。この日で大学のスキー生活は終わったのです。
この日の1本目が、私にとって人生最高のランでした。
体格に恵まれなくても、環境に恵まれなくても、仕事だけは頑張った分だけ応えてくれます。
しかし、何かしらの小さな成功体験があったからこそ、頑張れるのかもしれません。
1993年の3月。
春のスキー場で聞いた小さな歓声は、私の人生に少しの勇気を与えてくれました。
トップ選手であれ、アマチュアであれ、スポーツは人生の縮図だと思うのです。