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「The Longing House 」‐1‐プロローグ

 曇りの天気予報をくつがえしての快晴。

 雨降って地固まるという常套句もあるが、やはり地鎮祭は晴れるに越したことがない。

 神主の狩衣(かりぎぬ)も、晴れ空のもと鮮やかだ。

 クライアント家族が一同に会し、神聖な時間を過ごすことで、工事の始まりを実感するのである。

 建築会社の鍬入れが終わり、式典は無事終了。

 地鎮祭の時は、模型も一緒にお祓いして貰うようにしている。

 左にあるのが1/100で右にあるのが1/50の模型だ。

 1/100の模型を見ると分かりやすいが、この計画の特徴は何と言ってもT字型の敷地である。

 接道は東で、T字の足の部分が接している。

 反時計まわりに90度回すと、T字の頭の部分が見えてくる。

 この頭に当たる部分には、主に平屋部を配置した。

 南東角からみるとその形状が分かりやすいだろうか。

 LDKに光を取り込むよう、南には大開口を備えた。

 連続するウッドデッキは、金額調整の中で最後の最後まで課題となったが、何とか実現できることになった。

 そのLDKと直交する形で、個室が集まる2階棟が東に続く。

 2階棟を東へ進むとT字の足に戻り、東端のエントランスとなる。

 ファサードは、この建物のボリュームを想像させない、品あるものにしたかった。

 コンセプトは「家族でワイワイ、ちょうどいい家」だ。

 子育て真っただ中の5人の家族が楽しく暮らせるよう、家事動線は奥様と練りに練った。

 また、将来は両親とも楽しく暮らせよう、ちょうどいい距離感を保てる部屋も備えている。

 完成予定は来年3月で、計画がスタートしてちょうど2年。

 コロナ下の環境もあったが、2年くらいがちょうどだったのかなとも感じる。

 タイトルの「The Longing House 」には、「憧れの家」と言う意味が込められている。

 その意味は、追って紹介していきたいと思う。

文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【News】
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐12‐ときめきました?

 6月末に竣工した「ときめく紺色の家」。

 先週2ヵ月点検に行ってきました。

 クラアントから「ようやく見て貰えるようになりました」というメールもあり、楽しみにしていたのです。

 疑っていた訳ではありませんが、その言葉に偽りなしでした。

 渋滞で少し遅れて到着すると、監督はすっかりくつろいでいます。

 最後に見た現場の最終形から、完全なる「家」に変化していました。

 緑や小物が入ってくると、空間はクライアントのカラーに染まっていきます。

 料理で言うと、最後の味付けのような感じでしょうか。

 奥さんはすっきり好きで、キッチンまわりは気持ち良いくらい片付いています。

 オーディオはご主人こだわりのレコードプレーヤーも。

 収納の中はレコードがびっしりでした。

 完成形を見ていなかったのがパウダースペースです。

 奥さんと娘さんが2人並んでお化粧できるようになっています。

 モザイクタイルと鏡を壁に埋込みました。

 遣り替えが出来ない分、緊張感が無くはありませんが、その決断分美しいのです。

 とても気に入っていると言って頂きましたが、むしろその決断をして下さったことに、私が感謝するのです。

 奥さんは。夜照明を落としてヨガをするそうです。

 その時に、この小屋組みや天井がとても美しいそうです。

 面倒で手間の掛かるところに美は宿ります。必ず狭き門を選ばなければならないのです。

 リビングの先には、ご主人愛用のロードバイクが置いてありました。

 計画時にはエントランスに置くことにしていました。

 しかし、この計画とご自身の独立が重なり、なかなか練習ができずで、試合などは一旦休止中だそうです。

 それでも、「また乗りたいと思って頑張れるからここに置いてあるんです」と。

 私のクライアントは、なぜここまでストイックな人が多いのか分かりませんが。

 未来の暮らしに夢を持ち、ご家族の幸せを心から願う方々と仕事するのは、本当に楽しいものです。

 勿論その過程においては、大変なことも無いことはありませんが、全く無いとそれは辻褄が合わない気がします。

 金額だったり、納期だったり、コントロールしきれないように見えるものも、何とかすると決めれば何とかなるものです。

 この計画のタイトルは「ときめく紺色の家」だったので、「ときめいて貰っていますか?」と質問するつもりでした。

 聞き忘れてしまったので、次回撮影に訪問した時に聞いてみます。

 「ときめかない」とは言い難いとは思いますが、答えにはさほど意味がありません。

 ここを訪れると私がときめくのですから。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよhouse」‐2‐トライCG

前回、軒が深いから「おいでよhouse」というコンセプトが決まるのは、あっという間だったと書きました。

そこからは、クライアントとこのお家はどうあって欲しいか、どうあるべきかを考えて行きます。

その途中にあるのがスタディ模型です。

建築は通常で言うなら人生で最も高い買い物です。

よって、失敗したからやりなおし、という訳にはいきません。

それで、設計図面を仕上げるまでの検討が大切なのですが、私としては描いたり、模型を切ったり剥がしたりしながら、「手」で検討するのが一番良いと思っています。

しかし、2000年頃からCAD化が進み、現在はCG全盛時代となりました。

なんでも挑戦です。

まだまだ造り込みは甘いですがトライしています。

エントランスから1階廊下。

階段を登りきった先にある、スタディコーナー。

そして壁面収納を備えたLDK。

ロフトとの繋がり感も分かりやすいかもしれません。

見下ろしてみます。

「ウォークスルーは見れないですか?」という要望も増えてきました。

3分くらいでまとめてみました。

ニューヨークに住む友人が「文法が苦手だと思うなら、そこから勉強すればいいよ。そうしたら、英語がめきめき上達するから」と言われました。

不得手だと思っているところこそが、自分の伸びしろだという意味です。

まだまだプロクオリティとは言えませんが、リモート打合せが増えた今だからこそ、積極的にトライできるとも言えるのです。

全てはクライアントの幸せの為に。

ビールの宣伝ではありませんが、そこをどれだけ純粋に突き詰めて行けるか以外に違いを出すことは難しいと思っています。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよhouse」‐1‐プロローグ

1997年、初めて住宅誌に作品写真を送った時のこと。

編集者に「コンセプトが大事だから」と言われた。暗にコンセプトが弱い、明確でないと言われたことになる。

しかし今考えると、半分は正しく、半分間違っていると思っている。

建物は草木ではないので勝手に生えてくることはない。どんな建物にも明確なコンセプトが確実に存在する。

例えば、「利益を限界まで追求する」というのも明確なコンセプトである。

敷地は大阪市内の住宅地。

間口5m程の敷地に、駐車場とエントランス周りの空間を配置した。

俯瞰するほうがその形状が分かりやすい。

そのシビアな配置の中で、1m程もある軒の張り出を見て貰えるだろうか。

1階は3つの個室。 

北側接道の為、2階の南側にLDKを配置している。

そして、LDKに面して9畳程あるロフトを設けた。

ロフト下には天井高を抑えられる、浴室などをまとめてある。

北側道路に面したスタディコーナーは、こじんまりとした空間だが、落ち着いて勉強ができるはずだ。(多分)

まだお子さんが小さいので、ロフトは遊び場としてかなり期待している。

高い天井は面積以上の解放感を与えてくれるはずだ。

 今は家の中がゴチャゴチャしていて、なかなかお友達にも来て貰えない。

 新しいお家が出来たら、今はお呼ばれしているお友達を是非招きたいんです。

 そんなお友達を家の前で、傘を差したまま待たせるのは嫌なんです。

奥さんからこの話を聞いた時、この計画の幹となるコンセプトにするべきだと思った。

プロジェクト名はその場で『おいでよhouse』に決めたのだ。

コンセプトとは出来上がった建物を説明するためにあるものではない。

生物にとってのDNAのようなもので、この建物が存在する理由と、その設計の根幹となるものである。

自身が暮らした兵庫県中部に位置する街では、玄関に軒や庇が無い住宅など無かったのだと思う。

市街地で暮らすようになり、そのことに気づき、言葉にできるところが凄いと思ったのだ。

このコンセプトは間違いなく正しい。ならば良い建築が出来上がることはは確定している。

しかし現実はいつものことながらで、厳しい金額調整、そしてハードネゴの下ようやく着工となった。

「おいでよhouse」

何度聞いてもよい響きだ。

悦に入っているのが私だけにならないよう、気を引きしめて竣工を目指そうと思う。

文責:守谷 昌紀

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」景色というびっくり玉手箱‐9‐

 5月も残すところ2日になりました。

 他府県への移動解禁が先か、梅雨入りが先か気をもんでいましたが何とか間に合ったようです。

 できれば来週末まで待って貰えると嬉しいのですが。

 昨日は雲一つない快晴で、生駒山へ伸びる道も気分爽快です。

 足場がとれ、建物の色や形が一層よく分かるようになりました。

 昼以降が良いのが、西を向く建物の特徴です。

 玄関前の庇は柱を無しとしました。

 これは現場で監督と棟梁から提案があり変更になったもの。

 その技と経験がいかんなく発揮されている所なのです。

 1階奥にある洋室は、隣の庭を借景としています。

 そして、奥さんが最後まで拘ったガラス棚があります。

 何を置くかは、もう少し先まで引っ張りたいと思います。

 2階へLDKを上げ、大空間を確保したのですが、空へ向かって開くハイサイドが特に良いのです。

 南隣の瓦屋根から反射した光が、天井に光を届けているのが伝わるでしょうか。

 ご夫妻、監督と「ここからの眺めはいいねえ」としばし佇んでいる、の構図です。

 景色の良さが、写真ではなかなか伝わらないのが私のジレンマですが。

 東面の窓は高さは通常とし、L字に視界が広がるように配置しました。

 柱があるので、完全なコーナーFIX窓ではありませんが「ほぼコーナーFIX窓」といったところでしょうか。

 遠くに生駒山地、二上山を望み、こちらの景色も素晴らしい。

 ある程度は計算していますが、結局は足場とシートが取れるまで分からない、びっくり玉手箱です。

 今回「も」、お宝がでてきました。

 良いことばかり書きましたが、ひとつやってしまったこともあります。

 キッチン横の階段へ光を落とす開口を、減額作業で無くしました。

 奥さんから「この時点で爆弾発言してもいいですか?」と前置きを貰ってから、「今から階段に窓なんか付けられないですよね」と。

 泣く泣く減額したとはいえ、もしかすると光が足りないかもと思っていたので、「外壁の窓は難しいですが、室内窓なら何とかできると思います」とお伝えしました。

 追加費用を最小とする方法を監督と考え、その金額も納得頂き、実現に至ったのです。

 20代の頃は現場が怖い時もありました。

 「何か言われたらどうしよう」ということですが、40歳手前くらからは面の皮が厚くなったのか、そう思わなってきました。

 何があったとしても、切腹まで求められることはありませんし、問題があったとしたら、良くなる方法を全力で考えるだけと腹をくくったこともあると思います。

 人の仕事に完璧はないとも言えます。しかし、家という驚く程高価なものを、「まあまあ」で納得してくれる人は居ません。

 少なくとも、私のクライアントには居ませんでした。

 ということは不可能とも言える完璧を目指すしかないのです。

 現場打合せでは、いつもトップギアに入れ替えます。

 ここはクライアントと監督と私達で創り上げる劇の舞台。そろそろ最終章に差し掛かってきました。

文責:守谷 昌紀

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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」 「い・い・か・た」‐7‐

 今年のゴールデンウィークは今日と明日以外、ほぼ晴れだったと思います。

 この時期は意外に天気が安定せずで、旅先でも降られたことも結構ありました。

 今年は”STAY HOME”ということで、何だか恨めしいと言えば恨めしい。

 しかし建築の写真を撮るのは晴れに限ります。

 「紺色」というコンセプトは、早い段階で決まっていたのですが、春の淡い青空に良く映えています。

 玄関上の庇はかなり跳ねだしていますが、板金で仕上げました。

 柱のない広い軒下は、とても価値があるはずです。

 1階は個室が集まっていますが、大工チームは階ごとや、部屋ごとに分かれていることが多いのです。

 棟梁は1階担当のようで、現場に着いたらまず顔を見に行きます。

 2階はベテランのAさんが担当してくれたのですが、ほぼ下地が張り終わっていました。

 ハイサイドが中央にあり、とても明るいので2階の方が勿論のこと気持ちが良い。

 普通なら2階を担当したいと思うのですが、どんな基準で仕事場を振り分けるのか、今度棟梁に聞いてみようかなと。

 現場打合せも、自然と2階ですることになります。

 クライアント夫妻は、私と監督の長い打合せにも「本当に楽しい!」と言ってくれます。

 よって、監督もいつも以上に気合が入って説明をしているの図です。

 リノベーションでは屋根裏を狙いますが、今回も天井は全て撤去しました。

 ただ、屋根面と梁が取り合う部分は、相当手間が掛かります。

 ベテラン大工のAさんも「ちょっと骨が折れました」と笑っていました。

 黄昏ている訳ではないと思いますが、勿論のこと感謝の気持ちを伝えたのです。

 仕事が大変であればある程、空間には手跡が残り、思い入れと、物語りが織り込まれます。

 それで、私は現場チームが嫌がることばかりお願いすることになります。

 船長の最大の役割は、航海を成功させることです。

 密室である船内で、クルーと喧嘩ばかりでも困りますが、ご機嫌をとっていて、船が難破してのでは話になりません。

 「幸せな家を建てる」という航海の舵取りを任せて貰ったなら、人に良く見られたいとか、上手くやりたいという気持ちはぼぼゼロです。

 ただ、言い方は大事です。

 「ほんとに悪いんだけど、ここは、こう納めて貰えたら嬉しいんだけど……もし、ああ納めたら多分夢にでてきてうなされると思う……」

 色々な仕事をさせて貰ったので、自分の経験を総動員して、話し合います。

 ただ言葉の綾でなく、ほんとに夢にでて来たことが一度や二度ではないのですが。

 ドラマなんかでもよくあるあのセリフの通り。

 「い・い・か・た」

 なのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐1‐プロローグ

2017年の6月、「新築、リノベーションの両方を考えている」という相談を貰った。

大阪府内の旧家で、門や蔵等が残っている。

正門は戦前からのもので、背の低い舞良戸が昭和初期の佇まいを残している。

南から正門をくぐると、石畳が北へと誘う。

すると、仏間と呼ばれている棟に突き当たる。

南北に縁側をもつ古き良き日本家屋で、この棟をフルリノベーションするという案もあった。

他の棟も調査し、かなり大規模なリノベーションの提案となったのだ。

軒の深い建物は外と内のつながりが何とも穏やかだ。

良いものになると確信していたが、紆余曲折あって仏間棟を取り壊し、新築することになった。

コンクリート打放しの平屋を建てるという選択肢に行きついたのだ。

少し視点を下げると、蔵に挟まれた門の奥に配置されているのが分かって貰えるだろうか。

深い軒は踏襲する事にした。

特徴は、広い敷地を活かした「H型プラン」だが、この配置なら全ての部屋に光と風が過不足なく届く。

北棟には水廻りや来客スペースを集めた。

南棟は、広い南の庭につながるプラベート空間が3つ並んでいる。

左右に主寝室と子供部屋。中央にLDKという配置だ。

アプローチは北側からで、エントランス前まで車で寄り付けるよう考えている。

旧家と言われるご家族の住宅を何件か設計させて貰った。

大きく意識が違うと感じるのが「住み継ぐ」という考えだ。

曽祖父が豪農だった。祖父が商いで成功した。経緯はそれぞれだが、財を成した先祖へ対する敬意と土地に対する愛着が非常に大きい。

「大きな敷地で羨ましい」というのが、私も含めた庶民の率直な気持ちだが、受け継ぎ、引き継ぐという重圧はかなり大きなものだと感じる。

ここで暮らすのはご夫妻と小さなお子さんだが、彼も含めて、二代、三代と「住み継ぎたい」と思って貰えるようなものを目指した。

解体工事や補修工事もかなりある。竣工は年末か年始あたりだろうか。

安藤忠雄によって広く認知されたコンクリート打放しだが、日本建築の財産でもある。

環境と共に生きる、美しく、幸せな打ち放しの家を必ず実現させたいと思う。

文責:守谷 昌紀

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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐2‐春の思い出

 元号の発表もあり、新年度がスタートしました。

 庭木も花をつけ、現場へ向かう道中を楽しませてくれます。

 建築の集合体が街とするなら、良い家を創ることは街へ貢献することにもなるはず。

 どの仕事もそうですが、遣り甲斐はおつりがくるほどあるのです。

 内部の手バラシがほぼ終わりました。

 この建物は築30年と、フルリノベーションの中では比較的新しいほうでしょうか。

 基礎のひび割れもなく、床下も乾燥。状態は良好です。

 浴室は水気が多いので、痛んでいることもありますが、それも問題なさそう。

 こちらの建物は、宮大工が1年程掛けて建てたと教えて貰いました。

 今は亡きクライアントのお父様の知人だったそうですが、構造体はしっかりしています。

 2階の床版がないこの状態は、高い位置からの光が1階まで落ちてきます。

 教会の高窓のような光が差し、空間をドラマチックに演出するのです。

 流石に、2階床版の全部を無くす訳にはいきませんが、1箇所、2階と通じるようにしたいと考えています。

 宮大工が担当しただけあり、下屋の屋根組は極めて複雑。

 この部分をバルコニーにしようと考えており、このあたりは、監督、棟梁の腕のみせどころなのです。

 棟木には御幣がとめられていました。

 周辺は田んぼですが、まだ何も植わっていません。

 下草が生えだし、のどかな景色が広がります。

 私と同年代のクライアントが「写真と言えば、あの辺で撮ったものばかりだったな」と。

 間もなく田植えが始まるはずで、秋までは下に降りられないと思います。

 冬になれば切り株と土ばかりで絵にならないでしょう。

 そう考えれば、この時期の写真だったのかなと想像するのです。

 記憶は景色と共に残ります。誰かの人生の背景をつくっていると考えれば、やはり責任は重大です。

 新芽の匂いとともに、誰にも春の思い出があります。

 その背景を、少しでも美しく彩ってみたいと思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
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「四世代で暮らす家」‐5‐テイスト

 外壁の塗装がほぼ終わりました。

 黒い外壁が、ようやく見てとれるようになりました。

 こちらの住宅は四世代が暮らすので、各住戸のテイストがかなり違います。

 親世帯は、シックな感じで統一しました。

 アイランドキッチンの横には、1段上がった和室があります。

 中央にあるのは掘り炬燵です。

 こちらの住戸は、縦のスリットを全体のイメージに使っています。

 外部にも縦ルーバーの目隠しをデザインしました。

 これらは、なぜか日本を感じさせます。

 洗面は天板をクウォーツストーンとし、床はタイルとなっています。

 石など横の広がりが強いものは、やはりヨーロッパの香りを感じさせます。

 若夫婦世帯は、よりシンプルな感じでまとめました。

 モールとステンドグラスに、そのテイストが集約されています。

 『住人十色』という番組がありますが、ライフスタイルは住む人によって本当にまちまちです。

 好みと言ってしまえばそれまでですが、その中でも、一番真ん中にあるテイストを見つけたいと思います。

 黒は強い色です。

 それぞれのテイストをまとめ上げるために選択したのですが、功を奏することができるでしょうか。

 こちらの計画も、竣工まで1ヵ月をきりました。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐3‐アイコン

 正面に「7月 OPEN」の横断幕がとりつけられました。

 この建物のイメージカラーは白と薄紫。

 それに合わせせて、クライアントが準備してくれたものです。

 横断幕が張られているのは、ちょうど2階の大開口部の位置。

 上品かつシンボリックな建物を目指しています。

 この敷地が台形であるがゆえ、面白い空間が生まれます。

 これは院長室の前にあるバルコニー。

 現在はブルーシートがかかっていますが、休憩時間には、ここから空が見上げられるのです。

 間接照明の真っすぐな光のラインが、斜行する壁をより明確にしてくれるはずです。

 さらに、陰影でそのフォルムを明確にするため、当初は庇をデザインしていました。

 しかし減額調整でそれらは全て中止。何とか実現できないかと、しつこく現場に相談中です。

 パソコンが普及して、アイコンという言葉がよく使われるようになりました。

 もとはイコンが語源で、ギリシャ語でイメージを指すとあります。

 一度訪れてくれた人の頭の中に、アイコンとして、像として残るようなクリニックにしたいのです。

文責:守谷 昌紀

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