関西地方が梅雨入りする前日、「うえだクリニック」の建方工事がスタートしました。
基礎工事、配管工事までは非常に順調に進んでいました。
消費税の駆け込み需要もあってか、プレカットにかなりの時間を要してしまいました。
しかし泣き言を言っている時間などありません。
早速、建方1日目の現場へ行ってきました。
きわめて人通りの多い長尾街道ですが、道路の使用許可もギリギリの建方工事となりました。
安全を預かる警察としては、勿論「出来るだけ出っ張らないよう」、工事をする側は「仮歩道をつくるので、ここまでの許可を……」といった交渉になるのです。
建築とは、人手と時間が兎に角かかるものなのです。
1階の柱を建て終わったところで、昼休憩となったようです。
建築現場では垂直のことを「たち」と言います。
たちのでていない柱はまるで、枝葉の無い林のよう。
それが微調整され、梁と繋がれた時にピリッとした景色に変わります。
1階エントランス部は、条例によるバリアフリー対策と、重量のある医療機器を搬入するため、段差はほぼありません。
うず高く積まれているのは羽子板ボルト。
その数は、現代の木造建築がいかに頑丈かを視覚で証明してくれます。
この日は、2階床の合板まで張る予定だと、顔見知りの大工が教えてくれました。
私はここでタイムアップ。
翌々日の梅雨入り2日目、朝一番に再訪しました。
躯体は2階まで組みあがり、ピタリとたちもでています。
この段階でも、この建物のポテンシャルを感じさせてくれるのです。
先程の、段差ゼロのエントランスからクリニック内に入っていきます。
正面に受付を見ながら、左手が待合。
2層吹抜けの空間は、優しい光が差し込むよう設計しました。
受付横にメイン通路があり、右に診察室、左に検査室が並んでいます。
丁度コンクリートの道が、高度な医療機器が通っていく花道です。
奥に掛かっていたハシゴで2階に上がります。
2階は全てバックヤードですが、とても面白い空間構成になっているのです。
吹抜け部にはキャットウォークのような空間があります。
その両サイドが外部となっており、間接光を高い位置から取り込みます。
患者の人は上がれませんが、奥まっているところがポイントで、その部分は院長が年に1、2度掃除してくれることになっているのです。
全ての柱に「うえだクリニック」と刻印があります。
同じく梁にも。
枝葉の無い林が、柱、梁と役割を与えられたとき、材木から建築となって行きます。
役割がそれぞれの価値を持たせるのは、人であれ、材であれ全く同じです。
自由で居たいと反発する人を見ることがありますが、自由と怠惰をとり違えているのではと言うと、言いすぎでしょうか。
仕事が好きそうな、若いオペレーター君。
まだ20代だそうで、ここで昼ごはんを食べていました。
穏やかな、熟練の大工。
ブルーシートを日よけにしての昼食です。
仕事が好きで、現場が好きな人と会うと、それだけで気分が良いのです。
独立してすぐは、人など雇えないので、クライアントからの電話も、営業を断るのも、現場からの電話も、全てひとりで受けていました。
休憩時間などと言うものは、私にはありませんでした。
今も人手不足で、それに近い状態に逆戻りしていますが、それでも何とかやっていけます。
楽しく、充実した人生を歩みたければ、仕事を好きになるしかないのです。特に男にとっては。
友達が居ない私が孤独を感じないのは、家族が居ることと、仕事好きの人間と、時々会うことが出来るからだと思います。
正直に「時々」と書いたのですが、できればそんな人とだけ、仕事がしたいものです。
一歩一歩前に進んでいっている実感はあります。自分の仕事人生の中で、目標にどれだけ近づくことができるのか。
現場だけが全てを知っているはずなのです。
文責:守谷 昌紀
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