タグ別アーカイブ: 鉄筋コンクリート

住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐13‐家具と奏でるシンフォニー

引越しが終わったらら、ようやく全て完成です。

と、なかなかならないのが拘り住宅。

外構工事は特に遅れることが多く、庭木はまだ確認できていませんでした。

それで、オリンピック連休に入る前に、少し時間をとって貰ったのです。

エントランス回りも、ようやく最終形をみることができました。

面白かったのは腰掛スペース。

そこに座っているのはブリキの飛行機でした。

そして人はこっちを利用するのです。

 靴箱もスチールの収納でまとめられ、コンクリート打ち放しのソリッドな感じに良くあっています。

エントランスを左に曲がったところにあるのが和室。

銀色の畳に、ステンレスの床を合せました。

奥さんが活けた花が、彩を添えます。

建築は無機物ですが、こういった心遣いによって全く違う次元へと昇華するのです。

ダイニングテーブルも、ウォルナットの床と良く合っています。

キッチン後ろの収納内も見せて貰いました。

食器、家電、小物への愛情も十分に伝わってくるのです。

コーヒーを出して頂き、ちょっと都心部にはない景色をゆっくり楽しませて貰いました。

暑い時期ですが、90cmある庇がその役割をしっかり果たしていることも確認できたのです。

LDKに並ぶ形で配置したのが寝室です。

反対側が子供部屋。

こちらの空間は、モデルルームのような仕上がりでした。

ウォークインクローゼットさえも画になるのは、コンクリート打ち放しのポテンシャルと、セレクトされた家具が心地よいシンフォニーを奏でているからと思うのです。

ようやく本当の意味での完成形をみることができ、少し肩の荷がおりました。

スケジュールを調整させて貰い、お盆明けに撮影をお願いしました。

4年に及んだプロジェクトも、いよいよ最終局面までやってきました。

あとは日々の行いか、神頼みか。

この日のような快晴になれば良いのですが……

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐12‐引っ越してきたニャ

 今週月曜日に、ようやく引き渡しが終わった「H型プランの平屋」。

 計画がスタートしたのは2017年の6月なので、約4年に及ぶプロジェクトになりました。

 最長記録は5年1ヵ月の「四丁目の家」ですが、それに次ぐ長さです。



 南の庭に面するウッドデッキも何とか形になりました。

 が、塗装はまだ。

 足洗い場まで備えたフルバージョンですが、工程監理は永遠のテーマです。

 前回はひっくり返っていたLDKですが、造作家具も据え付けが終わり、ようやく最終形が見れました。

 向かいにあるキッチンは、サンワカンパニー製です。

 コンクリート打ち放しとウォルナットのフローリングに、ステンレスが良く合っています。

 LDKを挟み、東西にあるのが各個室。

 同じく庭を望みますが、北側にウォークインクローゼットを備えています。

 現在は空っぽなのでそれはそれで格好良いのです。

 紆余曲折あった和室もようやく完成。 

 床板はステンレスで、背面には黒皮鉄板です。

 氷ばかり艶なるはなし

 室町時代の僧、心敬の精神を体現してみました。
 
 亭主が客人をもてなすためにあるのが床。一緒に回っていた長男君が、ドラえもんのオモチャを飾ってくれました。

 物の貴賤ではなく、もてなす心が大切なのです。

 浴室もようやく完成。


 脱衣室まわりもすっきり仕上がっています。

 南面の大開口は圧巻はですが、なにやら視線を感じます。

 木の陰から、興味津々にこちらをのぞいていたのは子ネコでした。

 主はこちらだと思っていたら、新参者だったようです。

 そうこうしていると、引越しの準備にご主人が車で見え、少し一緒に中を回りました。

 その後、「銀行との最終打合せがあるので」と出て行く前に、両手をとって「ほんとに有難う」と言ってくれました。

 計画の途中、私から急かしたことは一度もありません。全てはなるようになりますし、行くべきところに行くものです。

 これまでの仕事人生で「建てましょう」とか「建てませんか」という言葉を使ったことはありません。

 「建てたい」人の力のになりたいだけなのです。

 今日から始まる新しい暮らしは、きっと素敵なものになるはず。こちらのお家はオープンハウスを予定しているので、また告知させて貰います。 

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
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■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐11‐ネコと一緒

 敷地が大きいということは、多くの人にとって憧れです。

 代々引き継がれてきたこの敷地は、隠しようがないくらい大きいのです。

 その敷地に、H型にコンクリートの箱を配置することが、この計画の全てのスタートになりました。 

 躯体によって演出される外部が非常に重要なのです。

 エントランスホールに入ると、その奥に見えるのが中庭。

 周囲をぐるりと回ると、樹齢300年は越えている大楠木が見えてきます。

 成長し過ぎたがゆえ、今回かなり枝を落としたのですが、それでもこの時期には青々と葉をつけています。

 この外部空間は、躯体と大楠木によって、プライバシーが保たれています。

 クライアントも「ここはBBQに持ってこいですね」と。

 エントランスの前後にある外部は、この建物にとって非常に大切で、意義のある空間なのです。

 内部は最終盤を迎えごった返してきました。

 南の庭に面するウッドデッキも、下地が出来上がってきました。

 仕上がっている部屋も勿論ありますが。

 今回のファサードのカットには、全てこの職人さんが写っています。

 「写真撮るけど、入っても構わない?」と声を掛けたのですが、「ハイ、大丈夫ですよ」と。

 この日は天気がよく、庇下がとても気持ち良さそうで、昼食後の休憩場所にここを選んでくれたようです。

 ネコはその家の一番気持ちの良い場所を占領すると言いますが、こういった景色を見ると非常に手応えを感じます。
 
 ネコと一緒にするなと言われるかもしれませんが、人もネコも正直なものだと思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
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■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐10‐雨雨ふれふれ

 ようやく足場が外れました。

 先週土曜日の定例打合せでは、しっかり雨が降っていました。

 建築写真は晴れに限りますが、普段の暮らしにおいてなら、雨の日のほうが差が出るかもしれません。

 アプローチにコンクリートの庇を設けましたが、奥もガラスの庇が連続します。
 
 車が横付けできたり、ゆっくり傘を畳めるスペースは、雨を楽しむためには有効な空間となるはずです。

 エントランスホールに入ると、目線の先には光庭。

 南を向けば、LDKの先にある庭が目に入るのですが、これだけの外部を備えたケースは稀でしょう。

 反対の言い方をすれば、これらの外部を活かし、取り込むためには、このプランの方向性しかないと思っていました。 

 この日から現場はスリッパ着用となりました。

 小さな紺色のスリッパがひとつ。

 監督がお子さん用に準備してくれたものでした。

 大人用の健康サンダルだそうですがサイズはぴったり。
 
 こういった気遣いの積み重ねは、必ず物創りに活かされるはずです。
 

 床がほぼ完成したので、その長男君もようやく走り回ることができます。

 退屈なはずの打合せ中、一人でも楽しそうに遊んでくれ、私としては本当に救われる思いでした。

 彼に報いるには、好きになって貰える空間を創りあげるしかありません。

 そんな彼と、しばらく庭に振る雨を眺めていました。

 深い軒は、雨を楽しむためには何より必要なものです。

 今回は90cm確保できましたが、このくらいあればそう雨は入ってきません。

 軒からぽとり、ぽとりと落ちる雨だれを見ているだけで、全く飽きないものなのです。

 各個室からは緑が見えますが、これは旧母屋に合わせて作られた日本庭園でした。

 反対から見返すとこのような景色ですが、コンクリート打ち放しの家に合うかを親族の皆さんは気にされていたと思います。

 コンクリートの原料はほぼ自然から採れたものですから、どのような庭であっても相性が良いのです。

 やはり雨と言えばカエル。

 こんな立派なカエルが居るのは、旧家ならではのことでしょう。

 八代亜紀の歌った「雨の慕情」は1980年のヒット曲です。作詞は私も大好きな阿久悠さんでした。

 雨雨ふれふれ もっとふれ

 私のいいひと つれてこい


 そんな人は居ませんが、雨だれを見ているとそんな気持ちになるから不思議です。

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐9‐勝負は一度きり

 彼岸を過ぎ、ようやく寒さも一段落です。

 南棟はほぼ全面コンクリート打ち放しなので、寒さ対策として床暖房を採用しています。

 銀色のパネルがその部分。

 床が出来上がると、ボリュームはほぼ最終形です。

 打合せの後、ガラスが搬入されてきました。

 実家がガラス屋だったので、アルバイトでよくガラスは搬入したものです。

  

 ガラスが入ると、ぐっと家らしくなります。

 野外と屋内の境界線となるのが外部建具なのです。

 ダンボールで養生されている前あたりにキッチンが据え付けられます。 

 キッチン後方の壁側面には、インターホンをはじめ、さまざまなスイッチ等が集中しています。

 これらの位置や、配管もコンクリートの中に打ち込まれているので、全て先に決定しておかなければならないのがコンクリート打ち放しです。

 ダウンライトを取り付けるヘコミも先に作っています。

 スポットライトを取り付けるダクトレールも同じ。

 この緊張感が魅力ではあるのですが、はやくライトが灯っているところを確認したいものです。

 エントランスには、小さな腰掛があります。

 後から既製品をつくるほうが融通はききますが、躯体と一体となっているコンクリート椅子は、一味違った潔さがあるでしょうか。

 建築は、何十年にもわたって家族の安全を守る役目を負います。よって、頑丈であることは最重要事項です。

 頑丈ではあるが、後で遣り替えが可能ということはほぼありません。その最たるものが、コンクリート打ち放しなのです。

 それゆえ、クライアントとの打合せでどれだけ先に詰めておけるかがとても重要です。

 今回打合せで、数えること43回目。

 計画がスタートし、4度目の春を迎えました。

 様々な曲折がありましたが、ついに最終局面に入ってきました。

 ゴールデンウィークには引っ越しして貰えるはずです。 

 文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐8‐花は観手に咲く

 能の大成者、世阿弥はこう言いました。

 花とは命がけの熱意

 創り手として、エゴイスティックになったり、技自慢に陥っていまわないよう、いつも心の奥に留めているつもりです。

 コンクリート打ち放しの外壁がようやく全面見えるようになりました。

 H型プランのへこんだ部分は、車寄せでありアプローチとなっています。

 見上げるとコンクリートと空が対象的ですが、空部分はガラス屋根で覆われるのです。

 上から見るとこうなっていますが、中央にあるエントランスホールの向こうも、光庭となっているのです。

 ホールから見るとこのような景色に。

 反対側から見返してみますが、この空間はエントランスホールだけでなく、北棟にある和室、南棟にあるLDKへも光を供給してくれます。

 LDKは南から十分光が入りますが、北側からの光は柔らかく、風通しは各段によくなるはず。

 見上げるとこの地に数百年は鎮座する大楠木が。

 これほど恵まれた平屋は、そうはないでしょう。

 南の大開口からは旧家としての正門と、日本庭園を望みます。

 こちらには深い庇を設け、夏の日差しは完全に遮るのです。

 

 折角の大開口も、都心部の暮らしではなかなかフルオープンにはできないものです。

 それを解決する為、高い塀を設けた後ろに光庭を設けたり、リノベーションにおいては、建物に大きな穴を開けたりもしました。

 光と風という自然のダイナミズムを、いかにして安定した内部に引き込めるか。それこそが、建築設計の命題と言って良いと思うのです。

 しかしこの敷地においては、悩んだり、迷ったりすることは全くありませんでした。

 素直に敷地を受け入れ、必要な空間に、必要な光を風を与えることができたからです。

 そういう意味においては、私の物創りのキャリアの中で、平屋住宅のひとつの完成形だと思っています。

 先述した世阿弥は、こうも言いました。 

 花は観手に咲く

 クライアントの心に花を咲かせることができるのか。審判の時が徐々に近づいてくるのです。 

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐7‐祭だ、祭

 2021年の現場日記。

 初回はコンクリート打設の風景からスタートです。

 12月28日(月)、29日(火)の2日に渡っての打設で、28日(月)の朝方まで降っていた雨も完全に上がりました。

 コンクリートは生ものにつき、出来るなら1日で打ち上げたいところです。

 しかし、こちらの敷地はアクセスが非常に厳しいのです。

 前面道路は4m、かつクランクして幹線道路に繋がります。途中、商店街も通過しなければならず、昼間は車両進入禁止という厳しいの3乗です。

 警察署に相談へ行き、近隣とよく話し合った上で、商店街の一部をミキサー車が通ることを許可して貰いました。

 苦労をして、ここまでやって来たミキサー車です。

 ミキサー車、ポンプ車、そして圧送工へ。

 様々な工事種別がある中で、コンクリート打設は最も人手がかかる工事と言えます。

 はっきり言って祭です。

 圧送工はこの日の主役。

 誰だってそうですが、一生懸命働く姿はやはり美しいものです。

 この道具はトントンと呼ばれるもの。

 圧送工が主役なら、コンクリートを円滑に打ち込むため、この木槌で型枠をトントンと叩くのは、裏方仕事と言って良いでしょう。

 建築現場は、常にチーム戦なのです。

 打設したあとを追いかけるように左官職人がコテで押さえていきます。

 コンクリート面に高低差があるのが分かるでしょうか。

 時間とともに硬化する特性があるから、こういった形状を形成できるのです。

 更にベテランの職人が平滑に仕上げて行きます。

 最後にトンボのような道具で広い面を押えるのですが、コンクリートが波打つ景色を是非ご覧ください。

 徐々に硬化して行く特性と、最後に水分が浮き上がってくることまで踏まえ、更に気温、湿度なども経験に照らしあわせながら、鉄筋コンクリートの躯体は形作られて行くのです。

 庇の端部も美しく仕上がっていました。

 11時過ぎ、午前の部が終了し、最後のミキサー車が現場を後にしました。

 職人たちも安堵の顔で、三々五々昼食へ向かいます。

 体を動かした後の昼食は、間違いなく美味しいはず。

 生コンのしずる感。

 人の手では成しえないことを実現する重機。

 そして、各職人の熟練の技術。

 職人にとっては日常ですが、物創りの現場は全てが非日常。毎日が祭だとも言えるのです。

 動画が簡単にUPできるようになり、そんな彼らの日常を伝えるのも私の仕事かなと思うようになりました。

 現在はゲツモク日記と同じサイトにUPしています。

 現場で写真を撮っていて、腰の据わっている職人を見ると、美しいとさえ感じます。

 トップアスリートの映像が美しいのと同じですが、彼らはほぼ一生現場で働きます。

 そんなフレッシュで、美しく、祭な現場を、今年も届けて行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。

文責:守谷 昌紀

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐6‐クルクルとハッカー

 ようやく冬らしい気温になってきました。

 と思っていたら、関越道では大雪で多くの車が立ち往生。ほどほどが良いですが、こればっかりは……

 「H型プランの平屋」は、いよいよ工事が佳境に入っています。

 鉄筋コンクリート造の建物は、まず外側の型枠を起し、内側に鉄筋を組んでいきます。

 コンクリートと鉄の長所を組み合わせたこの構造は、大空間を安価に造る為に考えられたと言われています。

 そのコストパフォーマスの良い躯体を、そのまま仕上げにしようというのが「コンクリート打ち放し」です。

 よって、電気の配線、LANの配管、水道など、全て躯体の中に通り道を確保しておかなければなりません。

 一度コンクリートを打設したなら、もうやり替えることは不可能なのです。

 それゆえ、現場には常に緊張感があるのです。

 今日の午前中、定例打合せに行くと屋根スラブの配筋が始まっていました。

 レッカーで鉄筋を仮置き。

 それを人力で配置。

 更に、鉄筋と鉄筋を一本ずつ番線で結束していきます。

 その作業量は膨大……

 職人はキビキビとハッカーという道具をクルクルと回しながら、結束して行きます。

 機敏過ぎて、カメラで追うのも四苦八苦でした。

 何故ハッキングという悪さをする輩と同じ名前なのかは知りませんが、色々な意味で「対極」と言って良いかもしれません。

 型枠は最終的には上部以外全て閉じられてしまいます。

 コンクリートが打設された重さに耐えれるよう、室内は無数のポストで支えられます。

 この暗い、ポストの林がどんな空間になるのか。

 型枠をばらすまでのこのワクワク感も、コンクリート打ち放しの魅力なのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐5‐プランを上から眺めてみよう

 近代建築の三大巨匠のひとり、ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」と言いました。

 住むという機能を満たす機械であるという意味です。

 快適に住むための機能は多々ありますが、光と風をいかに取り込むかは、最大の課題と言っても良いでしょう。

 旧家であり、敷地が大きなこの計画では、各部屋が全て外部と接するプランを考えました。

 東の中庭にある大楠は、あまりにも成長したため、枝を大きく落としました。

 そこから新芽がでて、更にそれらが紅葉しています。

 若干かわいそうではありますが、あたりがグッと明るくなったのもまた事実なのです。

 コンクリート打ち放しの壁式構造は、なかなかに時間が掛かる構造体です。

 鉄筋を組み、型枠を起し、その中に配管をし、そしてコンクリート打設。

 そこから硬化するまで養生が必要です。

 鉄とコンクリートがそれぞれの短所を補いあう、非常に強い素材で、木造や鉄骨でも基礎として使われます。

 全てが基礎のようなものですから、強いに決まっているのです。

 型枠工事に先駆けて、足場がすでに組まれていました。

 結構高かったのですが、上から見下ろしてみました。

 右手が南となる、H型プランが良く分かります。

 南棟の先には和の庭園が残っています。

 こちらはクライアントのご両親が暮らすエリア。

 この庭は緩衝帯にもなっているのです。

 「機械」という言葉の解釈は色々あります。

 「機械的に」という言葉には、淡々と無感情でといったニユアンスが強いでしょうか。

 しかし、コルビジュエが言ったのは「目的に向かって真っすぐに」と言ったニュアンスではないかと思っています。

 この計画は、方向性がなかなか定まりませんでした。

 「2階建て新築」→「前棟リノベーション」→「平屋新築」と実際に3度企画提案をしています。

 それぞれ、与えられた条件での中で「目的に向かって真っすぐに」と考えれば、どの提案にも迷いはありませんでした。

 ただ、恵まれた敷地条件を最も活かせるのは「平屋新築」だとも思っていましたし、高い足場から見下ろしてそう確信しました。

 水は高い所から低い所に流れるように、最後には行くべきところに行くのだと思っています。

 建築に、誘導や焦りは禁物なのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐4‐ソリッド感と透明感

 先週、基礎の打設が終わった「コンクリート打放し H型プランの平屋」。

 週末、定例打合せがありました。

 Hの横線が二つの棟を繋ぐので、そこがエントランスになります。

 エントランス奥には裏庭があり、この空間もなかなか魅力的な空間です。

 南には、旧家としての和の庭が残っています。

 LDKの開口は、これらに面して開かれています。

 灯篭があったり、カエル石があったり。

 ミニマルな建物とこれらの外部を、どう結び付けるかも腕の見せどころです。

 CGのアニメーションをUPしてみます。

 打ち放しの建築は、コンクリートのソリッド感、ガラスの透明感をどう連続させるかが大切です。

 コンクリートの強度を活かし、かつ閉鎖的にならないよう腐心するのです。

 南からは光を取り込むために、ガラスの透明感が主役になります。

 俯瞰で見ると、そのリズムが分かりよいでしょうか。

 エントランスからの景色。

 90度右に曲がるとLDK。


西にキッチン。

 東にはテレビを含めた飾り棚があります。

 子供部屋も、出来る限りコンクリート打ち放しの良さを引き出したいと考えました。

 キッチン裏には奥さんの家事室も。

 極めてシンプルに、2つの棟を中央の動線でつないだコンクリート打放しの平屋。

 打ち放しはやり直しが効かないだけに慎重に現場は進んでいます。

 連続するソリッド感と透明感。

 これこそが打ち放しの魅力だと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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