3台駐車可「3つの庭を持つコートハウス」‐6‐現場の花

 今仕事をしている工務店は、10件くらい連続で落札しています。

 これだだけ続けて仕事をしていると、大方の職人は顔を見れば分かるようになります。

 こちらのサイディング屋さんは、ファンキーな金髪がトレードマーク。

 見た目と違って(失礼!)、笑顔はとても愛嬌があるのです。

 大工チームも4組くらいありますが、以前会った棟梁の息子さんがアルバイトに来ていました。

 前に現場で会った時は、大学はほぼ行っていないと聞いていましたが「ようやく授業も始まります!」とのこと。

 リモートで全てが解決する訳ではないので、聞いている私も嬉しくなります。

 偽りのない笑顔が全てを物語っているはずです。

 2階へ上がると、電気屋さんが配線をしていましたが若い女の子もいました。

 最近は現場で働く女性もいるので、新しい社員さんからと思いながら1階に下りて、クライアントとの定例打合せに入ったのです。

 このくらいまで現場が進んでくると、変化が大きくなり見ていても楽しいもの。

 それはクライアントの表情を見ていても伝わってきます。

 今日は2週連続ということで、1時間半くらいで終わりにしました。
 

 帰る準備をしていると、電気屋さんも1階に下りてきたので聞くと、娘さんだそうです。

 「跡取りなんですよ」と。

 今の仕事を辞めて、本格的にこの仕事をするそうなのです。

  今は現場で言う「てったい(手伝いのこと)」です。

 ただ、ちょっとサポートしてくれるだけで、仕事の精度は全く違うものになったりします。

 仕事の師でもある父親をサポートする姿は、見ていても清々しい景色でした。

 「今日は棟梁の息子さんもいて、電気屋さんの娘さんもいるから、ジュニアオールスターやね」と軽口をたたいたのですが、これは親父ギャグ……?

 次の打合せがあるので、アトリエに戻ったのです。
 

 力仕事もあるので、大変だとは思います。

 だだ、これは決して他人事ではありません。

 いくら仕事を依頼して貰ったとして、誰も作ってくれなければもうどうしようもありませんから。

 現場の花として是非頑張って欲しいと、切実に願うのです。 

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「あの森のOhana」かやしまフォトスタジオ‐2‐人物像を立体的に浮かび上がらせよ

 初めてアニメーションを製作したのは「おいでよhouse」でした。
 

 それ以来、各プロジェクトで挑戦していますが、一朝一夕には進歩しないものです。


 構想が現実となっていく過程がこの現場日記。

 最終形を想像するのはなかなか難しいものですが、今回も模型とアニメーションの二本立てで検討しました。 
 

 エントランスは開きすぎず、開かれている空間を目指しました。

 レセプションのコンセプトは、現Ohanaと同じ。

 ちょっとおしゃれな知人のリビングです。

 ワークスペースは、光が入り過ぎない方が良いので、換気を重視しました。  

 2階のスタジオは大空間です。

 西側は西日を防ぐために開口は小さめ。

 北側は緑が目に入るよう大きく開きました。

 そして東の正面はこの格子窓です。

 将来的にはギャラリーのような使い方も視野に入っているので「入ってみたい!」と思って貰うことはとても大切です。

 ワクワク感が窓からあふれ出すイメージで設計しました。

 このカットだけ雰囲気が違うのは、レンダリングという機能を使っているからです。手前味噌ですが少しだけ進歩したでしょうか。

 カメラマンの石井さんは完全に模型派です。

 模型も1/100と1/50を製作したのですが、1/100は喜んで貰えました。

 1/50のほうはオープンデスクの学生に担当して貰ったのですが、出来がいまひとつで……

 もう一度気合を入れて作り直します。
 

 模型派なので、動画の反応もやはりもうひとつでした。

 しかしそれも重要な情報です。

 沢山の問いを発信し、その反射でクライアントの人物像を理解していく。丁度、魚群探知機のシステムに似ていると思っています。

 パルス波を沢山発信すればするほど、人物像が立体的に浮かび上がってくるのです。

 ここに魚が居るという情報は大切ですが、ここに魚は居ないという情報も大切な場面が、必ず出てきます。

 知るということは、自分に可能性を与える。知らないということは、自分の可能性を狭めている。

 サッカー選手、中田英寿さんの言葉ですが、核心に迫る言葉だとい感心しているのです。
  

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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3台駐車可「3つの庭を持つコートハウス」‐5‐AORとクラッシック

 各現場の定例打合せは、日程のルールを決めています。

 こちらの現場は、奇数週の土曜日ですが、雨が降ったのは地鎮祭の日だけだったと思います。
 
 その時は足下がズブズブで、監督が慌ててベニヤを買いに走ったのです。

 順調に工事は進み、中盤戦に入っています。

 「どうせまだ揚げてないだろうな」と思いながらやってくると、揚がっていました。

 当社の横断幕ですが、疑って失礼しました。 

 LDKは広い廊下と繋がり開放的です。

 光の取り入れ方は色々ありますが、ここでは長い庇とハイサイドを組み合わせました。

 冬は遮らず、夏は床に落とさない位置を狙っています。 

 外から見るとこのような感じ。
 

 跳ね上げた屋根が、2階棟と交差する所があります。

 内側から見るとこんな景色。

 細やかな細工は木造ならではです。

 大工チームの技が発揮されるのです。

 壁面には図面が貼られていました。

 その上あたりには煙突の下地が。

 薪ストーブが取りつくのですが、これも楽しみ。

 図面は歌に例えれば楽譜のようなものです。
 
 「3つの庭を持つコートハウス」を音楽に例えるなら、ベースはAORでしょうか。

 薪ストーブがあるので、多少クラッシックの要素も入ってきます。

 ボビー・コールドウェルとエリック・サティ。

 全く違うジャンルを内包し、美しい一曲にまとめ上げたいと思うのです。 

文責:守谷 昌紀

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「あの森のOhana」かやしまフォトスタジオ‐1‐プロローグ

 2008年の2月18日にオファーを貰い、翌年の9月28日に完成したのが「かやしまフォトスタジオOhana」である。

 

 元の店舗は京阪萱島駅の高架下にあった。


 創業者は、現在の店主でありカメラマン石井さんの御尊父である。


 高度経済成長期、DP店と言われる現像やプリントサービスは、大変に繁盛したそうだ。

 しかしデジタルカメラ時代に入り、新しい業態へと変化していく分岐点にあったのが新店舗計画だった。
 

 

 外部スタジオとして計画したのが35本の列柱。

 H鋼は少しずつ隙間を空け、風も通るようになっている。

 その後ろに見えるのが、創業者のご自宅だ。

 大手プレハブメーカーの建物で、そのワンユニットを撤去し新店舗を設計した。

 文字通り、Ohanaとは一心同体だったのである。
 

 「センスの良い知人宅のリビング」と設定したレセプション。

 2階のスタジオも背景の為の背景はやめて、自然光でも撮影できるよう、様々な形態の窓をあけた。

 そしてご家族の、ナチュラルでハッピーな写真を写し続けてきたのである。

 ひとり増え、ふたり増えと、毎年撮影にきてくれるご家族も多い。

 2011年には『第5回キッズデザイン賞』を受賞し、私としても自信を持たせて貰った仕事だった。

 しかし今回、府の道路拡張事業にともない、解体撤去しなければならないことになった。

 新しいOhanaは、現在の店舗のコンセプトを踏襲するも、更なる発展をしなければ意味がない。

 100m程離れた新敷地を初めて見せて貰った時は、私がひとりはしゃいでいた気がする。

 新店舗のコンセプトは「あの森のOhana」だ。

 敷地の回りに空地があり、そこに多くの樹々が植わっている。

 計画の推進力はクライアントの情熱だが、その方向性を決定するのは、動機と環境だと考えている。 

 この環境を、生かし切りたいと考えたのだ。

 1階のレセプションは、一回り大きくなった。

 2階のスタジオも、石井さんが最高の仕事をできるよう、理想的な大きさを綿密に確保した。



 「あの森」は木が生い茂っているという意味だけではない。

 誰の心の中にもある、何かワクワクするような場所……

 第二幕の開演である。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐10‐パジャマのままで朝日を浴びて

 「おいでよhouse」は引越しから2週間が経ちました。

  新しい日常の風景を、奥さんが送ってくれました。

 こちらのお家は、延べ面積が丁度100㎡なので30坪。

 大阪市内で拘って家を建てるなら、ひとつの基準になる大きさと言えます。

 LDKの天井高は約4m。ハシゴでロフトとつながります。

 約25坪の敷地を、いかに立体的に使うかを考えました。

 長男君はこの場所でパジャマのまま朝日を浴びるのがお気に入りだそうです。

 次男君はロフトでテレビを見るのがお気に入りと。

 この場所をお父さんが狙っているという話もありますが……

 そんな寸劇も含めて、どんどん楽しいお家になって行くはずです。

 クライアントはご夫妻ですが、すでに成熟した大人です。

 反対に、お子さんはここで暮らし、成長して行く過程にあり、責任としては大きなものがあると思っています。

 話をした回数は限られていても、創り手の意思を敏感に感じとってくれることが多いのです。

 長男君が気に入ってくれた東向きのハイサイドは、減額で無くなる可能性もありました。

 私としてはここは何と死守したいと思っていたのですが、頑張った甲斐がありました(笑) 

 撮影は梅雨明け頃の予定。6月に入ったばかりですが、すでに7月が待ち遠しいのです。

文責:守谷 昌紀

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