カテゴリー別アーカイブ: C31 「四丁目の家」

「四丁目の家」-23-1年点検

 土曜日は朝一番の新幹線で東京へ。

 昼から茨城で打合せがあったので、午前中に「四丁目の家」へ寄って来ました。

 1年点検の日程を、この日に合わせて貰ったのです。

 竣工写真を撮った日は曇りでした。出来れば快晴の下、撮りなおしたいものです。「晴れた日に、思いっきり洗濯物を干したい」というのが、奥さんの希望でした。

 予想通り、いやそれ以上の干しっぷりです。

 是正箇所は、主に木製建具の調整と、壁に出来たヘアークラックの補修です。概ね問題なさそうです。

 家の中は、撮影に来た昨年6月より、更に良い感じになっていました。すぐに雑誌の撮影があってもOKのレベル。

 家への愛情が伝わってくるよう。奥さんはキッチンに立ったこの景色が「とっても落ち着く」と言ってくれました。 

 黒板には47都道府県が。

 階段に貼りめぐらせたコルクボードも、十分活用されていました。

 特に、リビングの横にある子供部屋を、3姉妹が上手に使っていました。

 建具で3部屋に区切っているのですが、以前より整理整頓ができ、なかなか楽しそうな感じ。8ヵ月振りでしたが、子供の成長は早いものです。

 1階の親世帯も見て回ったところで、時間になりました。

 この家の特徴は、何と言ってもバルコニーの形状です。

 やはり晴れた日にもう一度撮りたいと思いながら、茨城へ向かったのです。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-22-赤坂→写真撮影

 前日は赤坂のホテルに泊まり、6月6日(水)は朝から「四丁目の家」へ移動。

 赤坂プリンスホテルが解体される事を、地元のレストラン経営者は非常に憂いていました。営業していないだけでも堪えるのに、工事が始まれば客足は更に遠のく。

 一旦遠のいた足は、簡単には戻ってこない。何とか今の建物を活かす方法はないのでしょうか、と。

 1984年開業の、40階建てのホテルが30年足らずで解体されること自体、大きな社会問題です。更に、地域に与える影響が大きいことも実感しました。

 計画は変わらないのでしょうが、事業体はこの声に耳を傾ける必要があるはずです。

 話を元に戻して、現地までは地下鉄で20分程。まずは内部から撮っていきます。

 2階は若夫婦世帯の住空間。

 キッチンに立つと、間口11.5mが見渡せます。

 東からキッチン、ダイニング、リビング、階段、一番西側に書斎という配置。

 一番奥の書斎は、ご主人たっての希望でした。

 リビングにはソファを置かず、直接床に座って使っているそうです。

 と言うのも、この日は平日で夫妻は共に仕事。1階の親世帯のご夫妻が、立ち会ってくれたのです。

 2階の住人が居ない中、撮影を許容して貰い、本当に有難いと思うのです。

 居間の北隣には子供部屋と寝室が並びます。

 ラグの若草色がとても良い感じです。

 この家の特徴は、何と言ってもウンテイと大きなバルコニー。

 今は吊り下げイスが下がっていますが、縄梯子もありました。

 遊び道具であり、運動器具でもあるのです。

 塀の間にあるのはゴーヤだそうです。

 夏には青々としたツルが2階へ向かって伸びているでしょうか。

 この日の天気は生憎の雨模様。この家は白が基調なので、何とか青空を背景に撮りたいところです。

 もう一度、ここに来る理由が出来ました。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-21-エピローグ

 3月4日の日曜日。年末以来、2ヶ月半振りに現地へ行ってきました。

 今回の目的は1ヵ月点検。初期不良がないか聞いて回ります。担当スタッフも同行したのですが、彼女にとって現地は2回目です。

 2006年の10月。この計画がスタートして実に5年5カ月。ようやく一区切りを迎えました。

 1ヵ月点検の後は、外観撮影を行いました。

 あいにくの曇天ですが、次回はいつになるか分からないので、アングルを変えて撮って行きます。

 南面する大きく長いバルコニーは、奥さんの希望をかなえたもの。

 この日も撮影前まで、目一杯布団が干されていました。 

 何故かこの時期、あたりは建築ラッシュ。

 横や裏に住宅が10件程建つようです。

 家の中で「体を動かして遊べるような仕掛けを」ということで生れたのがウンテイです。

 天井が低くなっている子供部屋からスタートできます。

 リビングにはイスが吊り下げてありました。

 クルクルと回したり、楽しいはずです。

 後ろの階段は、全面コルクシート貼り。

 習字や地図等が画鋲でとめてあります。

 バルコニーまでウンテイは続いています。

 そこには輪のついたロープが。

 これもイケア製でしょうか。聞くのを忘れてしまいました。

 現在は、引越しして2ヵ月程。

 片付け中につき、内部撮影は別の機会にします。

 帰り際、子供たちは見えなくなるまで手を振ってくれました。

 お父さんお母さん、そして私達が注いだ情熱は、いつか必ず伝わると思っています。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-20-洗濯物

 奥さんが写真を送ってくれました。

 1ヵ月点検に行く前に、現場日記をUPしたいので、写真を送って貰えれば……とお願いしていたのです。

 おはようございます。

 家の写真ですが、パソコンからなかなか送れないので携帯で送ってみます。
 
 どんな感じの写真がよいのでしょうか?

 これは布団や洗濯物をたっぷりほして気持ちのいい朝のものです。

 この写真は、設計者や写真家は絶対に撮らない、この家のことを最もよく表しているカットです。

 「ひろーいバルコニーで、思いっきり洗濯物を干したい!」

 これが奥さんの要望でした。それを実現するよう、バルコニーの形状を決めました。

 バルコニーをデザインするのは、案外難しいのですが、それなら思いっきり大きくしてしまえ。加えて、ちょっとくらい屋根の無いところもあったほうがいいかな、というコンセプト。

 暮らしや、行動をデザインするのが私達の仕事です。

 今週の日曜日は、1ヵ月点検。久しぶりに現地へ行きます。 
  
文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-19-ほぼ完成

 昨年の12月17日(土)、検査に行った際、まだ終わっていなかったのが外構工事。

 「外構」とは建物外側の工事の事で、一般的には外部の塀、門扉、植栽などを指します。この工事は、建築工事と完全に区別されることも多く、請け負わないハウスメーカーもあります。

 しかし建物の外側なので、必然的に一番目に入るところになります。また、金額が読みにくいところもあり、設計の難易度が高い箇所とも言えるのです。

 「四丁目の家」は南面しているので、塀はルーバー状にしました。

 一続きに見える塀の2ヵ所に、門扉を設けています。

 現在中央部は開かれていますが、将来は閉じることも視野に入れています。

 その際も親世帯、子世帯のそれぞれが気兼ねなく出入りできるよう、と言うのが設計意図です。

 表札、ポスト、インターホンなどは主となる扉の横に取り付けました。

 表札がまだ付いていないので、少しの間仮設で我慢して貰います。

 扉にもルーバー状の横板が張られ、レバーハンドル部だけが、フラットになっています。

 どんな時でもそうですが、大変な所、難しいところとが、成果の分岐点になるもの。

 監督、職人とも積極的に取組んでくれた結果がここにあると感じます。

 すぐに東京へ行けないのがもどかしいですが、1ヵ月点検が楽しみになりました。この日程も、3月初めに決まりました。

 2008年1月にスタートしたこの計画も、そろそろプロローグを書く準備をしなければと思っています。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-18-施主検査

 先週の土曜日は、「四丁目の家」の検査でした。

 午前中は私達、設計検査、昼からは施主検査。

 残念ながら外部の塀などは、少し残ってしまいました。

 しかし、快晴の空に穴あきバルコニーは気持ちよさそうに見えます。

 キッチンから、リビング・ダイニングを見返すと、黒板とウンテイが見えます。

 黒板の暗緑色が床のウォルナットによく映え、この空間の印象を決定付けます。

 思った以上に良かったのが、コルクタイルを貼った階段室。

 家族の写真をいくらでも止められるよう、全面貼りにしました。

 見ているだけで、素材の柔らかさ感が伝わってくるから不思議です。

 階段の1段目は、玄関の段差と合わせて、ベンチのような扱いにしました。
 
 1階は親世帯ですが、早速使って貰い、ともて座り易いとお墨付きが出ました。

 1階和室は、居間兼寝室。

 南の大開口からの光を、障子が和らげています。

 2階に戻って、階段を上がり左奥にあるのがご主人の書斎。
 
 計画中は「こもり部屋」と揶揄されていましたが、良い感じで繋がっています。

 ここから一番奥のキッチンまで、目線が抜けているのです。

 そして子供部屋からバルコニーまで続くウンテイ。

 この計画のシンボルでもありました。

 奥さんの要望は、気持ちよく洗濯物が干せるバルコニー。

 一番奥には、ユーティリティーシンクもあります。

 リビングには勉強カウンターがあります。

 ドアの前にありますが、この部分は取外し可能。

 出来るだけ姉妹が、長く一緒に勉強できるよう考えました。

 いつも元気に、私を迎えてくれた元気な三姉妹。「まるも」のダンスを踊ってくれた時もありました。

 この日も思い切り嬉しさを爆発させ、あちこちと走り回っていました。創り手としては本当に嬉しく、設計者冥利につきます。

 それもこの日で最後、になる予定でしたが、1ヶ月点検にも伺う事になりました。ご家族には、迷惑を掛けますが、もう少しお付き合い頂きます。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-17-ファサード

 一昨日、監督より写真を送って貰いました。

 外壁工事が終わり、足場が取れたと報告があったからです。建築用語で、外観の正面をファサードと言うのです。

 外壁は目地の無い、フラットな仕上げにしました。

 屋根が大きく張り出しているのは、思う存分洗濯物を干いたいという要望から。

 奥に開いている穴は、ここでテントを張れば星が見えるようにという設計意図です。

 屋根は南に向かって登っており、2階の天井は高いところで3.2mあります。

 屋根形状こそがこの建物を物語っているのです。

 この計画、第1回目の現場日記は2010年11月27日でした。

 3月の大震災もあり、工事は大きく遅れました。しかし、それも良い思い出と言えるかは、最後の仕上がり次第です。

 計画がスタートした当初、ご主人は大阪に単身赴任でした。途中からご主人も東京へ転勤すると、よりメール、電話でのやり取りが多くなります。

 昨年の「Epic Games Japan」に引き続き、私達はどこに居ても仕事ができる、という大きな経験になりました。

 しかし返す返すも最後が肝心です。

 残すは外構だけになりました。来週末は現地へ最終の検査へ行く予定です。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-16-黒板

 先月の終わりに現場へ行ってから、なかなか東京に行けていません。

 次回は最終検査の時になりそうです。12月の中旬頃でしょうか。

 2階は若夫婦世帯が暮らすエリアです。

 リビングの壁には黒板があります。壁に黒板塗料を塗った、小さいですが本物の黒板です。

 黒板は意外にリクエストが多いのです。
 
 学校に対して、良い印象がある人も、そうでない人も、やはり空間へ対する原体験となっているのは間違いありません。

 特に、小学校の6年間というのは、その長さ以上に、人の成長に大きな影響を与えていると感じます。

 例えば、教室の床にワックッス掛けをして事を懐かしそうに話す人は本当に多いです。

 その時、皆で作業した雰囲気やその匂いまで克明に覚えていたりするものです。

 また、そこにあった無機質とも言える時計が、結構好きだったとか、妙な机を買うくらいなら、教室の机の方が好きだ、と言ったクライアントも居ました。

 ノスタルジックな気分も合わせてでしょうが、機能、価格を追求した物は、意外と良い物が多いのです。

 黒板はその中でも、象徴的なものと言えるでしょう。

 ホワイトボードでも機能は同じですが、あの黒緑色の板に、白いチョークで書きたいという欲求は、よく分かる気がします。
 
 何度でも消せるというのが、最大の魅力というのも間違いありません。

 2階のキッチンがようやく据え付けられました。

 このエリアはモノトーンの感じでまとめています。

 ウンテイの塗装も済んでいます。

 虹の配色が、モノトーンの空間に遊びを加えます。

 このウンテイはバルコニーまで続きます。

 流石に先端部まで行くと危険なので、途中で止めていますが、それでもかなりの高さです。

 機能として続いているといるのですが、外と内を繋げたいという意思表示でもあります。

 洗練された空間に、遊び心を取り入れ、都心でも光、風、雨を感じれる家。

 そんな感じをイメージでして考えました。 

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-15-子供部屋の平等

 10月30日(日)は1ヶ月振りの現場打合せに。

 東京行きの日は、何故か雨が多かった気がします。この日の朝も、大阪は雨。しかし東京に着くと晴れ空でした。

 しかし天気は西から。昼頃からはポツポツと降ってきました。

 外壁下地が出来ている予定でしたが、それは間に合わず。

 やや残念です。

 内部には建具枠が搬入されていました。

 枠など普段気にする事はないと思いますが、建物にとってはとても重要な部分です。

 動かない壁と、動く扉の境目にあると言えば、その重要性が伝わるかもしれません。

 どのような寸法で納められているかで、機能、美しさも、大きく変わるのです。

 特に重要視しているのが、引戸のレール。

 可動域が空間の邪魔をしない事と、微妙な位置でキープできるのが引戸の一番の長所でしょう。

 また、段差2mm以内のバリアフリーを目指し、M型のレールが床に埋め込まれます。

 これがステンレス製というのが大事です。随分キズが付きにくいのです。

 監督から、大工の棟梁が「苦労して取り付けたウンテイも、ボードを貼ってしまえば、何か当たり前に見えるのが残念」と言っていたと聞きました。

 気持ちは解ります。

 しかし、見せたいのをぐっと我慢し、目的に向って、真っ直ぐに進むのが本当のプロ。

 100kg近い大人が、ぶら下がっても良いように下地はスチールのプレートと一体になっています。

 登梁に直交するよう角材を取り付け、このウンテイ1つ1つを固定して行きます。

 よって、1つずつが専用の梁に付いているとようなもの。はやり気持ちは解ります。

 「子供部屋は出来る限り平等に」という要望は、思いのほか多くあるものです。

 この計画でも、すでに部屋の取り合いになっているとかいないとか。

 いつも元気な三姉妹も、この日は一人だけでした。

 お姉ちゃん2人は、いとこと東京タワーに行ったそうです。

 更に彼女も途中でお祖父ちゃんの家へ。

 お父さんお母さん、お祖父ちゃんお祖母ちゃんは、打合せに集中できて良いのですが、私は少し寂しい気も……

 今考えると、何時間にもわたる打合せに、三姉妹だから我慢できたのかもしれせん。時には、取っ組み合いの喧嘩もしていましたが。

 彼女たちとも間もなくお別れです。建ってからも本当の付き合が始まるとも言えますが、物理的に会う機会が減るのは間違いありません。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-14-虹色ウンテイ

 本当に暑かった今年の夏も終わり。気持ちの良い季節になって来ました。

 「暑さ寒さも彼岸まで」「天高く馬肥ゆる秋」見上げれば、今日も空の高い秋晴れです。

 25日(日)、26日(月)は、東京へ現場監理に行っていました。

 現在は、外壁仕上げ、内部仕上げを待つ状態です。 

 内部にはウンテイが出来上がっていました。

 「家で皆が遊べるように」と「健康のため」の目的で計画されたもの。

 2階の若夫婦世帯のみで、1階の親世帯にはありません。

 しかし1階のご主人も、背中を伸ばすのに良いかも、と言っていたのです。

 子供というのは、思ったままの感情を爆発させてくれます。

 つまらないものはつまらない、楽しいものは楽しい。

 創り手としては真剣勝負です。

 皆が順番に、チャレンジしてくれました。

 これだけ喜んでくれると、本当に考えた甲斐があります。

 色は原色で、のリクエストから虹の配色にすることにしました。

 子供部屋のロフト上からバルコニーまで続く虹色ウンテイです。

 若夫婦のご主人は、学生時代は体育会。

 それが元で出てきたアイデアですが、これは確かに楽しいし、体の為に良いし。

 あといくつか、家の中が楽しくなる仕掛けを考えていますが、次回には付いているかもしれません。

 次回は10月中旬に現地へ行く予定です。

文責:守谷 昌紀

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