カテゴリー別アーカイブ: C35 「8.8坪の家」

「8.8坪の家」-14-逞しくも1年点検

 2012年の年末、バタバタと引っ越しをお願いしたのが、随分前のような気がします。

 あっという間に1年が経った「8.8坪の家」。

 こちらの家は、夫妻と4匹の猫が暮らします。引っ越し時は2匹だったのが、子を産み4匹になっていました。

 子猫は警戒心が少なく、人懐っこいのです。

 猫と暮らす家は、爪とぎの話が良くでます。こちらの家では全く無かったそうです。

 しかし、3階の手すりの角には体を擦りつけるよう。若干塗装が落ちていますが、これも暮らしの手あとです。

 幅3m、12坪の敷地に、駐車場のある幅2.7mの家を設計しました。

 かなりのローコストゆえ内部扉がなく、夏の暑さと、冬の寒さは多少こたえるもの、とても楽しく暮らしているとのこと。

 「友達に写真を見せたら、びっくりするんですよ」とは奥さんの弁です。

 テレビ番組のオファーもあったのですが、ご主人が「自分が映らなければ、何でも協力しますよ」と。「取材に来た日に、出張だといって消えてしまいましょうか」とも。

 そこまで無理強いはできないので、勿論断ることになったのです。

 3階の浴槽前には緑も置かれ、なかなかの解放感です。

 一緒に家を建てたので、他人事ではありませんが、人は逞しいものだと思います。
 
 この逞しく、小さく、豊かな家を、できれば世間へ問うて見たかった、というのが偽らざる本音です。
 しかしまだ諦めてはいません。

 まだ家具も検討中とのことで、雑誌なら大丈夫ですかと、ご主人に問う私。逞しい人と仕事をし、私たちも少逞しくなって行くのです。

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-13-駐車場、間口が2.7mの場合

 年末に竣工した「8.8坪の家」ですが、あっと言う間に1ヵ月点検です。

 流石に2月はあっと言う間に過ぎて行きます。

 延べ面積が19坪なので、まだ家の中は整理の真っ最中。今回、写真は控えることにしました。

 カーテン類も色々と工夫し、暮らしのスタイルが出来上がって行く途中でもあります。

 ネコ達も引っ越しすぐはストレスが溜まっていたようです。普段はトイレで出来るのが、つい床の上でしてしまったり。

 しかし、ようやく落ち着いたとの事でした。

 この建物の特徴は、なんと言っても環境にあります。

 広角レンズで撮っているので、解りづらいのですが、道路が狭く、住宅の密集度はなかなかのもの。何より間口の狭さです。

 建物の間口は2.7mしか取れませんでした。

 もし横から車を入れると、道にはみ出してしまうのです。よって短辺方向に、出入口をとる必要があったのですが、これに苦労しました。

 建物にはバランス良い耐力壁が必要です。この時点で木造がアウト。鉄筋コンクリート壁式構造にして、耐力壁を限界まで短くしました。

 かつ斜めにすることで、ようやく2.2mの有効巾を確保したのです。

 この部分は、色々な意味で遊びがなかったので、クリアできて本当に良かった、というのが本音です。

 そのギリギリさ加減が、この舳先に表れているのです。 

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-12-竣工はネコと共に

 暮れも迫った、昨年の12月29日(土)。
 
 引っ越しの前日に、バタバタと竣工写真を撮ってきました。

 竣工写真は、実際の暮らしが始まってからを基本としています。住んでからの方が、暮らしをイメージ出来る写真が撮れるからです。

 しかしタイミングさえ合えば、空っぽの写真も撮っておきます。

 翌30日(日)から新たな生活が始まりました。

 1月中頃、少し工事があるというので寄っ来ました。ネコは3階の日の当たる場所を、いつも陣取っているとの事。

 この3階寝室はロフトのような空間です。

 しかし、唯一南向きの開口が取れる環境なのです。

 同じく3階の浴室上には、本当のロフトがあります。ネコはこんなところが好きだろうと、設計したもの。

 愛猫家、愛犬家の人達は、下手をすれば「自分達は良いから」くらいの話になる事もしばしばあります。

 2階はLDKの1室空間。8.7坪と言っても、1室空間にしてしまえば17畳ほどになります。

 縦長の形状もあり、狭いと言う印象は受けません。

 階段を下りると玄関。階段は、光と風を通す素材で作りました。

 緑の扉の中にあるのはトイレです。
 

 玄関は建物側面、北側に開いています。

 どうしても駐車場が欲しいという要望がありました。構造上、短辺方向にも壁を設ける必要があり、入口を確保するのに、随分苦労しました。

 構造壁を、大きく斜めにすることで何とか確保。その結果、船のような造形になりました。
 

 後ろにいるのはオスのアビシニアン。耳がピンと立っていて、なかなか凛々しい顔をしています。
 
 事務所ので打合せの際、彼らはいつも車の中で待ってくれていました。ようやく完成に至り、彼らにも長らくお待たせしました、というところです。 

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-11-ペンキ塗り

 年末引渡しに向け、現場は慌ただしくなってきました。

 足場も外れ、ようやく建物全体が見てとれます。

 終盤の現場は、いろいろな業種が入り乱れます。

 階段がついたと聞き、見にきました。

 光を階下に落とす為、段板はエキスパンドメタルです。スプレーで塗装しているところでした。

 玄関扉を塗るは、塗装職人の親方です。階段に居たのが息子さん。

 塗装工事はいつも終盤になり、余裕がない事がほとんど。それでも、にこやかに仕事をしている姿しか見たことがありません。

 信頼のおけるプロだなと、思っています。

 商売道具の刷毛は、シンナーとエンジンオイルをブレンドした溶液に浸けておくそうです。

 これが一番、と言っていました。既成品が増える中、塗装なら無限の選択肢から選べます。ペンキ塗りが多ければ多いほど嬉しいのです。

 壁紙も概ね貼り終りました。3階の寝室はほぼ完成形です。

 12月28日(金)が完了検査、29日(土)が引越しの予定。

 まだ気は抜けませんが、ようやくゴールが見えてきました。

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-10-何が何でも大理石

 敷地12.5坪、1フロア8.3坪、延べ面積18.7坪、加えて予算も過去最低。

 条件が厳しい、とばかり書いてきました。しかし床は違います。

 2階LDKは、総大理石貼りなのです。その他の部屋も、床は全てタイル。 

 クライアントが、この家を計画する際、初めに相談へ行ったのが、旧知のタイル屋の親方でした。

 私が計画に参加したのは、解体後からでした。

 よって、解体の際にも、随分お世話になったそうです。

 そんなこともあり、当初から石、タイル工事は、こちらにお願いする事になっていたのです。

 旧知の仲だから、タイル工事は破格値。しかし、タイル屋の親方がクライアントへ出した条件がなかなかです。

 「毎日現場に来い」でした。この日も、クライアントと職人の対話の中、タイル工事が進んで行きます。

 当事務所もタイルの施工図を描いています。しかしクライントは、更に自身でスケッチを描いてくれます。

 親方的には「ウチで用意出来ないものは、自分で枚数揃えて買ってこい」ということで、正確に枚数を読むにはこのスケッチが必要なのです。

 これらは全て、一切誇張なしです。

 気がつけば12月も残すところ10日。更に言えば、クライアントの引っ越しは年内で、すでに仮住まいは解約済。

 文字通りの追い込みに入っています。

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-9-何が何でもバルコニー

 12月9日は、午前中から現場で打合せでした。

 外壁下地も出来上がり、建物のフォルムが見てとれるようになりました。

 建物短辺方向は2.6m。

 建物内に駐車場をとるなら、入口幅を稼ぐ為、斜めにカットする必要がありました。

 それで船の舳先が生まれたのです。 

 この日は、床材や塗装色を決定する予定。

 色決めは、室内環境に左右されやすいのです。

 例えば、建築中の現場は下地の石膏ボードがむき出しです。

 石膏ボードの表面は薄い黄土色で、室内で見ると、どうしても黄色が足される感じになります。

 よって、外光で見た方が確実なのです。

 2階の舳先部は小さなバルコニーになっています。

 外光を求めて、クライアント、スタッフ、合せて3名がその三角スペースに。 

 このバルコニーは1畳弱です。

 1フロア8.3坪しかないこの家だからこそ、このバルコニーが活きてくると考えます。

 特にキッチン横の外部空間は何かと役に立つものです。

 狭小住宅を解決するもう一つの方法が、スキップフロア。

 階段を分割することによって、それぞれの階が近付き、広がり感を与えます。

 さらにそれらを繋ぐ小さな吹抜け。建具や仕切りはほぼ無しです。

 デメリットを上げるとすれば、冷暖房の効率でしょうか。

 しかしそこは床面積18.7坪という小ささが、メリットになりえますす。

 

 3階は、法規制によって、屋根を斜めにカットしています。

 それも利用し、比較的大きなバルコニーを取りました。

 壁で囲うと立てませんが、外部なら気持ち良い眺めさえ楽しめます。

 外部をどこまで内部に近づけれるか。密集地では常に重要なテーマです。

 バルコニーは物干しの為にある、おまけの空間では無いのです。

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-8-施主支給

 前回は未定だった3階浴室の窓。

 この現場日記にも「追加OK」の返事を貰いました。

 打合せに現場へ行くと、すでに取付け済み。

 その下には、浴室用テレビがあります。位置はクライアントに見て貰いながら決めました。

 モノは支給で、取付のみ施工会社に。これを「施主支給」と言います。

 他にもいくつかあるのですが、浴室のバスタブ用水栓も施主支給なのです。

 浴室は3階にあるので、ユニットバスとしました。

 ユニットバスは金額面、漏水面を考えると、メリットがあります。

 しかし、選択肢はメーカーが決めた物のみ。

 そんな中、このゴージャスな水栓がクライアントからの支給品です。

 英語の簡単な説明書しか入っておらず、今後の事を考えると「ちょっと難しいのでは」というのが工事担当者の感想。

 気持ちはよく分かります。皆で色々話しあい、一つの可能性を見つけました。

 さて、無事に付くのかどうか。 

 狭小地の為、浴室の上の隙間も物入れにしました。

 浴室、洗面のある3階から、階段を2段上がると寝室があります。

 この家の最上部にあたり、最も天井高のとれない場所です。

 しかし寝室は寝る為のもの。十分だと判断しました。

 1フロア8.3坪、延べ面積18.7坪。

 私の経験の中では、過去最小の住宅。

 極小住宅の挑戦は続きます。 
 
文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-7-浴室に窓をもう1つ

 今日は11月23日(祝・金)で勤労感謝の日。

 しかし生憎の雨模様です。

 スイッチ等の位置決めが終わりました。

 一昨日、クライアントが急遽来ると分かったので、現場へ向いました。

 丁度、屋根工事の最中でした。勾配が45度あるので、足場もかなり強引に組まれています。

 壁面から屋根なりに張り出しているのが分るでしょうか。

 1フロアは約9坪で約18畳。

 よって2階はリビング、中2階はキッチンのみです。

 それらの広さを確保する為、浴室と洗面は中3階にあります。

 この限られた空間の中で、出来る限り外部へ開いた浴室となるようプランしてあります。

 バルコニーへ向かって出入り出来るドアは通気窓も兼ねるタイプ。

 密集した住宅街であることを、忘れさせると言えば、自画自賛が過ぎるでしょうか。

 部屋内の短辺方向は2.6m。

 大人が4人いるとなかなかの密度です。

 しかしそれはそれで、賑やかな感じ。

 そんな事を思っていると、クライアンから「浴室に何とか窓を追加出来ないですか」という質問。

 折角の3階なので、もっと空を見たいということなのです。

 監督に、工事担当者に聞いて貰いました。技術的には可能との返事。あとは法規的な課題と金額面の課題です。

 事務所に戻って、審査機関に確認すると、大きさと個数に制限はあれど、追加は可能との結果が出ました。

 早速、施工会社に見積りを依頼したのです。

 その質問があった時、法規的に難しいのではと感じていました。

 しかし結果は実現可能。

 はっきり言えば、私達を育ててくれるのは、クライアントの無理難題。

 この日も、急遽現場へ行って良かったと思ったのです。

 さて、窓は増えるのかどうか。

文責:守谷 昌紀

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「8.8坪の家」-6-建方

 11月6日(火)は早朝の雨も上がり、いよいよ建方。

 15時過ぎに現場に着くと、ほぼ形が出来上がっていました。

 残りの木材も各階に上げていきます。

 船の舳先も立体的になってきました。

 次は屋根と外壁に金属板を張る工事です。

 クレーン車が回転しようとすると、少し出っ張っていた仮支えに引っかかりました。

 木材をカットし、無事撤収です。

 梁は、場所によって形が違います。

 工場で加工出来ない部分は、現場加工です。

 屋根は45度に近い勾配。

 建築基準法上、斜線制限目一杯の為、複雑な形になりました。

 細かな部分は、今でも職人の仕事に頼ります。

文責:田辺 幸香

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「8.8坪の家」-5-1階打上り

 建方の前日、1階部分の仕上がりを見に行って来ました。

 角地に建つ場合、隅切りがあります。

 道の行き来をスムーズにするため、交差点の角部分には家を建てられないのです。

 丁度コーンが並んでいるあたり。

 この部分に駐車場入口を持って来ました。

 巾3m以下のこの土地に、車を入れるならここしかないのです。

 見返すとこんな感じ。

 1階には、駐車場の反対に1部屋あるだけ。

 4畳くらいの打ち放しの部屋はなかなか迫力があります。

 2階、3階はスキップフロアになっています。

 その土台敷きが進んでいるところでした。

 「写真、入って貰っていいですか」と大工2人に声を掛けました。

 「モデル代貰えるんやったら」と言うので、フレーム外へ出て貰いました。

 冗談はさておき、船の舳先がいよいよ現実の形になってきました。

文責:守谷 昌紀

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