カテゴリー別アーカイブ: C50 「White Eaves」

「White Eaves」‐7‐目指せ一番

 リオ・オリンピック、夏の甲子園も始まりました。

 2016年の夏も、暑さがピークを迎えています。

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 工期が遅れていたこちらの住宅ですが、ようやく完了検査を実施しました。

 引越し後も工事の手が入り迷惑を掛けていましたが、何とかここまでたどりつきました。

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 外観と同じように、内部空間も白を基調とした、ミニマル(最小限)な表現となっています。

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 アイランドのキッチンと合わせて、ブラックのペンダントライト。こちらはクライントのセレクト。

 奥のテレビスペースも、黒い壁面に埋め込まれています。

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 ウォークインクローゼット内まで、美しさを追求しました。

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 お風呂は置き型のバスタブを採用。

 奥さんが「2時間くらいは入っています」と、大変喜んでくれました。

 ご夫妻と綿密に打ち合わせをして作り上げてきたのです。

 また、「暮らしてみて、守谷さんの設計意図がよくわかりました」とも。

 何故ガラスのスクリーンがあるのか、奥まった中庭があるのか。

 そんなことまで感じ、考えて貰えたら、設計者冥利に尽きますし、私達も幸せな気持ちになれるのです。

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 2016年の夏は、アスリートの為だけにあるのではありません。

 金メダルを目指し、また日本一を目指し、奮闘しているアスリートがいるなら、私達も仕事の上で、一番を目指さなければなりません。

 勇気をもって指名してくれたクライアントに対して、一番を全力で目指すことは、義務以外の何物でもないのです。

文責:守谷 昌紀

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「White eaves」‐6‐引越し前々々夜

 5月末から、さらに1ヵ月半が経ち、足場が外れました。

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 こちらの住宅は、何と言っても、車の動線を足掛かりにしたファサードのデザインが特徴です。

 ガラススクリーンも入り、よりフォルムが明確になりました。

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 スクリーンの後ろにはサブバルコニーがあります。

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 2階は、若いご夫妻の世帯。

 玄関と生活空間を繋ぐ階段は、キャンティレバーで持ち出しています。

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 キッチンはメインバルコニーに対面します。

 南にある、中庭型のバルコニーから、柔らい光が差し込んでくるのです。

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 バスルームは、タイル貼り。

 濃い色でトーンで抑えめな表現です。

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 タイルは焼き物ですが、まるでカッターで切るような、鮮やかな職人の技。

 現場で、こういった光景を見ると惚れ惚れします。もっと、匠の技に敬意を払うべきだと思うのです。

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 1階の親世帯は、完成が見えてきました。

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 外構工事をする左官職人が、ファン付きのジャンパーを着ていました。

 「涼しいの」と聞くと「ええ。社長が皆に支給してくれたんです」と。

 暑い中、現場で働く社員が居てくれてこそ。社長の愛情を感じました。

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 引越しの3日前に行ったのですが、かなりごった返してしました。

 無事引越しが済みますよう。ここまで来たら祈るしか出来ないのが設計者なのです。

文責:守谷 昌紀

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「White Eaves」‐5‐タイルを決めるのは本当に難しい

 前回のUPが3月15日。

 上棟から、あっと言う間に2ヶ月半が経ちました。

 その間の現場打合せは5回。さぼっていたというよりは、現場日記が追いついていないのが現状です。

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 前面道路は一方通行で、それがデザインにも影響を与えています。

 また、工事請負契約が成立した段階で、熱源はプロパンガスとしていました。

 ところが工事が始まってすぐガス管が敷設されることが分かり、都市ガスへと変更。これはランニングコストに大きなメリットがあります。

 その敷設工事も終わり、新品の前面道路になりました。これはかなりついています。

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 日の光も強くなり、クチバシ状のファサードは何とも言えない表情を見せてくれます。

 シートが外れる日がとても楽しみ。

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 道路が北側で、各部屋は裏の南を向いています。

 一階の親世帯は、南の庭から光が差しこんでくるのです。

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 この2ヶ月半の間、下のお子さんが何回か遊びに来てくれました。

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 彼の部屋は、希望通り薄い青がテーマカラーに。

 本人が居れば即決即断です。

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 一番の課題はタイルでした。

 2階世帯は、寝室等の個室を除き全てタイル。現場で見て貰ったサンプルはおよそ20種類。

 中でも、メインのLDKは難航に難航を極めました。どのくらい難航したか。数枚貼ってから変更になったのです。

 フローリングは木なので、人の意思が入り込む余地がありません。しかし、タイルは人が作るもので、無限の選択肢があります。

 質感、色味、コストをよりどころに絞って行くのですが、もっとも大事なのは「響くか」です。

 本当に、あちこちへ行きましたが、最後は一番初めに選んだものに戻りました。初めに「響いた」ものです。
 
 ここに戻った理由には、コストの件も絡んでいます。

 このタイル、値段が高すぎるので一旦ボツになりました。しかし、色々なメーカーを当たるうちに、全く同じものが、半値で買えることが分かったのです。

 楽ではないですが、面倒だとは思っていません。それら全てがストーリーとなり、愛着に繋がるからです。

 もっと言えば、このくらいのトラブルがあった方が、家創りは面白いのです。

 勿論、理解あるクライアント、ついてきてくれる施工会社があってこそなのですが。

文責:守谷 昌紀

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「White Eaves」‐4‐働く夫妻の上棟式

 3月12日、上棟式を迎えました。

 大安、かつ快晴の下、絶好の式典日和でした。

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 建方から1ヵ月経ちましたが、共働きの夫妻が揃うタイミングはなかなかありません。

 よって、快晴の有り難さもひとしおです。

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 白い防水シートがまだ貼られていない、くちばし状の庇が見てとれるでしょうか。

 その間には、ガラスが入ります。

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 横から見ると、分かりよいでしょうか。

 寝室と浴室をつなぐサービスバルコニーを、ガラスが覆うのです。

 くちばし状の庇が、斜めの壁に貫入するところが、この建物の印象を決定付けます。

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 車の軌道を確保する為、斜行する壁。

 寝室から見ると良く分かります。

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 寝室の更に南にあるのがLDK。

 門型の開口の前に、祭壇が準備されました。

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 2階に住むご家族の全員が参加予定でしたが、上のお子さんがインフルエンザに罹ってしまい……

 この日から、ようやく小康状態になったとの事で、奥さんも何とか参加してくれました。

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 3人で、四隅を清めて回って貰いました。

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 初めは少し照れる下のお子さん。

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 しかし、監督も同じような年頃の子を持つ親です。

 波長が合いだせばエンジン全開でした。

 当たり前の話ですが、家族の頑張りによって、こだわりの家は実現して行きます。

 その頑張りに応えるのが、私達の仕事。

 マラソンが終わってから、いくら頑張りたいと言っても、頑張る場所はありません。

 今、ここで走るしかないのです。

文責:守谷 昌紀

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「White Eaves」‐3‐現場もやっぱり人となり

 建方が終わりました。

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 この敷地は、比較的正方形に近い矩形です。 

 経済効率から、間口が狭い方が一般的ですが、秀吉が間口に対して課税額を決めたのも、一端と言われています。

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 前面道路の通行量から、車の軌道をデザインの動機としたことは、初回に書きました。

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 シート裏をのぞくと、分かりよいかもしれません。

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 道路は北側にあり、1階の主要な部屋は南の庭に開いています。

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 2階は、中庭のようなバルコニーを、各部屋の中央に配置しました。

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 加えて、北側にもバルコニー。北と南から外部が切れこんでいます。

 正方形に近い平面に、光と風を内部に届ける為に考えたプランなのです。 

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 建方の日は5人程の大工チームでしたが、リーダーはこの2人。

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 副棟梁は36歳。

 「若いね」と言うと「そんなに若い方でも……」と。

 最近の高年齢化が進む現場では、若い方と言ってしまいます。

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 手前が監督で奥が棟梁。棟梁は40歳です。

 監督は「載せるなら横顔にして下さい」と言うのでそうしました。

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 仕事なので、いつも笑ってばかりは居られません。

 ただ、こんな笑顔のある現場が、上手くいかないと想像する方がナンセンスだと思っています。

 笑顔は全人類共通の幸せ。今日も、そんな1日でありますよう。

文責:守谷 昌紀

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「White Eaves」‐2‐地鎮祭

 地鎮祭は快晴のもと。日差しが12月とは思えないほど。

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 今回の工事は、初めて仕事をする施工会社。社長は女性で「素晴らしい天気で、幸先良いスタートですね」と。

 もし雨が降ったら「雨降って地固まる」と言うのですが、こんなところに場数の差が出るのものです。

 流石は歳の効、といえば怒られそうですが。

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 2階には若いご家族で、お子さんは5歳、3歳の姉弟です。

 1階には、ご主人のお母さま世帯がある、2世帯住宅。敷地の間口が大きく、規模の大きな住宅です。

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 地鎮祭での私の仕事は、斎鎌(いみかま)で草を刈り取ること。

 折角なので、気合を入れて挑みます。

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 ご主人のよる鋤入れ。

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 ご家族による、玉串奉奠(たまぐしほうてん)。

 長男君は、ちょっと恥ずかしかったようで、お母さんに手を引かれてでした。

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 最後に、四方へ塩、米をまくのには、興味をもってくれたようです。

 少しでも記憶に残ってくれたなら、嬉しい限りです。

 この日の宮司さん。非常に声が大きく、気持ちの良い式典でした。

 それで、帰り際に「素晴らしい式典でした」と伝えました。

 プロというのは、なかなか評価されにくいものです。良かったことは良かった。そうでなかった場合は触れない。

 実務以外の私のスタンスです。

文責:守谷 昌紀

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「White Eaves」‐1‐プロローグ

 仕事の場は、常に競争です。

 「White eaves」は、ネット上のコンペでした。

 参加した経緯、選んで貰った過程は4月、日記に書きました。

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 しかし、実際に工事請負契約に至ったのは12月7日。

 コンペのスタートから、1年2カ月掛かってしまいました。

 「申し訳ありません」という気持ちと、「とことん付き合います」という気持ちの、両方があります。

 何度も見積り調整を行い、納得して貰えるところまで、ようやくたどりつけました。

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 敷地は北側に道路がありますが、この道は一方通行です。ところが、抜け道になっているようで、結構な交通量があるのです。

 車で仕事から帰ってきた際、まずは仮駐車。そして、後続がないのを確認できたら、ゆっくりと車庫入れ。

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 この、駐車時のタイヤの軌道から、プラン、フォルムを練って行きました。

 デザインという言葉が、機能を犠牲にし、表面上のことを指している場面が、本当に多くあると感じます。

 それらは、本来デザインと呼ぶべきものではありません。デザインとは、良心にうったえかけるもので、必ず、分かち合えると信じるからこそ、意味があるのです。

 デザインを和訳すると意匠となります。匠として、物創りのプロとしての意思。

 その意思は正しかったのか。5月下旬に、問うことになります。

文責:守谷 昌紀

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