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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐11‐思い立ったが吉日だった

 2019年の年始にオファーを貰ったこちらの計画。

 6月末に、施主検査という区切りを迎えました。

 この1年半にお会いした回数は30回。

 半分の15回が、現場での打合せでした。

 リノベーションにおいては特に、現場打合せが仕上がりの差を生むのです。

 エントランス前の階段とスロープは、クライアントの生活動線、これまでの経験、そして美しさとコストを含めて何度も検討しました。

 「とても良い感じ!」と言って貰ったのです。

 この計画の目的であり、テーマは以下の通り。

 ときめく 笑顔でいられる 家にいる時間が大事 ファンキー

 ファンキーを一手に引き受けてくれたのがこの玄関です。

 エントランスからすぐの洋室。

 ピンクの壁が、ピンクの建具に写り、よりピンクに。

 こちらもファンキー?

 引戸を開けると廊下にピンクが漏れ出していますが、ここには小さな隠し扉。

 大工の腕の見せ所です。

 廊下突き当りにある洗面と浴室。

 大きくはないだけに、ミリ単位の精度で既製品を造り付け家具のように納めています。

 ミラーキャビネット下、モザイクタイルに気付いて貰えるでしょうか。

 最奥にある寝室は、ウッドデッキを備え、明るさ、機能とも充実しています。

 目隠しルーバーの上下に、隣地の庭を借景として取りこんでいます。

 ここは洗濯干し場。

 雨天時用のホスクリーンが室内に見えていますが、これは取外しができる優れものです。

 ガラス棚を備えたアクセントクロス。

 遊び心が溢れておるのです。

 2階のフロアキャビネットも予算の関係で、既製品となりました。

 しかし、知恵を絞って母、娘が一緒にお化粧が出来るスペースを何とか捻出しました。

 モザイクタイル中央、鏡がまだだったのが残念でしたが。

 キッチンに立つと東西に流れる風を感じることができます。

 バルコニー側には横長の窓と引戸があり、そこを開けると一気に風が通り抜けるのです。

 この日は天気も良く、御陵の緑が目に鮮やか。

 絶景、一歩手前くらいでしょうか。

 最後に、先日届いたクライアントのメールを一部抜粋してみます。Hさん勝手して済みません。

 もう、現場打ち合わせがないと思うと少しさびしく思います。

 何気にあの色々なお話が楽しかったものですから。夫婦共々そう思っています。

 ただ、もう一度1年半前に戻って、1からリノベーションのことを考えるのは、とてもじゃないけど大変なので、思ったときに行動していて大正解だと振り返って思います。

 思い立ったが吉日。

 私が設計するかは別にしても、オファーという行動がまず大きな決断で、大変な行動力を必要とします。

 その決断をした時点で、成功は確約されていると私は思っています。

 「こんな暮らしをしてみたい!」

 そう思った瞬間に、その夢は実現したに等しいのです。ただ、行動に置き換えるという条件だけは付きますが。

 この日、2階へ上がった瞬間、奥さんが歓声を上げて喜んでくれました。

 「ずっとここ居たい」と言われたので「もう現場じゃないので、奥さんのものですよ」と笑っていたのです。

 さて、この「ときめく紺色の家リノベーション計画」を楽しんで貰えたでしょうか?

 次回は2ヵ月点検で、その次が撮影をイメージしています。私自身も、いまから楽しみにしているのです。


文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【News】
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」‐10‐らしい、の探求

 現場での定例打合せも11回目となりました。

 梅雨の晴れ間で、かろうじて晴れと言う天気でした。

 2階LDKの西面にバルコニーがあります。

 バルコニーの腰壁は、奥さんがぎりぎり家族を見送れる高さというオーダーでした。

 引き違い窓が隠れ、すました表情を演出してくれています。

 引戸の上にある庇は、この時期、特に価値を発揮してくれるでしょう。機能を出来るだけ美しく演出したいものです。

 LDKにキッチンがすわりました。「ミストピンク」というカラーです。

 ピンクと聞いた時、ちょっと主張が強すぎないかなという気持ちもありました。

 クライアントには、心から好きなものに囲まれて暮らして欲しいのですが、踏み外してしまいそうな時は軌道修正するのも私の仕事です。

 計画をスタートしたのが2019年の1月で、キッチンのカラーを決めたのが2020年の1月。

 その1年間、奥さんの好みを色々拝見してきたのでお任せして大丈夫かなと思い、口を挟まないことにしました。

 それで結果はこの通り。とてもこの空間にあっています。

 お子さんの部屋にはピンクのアクセントクロス。

 寝室には柄物のクロスにコーディネイトカウンター。

 壁に服を掛け、カバンや小物を置いて、コーディネイトを楽しむ空間です。

 奥さんが、ペットボトル等を置いてその機能を確認されていました。

 茶目っ気タップリなのです。

 このモザイクタイルも奥さんのセレクトで、職人の手待ちの状態です。

 ここが完成すると、工事もほぼ終わりです。

 屋根裏から出てきた梁に、埋め木をしてある箇所です。

 私は「リノベーションなので、柱が取りついていた穴は残しておいて良い」と現場に指示していました。

 しかし、ベテランの大工が気を聞かせてこんな細工をしてくれたのです。

 25年経った木と同じ色にすることはできないのでそう指示したのですが、夫妻は「これも大工さんの気持ちですものね」と言ってくれました。

 「らしい」空間をつくることに腐心してきました。

 押し付ける訳でなく、誘導する訳でなく、かといって任せっきりにするのでなく。

 この舵をとる面白さが、リノベーションの醍醐味なのです。

 そのご家族らしい空間が創造できれば、計画は成功と言えます。全てのベースにあるのは信じる事と受け入れる事だと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
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■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
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■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
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「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」景色というびっくり玉手箱‐9‐

 5月も残すところ2日になりました。

 他府県への移動解禁が先か、梅雨入りが先か気をもんでいましたが何とか間に合ったようです。

 できれば来週末まで待って貰えると嬉しいのですが。

 昨日は雲一つない快晴で、生駒山へ伸びる道も気分爽快です。

 足場がとれ、建物の色や形が一層よく分かるようになりました。

 昼以降が良いのが、西を向く建物の特徴です。

 玄関前の庇は柱を無しとしました。

 これは現場で監督と棟梁から提案があり変更になったもの。

 その技と経験がいかんなく発揮されている所なのです。

 1階奥にある洋室は、隣の庭を借景としています。

 そして、奥さんが最後まで拘ったガラス棚があります。

 何を置くかは、もう少し先まで引っ張りたいと思います。

 2階へLDKを上げ、大空間を確保したのですが、空へ向かって開くハイサイドが特に良いのです。

 南隣の瓦屋根から反射した光が、天井に光を届けているのが伝わるでしょうか。

 ご夫妻、監督と「ここからの眺めはいいねえ」としばし佇んでいる、の構図です。

 景色の良さが、写真ではなかなか伝わらないのが私のジレンマですが。

 東面の窓は高さは通常とし、L字に視界が広がるように配置しました。

 柱があるので、完全なコーナーFIX窓ではありませんが「ほぼコーナーFIX窓」といったところでしょうか。

 遠くに生駒山地、二上山を望み、こちらの景色も素晴らしい。

 ある程度は計算していますが、結局は足場とシートが取れるまで分からない、びっくり玉手箱です。

 今回「も」、お宝がでてきました。

 良いことばかり書きましたが、ひとつやってしまったこともあります。

 キッチン横の階段へ光を落とす開口を、減額作業で無くしました。

 奥さんから「この時点で爆弾発言してもいいですか?」と前置きを貰ってから、「今から階段に窓なんか付けられないですよね」と。

 泣く泣く減額したとはいえ、もしかすると光が足りないかもと思っていたので、「外壁の窓は難しいですが、室内窓なら何とかできると思います」とお伝えしました。

 追加費用を最小とする方法を監督と考え、その金額も納得頂き、実現に至ったのです。

 20代の頃は現場が怖い時もありました。

 「何か言われたらどうしよう」ということですが、40歳手前くらからは面の皮が厚くなったのか、そう思わなってきました。

 何があったとしても、切腹まで求められることはありませんし、問題があったとしたら、良くなる方法を全力で考えるだけと腹をくくったこともあると思います。

 人の仕事に完璧はないとも言えます。しかし、家という驚く程高価なものを、「まあまあ」で納得してくれる人は居ません。

 少なくとも、私のクライアントには居ませんでした。

 ということは不可能とも言える完璧を目指すしかないのです。

 現場打合せでは、いつもトップギアに入れ替えます。

 ここはクライアントと監督と私達で創り上げる劇の舞台。そろそろ最終章に差し掛かってきました。

文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
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