タグ別アーカイブ: The Longing House

「THE LONGING HOUSE 」‐5‐棟梁プレゼンツ、屋根の上

 先週末に上棟式を迎えた「The Longing House 」。

 横断幕を揚げてみました。

 何とかここまでやってきたのですが、敷地の課題をどう解決したかを昨日の日記にまとめてみました。

 横断幕のある東面こそ細身ですが、T字の敷地だけに中は流石に広い。

 工務店が祭壇と御幣を準備してくれています。

 ご家族が見えると、お子さん達は早速端材を手にとって遊んでいました。

 「トゲだけは気を付けてね」と声を掛けましたが、勿論現場は格好の遊び場。

 ご家族は気が気ではないと思いますが、お子さん達の気持ちは良く分かるのです。

 監督の進行のもと、式典が開始。

 まずは四方を清めてまわります。

 そして御幣が棟梁に託されました。

 2階の一番高い所に掲げ、皆で二礼・二拍・一礼。

 式典が終わるとどこのお子さんもソワソワし始めるもの。

 「2階に上がりたい!」となりました。

 更に「屋根の上にも上ってみたい!」と。

 棟梁の言うことを聞いて貰うという約束で、屋根の上のなかよし兄妹という構図です。

 お兄ちゃんが慎重に匍匐(ほふく)前進する横を、妹さんはスイスイと。

 さらに「ジャンプしてもいい?」と。

 棟梁にOKを貰い、ピョンピョンと。

 こんな所は、女の子の方が案外平気なのでしょうか。

 この日は土曜日だったので、一旦手を止めての式典でした。

 大工4人が、忙しく動き回っている姿を見て貰うのはとても良いことだと思います。

 米と言う字は「八十八もの手間をかけて作られるもの。一粒も残しては駄目」と祖母に言われたことがあります。

 家を建てるには、ざっと20業種くらいの職方が入り、5カ月くらいは掛かります。

 平均3人として延べ2,700人。仮に一日33手間とすれば89,100手間。

 クライアントの奥様が「おそらく人生で一度であろう場面に毎回ワクワクしています」と言ってくれました。

 また「子供たちも、建築中の自宅の屋根に登ったのは強烈な思い出になったことでしょう」とも言って貰いました。

 八万九千百手間。

 稲作より大変というニュアンスではありませんが、現場の過程を見て頂ければ、多くの方は納得してくれると思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「THE LONGING HOUSE 」‐4‐PC板素敵

 建物を建てるためには最低4m幅の道路に、2m以上接している必要と法が定めています。

 これを接道義務と言います。

 「The Longing House」の接道は東側。

 Tの足先が、僅かに接しているという感じです。

 北を見ると、この敷地が住宅地に囲まれていることが良く分かります。

 Tの頭側。西側隣地が一段高くなっています。

 ここにどういった対処をするかは、計画開始時からの課題でした。

 どういった提案をし、どういった苦労があったか。

 そして柱を建てる所ことになった経緯は、前々回に詳しく書きました。

 外構計画の目玉。

 ようやく柱の間にPC板が設置されました。

PC=プレキャスト・コンクリート

 読んで字のごとく、工場で生産された鉄筋コンクリートです。

 工場で作るため条件をコントロールしやすく、安定した品質が確保できるとされています。

 言わば、工場生まれの打ち放しコンクリート板。

 コンクリート素地の肌合いは滑らかで、何とも素敵なのです。

 今回のPC板は1枚が約600kg。下部には少し隙間を開けています。

 理由はまた書くのですが、現在は仮置きの状態で24cmあります。

 最終的には、これをもう少し狭めるのです。

 監督から「大きな木槌で、だるま落としみたいに抜きますか!」という冗談も出ました。

 実際には3枚乗っているので1.8tonあるのでそれは無理。

 じわじわと下げて行き、どこかで止めなければなりません。

 その工法を聞いて、なるほどと思いました。

 「初めての事ばかりなので、さぐりさぐりやってます」と言っていたのですが、そのストーリーがこの塀を、全く違う次元へと導いてくれるのです。

 これは前回の帰り道。阪神高速池田線から見える、大阪湾に沈む夕日です。

 昨日から環状線南行き10日間通行止めで、下道で会社まで戻りました。

 普段よりも混んでいたのだと思いますが、普段なら30分の道程が2時間弱掛かりました。

 当たり前にあるものが無くなった時、初めてその価値が分かるものです。

 心しておかなければと思ったのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐3‐ほぼガンタンク

気持ち良い秋晴れの下、定例打合せ前の現場に立ち寄ります。

この計画はT字の敷地が特徴ですが、頭の棒線の左から敷地を見てみます。

南側から見ることになり、日の当たり方が良く分かります。

今度は反対の北側から。

敷地環境は人の手ではどうすることもできないので、この紐解きが建築設計の始まりとなるのです。

T字の縦線の下。東から見てみます。

敷地をよく見れば、どの空間をどの場所に配置するかは自然に決まって行くものなのです。

前回「もうダメだ、が仕事のはじまり」と書きました。

何とか擁壁の件を解決したのですが、一難去ってまた一難。

またまた歯ごたえのある課題がでてきていたのですが、それも何とか解決の糸口が見えてきました。

びっくりするくらい色々な課題がでてくるのが建築です。

全く問題がなく、簡単に解決できることに、お代を払ってくれる人など居るはずもありません。

困難こそが仕事の本質なのです。

そんな中、スーパーパイロットが助けに来てくれました。

トラックから手際よく一人で地面に降りたち、さっと仕事を始めます。

いつ見ていても鮮やかなもの。

もう完全にガンタンクを操るリュウ・ホセイなのです。

定例打合せを終え、阪神高速で会社に戻ります。

現場や打合せはエンターテイメントです。

大変を楽しく。

これが私のモットーなのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐2‐「もうダメだ」が仕事のはじまり

この計画の敷地は形状にかなり特徴があります。

旗竿敷地は経験がありますが、T字型は私も初めてです。

平面的な形状を活かすのは勿論ですが、現実は2次元ではありません。

T字の頭の部分に面する隣地が一段高くなっているのです。

計画がスタートした際、クライアントはこの隣地に対しての安全対策も合せて提案して欲しいとのことでした。

建物の設計も簡単ではありませんでしたが、これらは建築から少し下がって、土木の世界の話とも言えます。

そこは、普段山奥の湖へ通っている経験が活きました。

山道で土砂崩れがあった時、このような方法で土留め壁を構成し、復旧工事を進めて行きます。

これなら応用できるかもと考えたのです。

当初は鉄筋コンクリートの擁壁を計画していました。

さあ基礎工事となった際に「掘り方のことを考えた時、隣地が崩れてこないか心配で……」と監督から相談があったのです。

正直、参ったなと思いましたが、京セラ名誉会長の稲盛さんからこう教えて貰いました。

 もうダメだというときが仕事のはじまり

それならと、この方法を提案したのです。

監督も「それなら何とかなるかも」と再度工法を練り直し、ようやくここまでこぎつけました。

ドリルで2mの穴を掘りますが、擁壁の地中部分があたりなかなかうまく行きません。

できるだけ擁壁に近い場所を、文字通り手探りで探します。

何とか2mまで到達すると、今度はセメントミルクを注入しながら攪拌です。

ドリルを上に移動させながら、全体にセメントミルクを練り込んでいくのです。

そして今度はH鋼を吊り下げ、セメントミルクで満たされた穴に差し込みます。

この鋼材を手仕事で微調整。

そしてH鋼を設置。

セメントが固まればもう動かすことは出来ないので、今しか調整は出来ません。

監督が「んっ!ちょっとずれてる?」。

慌てて押したり、クサビを打ち込んだり。

もうコントみたいですが、何とかなったようです。

何とかならなかったとしても、何とかするしかないのですが。

建築においての精度は、通常0.5mmくらいでしょうか。

しかし土木となるとそこまでは求められません。この現場を見れば一目瞭然です。

図面ではどう描けても無理なものは無理なのです。

どこは厳しく、どこは許容するか。

現場に足を運び、対話をしなければその判断はずれてしまい、裸の王様になってしまうのです。

文責:守谷 昌紀

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「The Longing House 」‐1‐プロローグ

 曇りの天気予報をくつがえしての快晴。

 雨降って地固まるという常套句もあるが、やはり地鎮祭は晴れるに越したことがない。

 神主の狩衣(かりぎぬ)も、晴れ空のもと鮮やかだ。

 クライアント家族が一同に会し、神聖な時間を過ごすことで、工事の始まりを実感するのである。

 建築会社の鍬入れが終わり、式典は無事終了。

 地鎮祭の時は、模型も一緒にお祓いして貰うようにしている。

 左にあるのが1/100で右にあるのが1/50の模型だ。

 1/100の模型を見ると分かりやすいが、この計画の特徴は何と言ってもT字型の敷地である。

 接道は東で、T字の足の部分が接している。

 反時計まわりに90度回すと、T字の頭の部分が見えてくる。

 この頭に当たる部分には、主に平屋部を配置した。

 南東角からみるとその形状が分かりやすいだろうか。

 LDKに光を取り込むよう、南には大開口を備えた。

 連続するウッドデッキは、金額調整の中で最後の最後まで課題となったが、何とか実現できることになった。

 そのLDKと直交する形で、個室が集まる2階棟が東に続く。

 2階棟を東へ進むとT字の足に戻り、東端のエントランスとなる。

 ファサードは、この建物のボリュームを想像させない、品あるものにしたかった。

 コンセプトは「家族でワイワイ、ちょうどいい家」だ。

 子育て真っただ中の5人の家族が楽しく暮らせるよう、家事動線は奥様と練りに練った。

 また、将来は両親とも楽しく暮らせよう、ちょうどいい距離感を保てる部屋も備えている。

 完成予定は来年3月で、計画がスタートしてちょうど2年。

 コロナ下の環境もあったが、2年くらいがちょうどだったのかなとも感じる。

 タイトルの「The Longing House 」には、「憧れの家」と言う意味が込められている。

 その意味は、追って紹介していきたいと思う。

文責:守谷 昌紀

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「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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