築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐5‐アドリブあってこそ

 屋根工事も終わり、内装工事が本格化してきました。

 2階屋根裏に隠れていた小屋梁が見えています。

 最近なら、自然木の形状をそのまま使うことはないので、なかなかの存在感です。

 この梁の反対側は階段室。

 その上部にあるのがロフトです。

 ロフトではハイサイド、階段室はトップライトを採用しました。

 長屋であったり、密集した市街地ではトップライトの力を借りることが多々あります。

 この窓が、階段を通して1階のリビングに光を届けてくれるでしょう。

 この日は、照明やスイッチコンセントの位置決めでした。

 クライアントお気に入りのブラケット照明です。

 ご自身にも、動き方を確認してもらい、綿密に位置を決めました。

 壁にあてがっているのは、壁紙がラミネートされたもの。

 A4ほどのサンプルをお渡ししましたが、全てラミネートして持ってきてくれたのです。

 基本は青森ヒバの無垢フローリングに、白い壁ですが、ポイントポイントに「碧」を中心とした色を取り入れました。

 それらを現場で確認しやすいよう、また汚れないようにラミネートして持ってきてくれたのです。

 ここまで大切にしてもらったなら、サンプルも浮かばれるというものです。

 ちょっと感激しました。

 リノベーションは、元の躯体と新たな部材のジャムセッションです。

 建築現場においても、クライアント、設計者、施工者のジャムセッションといえます。

 私はこの仕事を20年以上続けてきたので、失敗のない選択肢なら、確実に提案できます。

 しかし、完成した建物で、ここは素敵だなと思った部分は、そのような箇所ではありません。

 セオリーなら選ばないような選択肢を、クライアントがとても好きだと言ったとします。

 初めからは選ばないが、駄目だという明確な理由もない。

 よくよくイメージしてみると、案外いいかもしれない。トライしてみるか。そんな箇所なのです。

 全てがアドリブなら曲は成立しませんが、ところどころにそのような遊びや物語りが織り込まれているよほうがよい思うようになりました。

 さて、このアドリブはうまく曲のに乗るのか。

 私も楽しみにしているといえば、無責任に聞こえるでしょうか。

文責:守谷 昌紀

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家事動線がコンパクトな「白のコートハウス」‐2‐中庭の効用

 台風の通過で、建方が3日ほどずれこみました。

 何とか、盆休み前に上棟した「白のコートハウス」。

 エントランス周りは、家族用動線が別にあり、家事動線をコンパクトにしています。

 なぜコンパクトになるかは、もう少し工事が進んでから説明します。

 玄関から中庭を見ながらLDKに入って行く景色は、コートハウスならでは。

 近隣の視線を気にせず、開放できるのが最大の長所です。

 LDKはL字になっており、2面が中庭に接します。

 中庭に対しては、天井面まで開口部としました。

 建物の中心に行灯(あんどん)が差し込まれている光景をイメージしてもらえればと思います。

 直射光ではない、優しい光が常にそこから漏れてくるのです。

 2階は、中庭を囲むように4部屋を配置しました。

 主寝室には前室をもうけています。

 ゆったりとした空間になると思います。

 外部からの視線を気にしなくてよいバルコニー。

 この空間を使うのは主にご主人か。この用途も追々。

 中庭の足場がとれるのは10月頃か。

 その時に差す光が楽しみな計画なのです。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐4‐「あお」は希望の色

 打合せに向かうと、クライアントの車が現場の前に。

 後ろに、碧(あお)の屋根材が立てかけてあります。

 赤と補色の関係にあるのは緑ですが、それに負けず劣らず、コントラストがとても美しいのです。

 「碧」は深い青や、青緑、光り輝く青など、様々な意味を持ちます。

 「紺碧(こんぺき)の海」という表現が一番よくつかわれるものでしょうか。

 2階窓の腰から上が全て碧に葺かれた景色がとても楽しみです。

 玄関を入ると、内部は随分すっきりしてきました。

 1階を担当するのは親子大工。息子さんは、設計事務所も開設しているそう。

 最奥、トイレの横にあるのは中庭です。

 この僅かな外部が暮らしに潤いを与えるのです。

 前時代なら、トイレや浴室は建物から出来るだけ孤立する状態でなければ、衛生を保てなかったという逆側からの理由もあります。

 それらが、長屋の中庭文化を引き継がせてきたとも言えるのです。

 2階のロフトもさらに工事が進んでいました。

 ハシゴで登り、外をのぞくと碧の屋根がほぼ出来上がっていました。

 建築家・白井晟一の最後の作品を訪れたのは2012年の2月でした。

 1983年、78歳時の最後の作品で、「生前から最も好きだった色、ペルシアンブルーのタイルに挑戦したのでは」とお孫さんは語っていました。

 白井晟一ほどの巨匠が、そこまで慎重だったことに驚き、また納得もします。

 それにしても青は「希望」の色とはよく言ったものだ。

 彼はエッセイでこう語っています。

 私もクライアントの希望を現実とする碧だと確信しているのです。

文責:守谷 昌紀

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永住したい打ち放しのマンション「R GREY」‐10‐自分の顔に責任を

 足場の解体が始まりました。

 シートを外し、1日がかりで撤去します。

 今日、ようやく全ての足場がなくなりました。

 「R Grey」の名の通り、全てがグレー。

 階段ホールもグレー一色です。

 余談ですが、2、3階のガラスは、コストダウンのため父に施工してもらいました。

 コンクリート打ち放しは、いわば1点ものです。

 均一こそが現代技術とするなら、反対項にあると言えるかもしれません。

 建物の正面をフランス語で「ファサード」といいます。これは英語のフェイスと語源をともにするそうです。

 人を見掛けだけで判断してはなりませんが、髪も切らず、顔も洗わない人を好きな人はいません。

 また、リンカーンが「40歳を過ぎれば自分の顔に責任をもて」といった通り、大人にとっては言い訳無用なのです。

 住まい手が帰宅したとき、日々わずかでも「ここでよかった」と思ってもらえるような、秩序ある清潔なファサードを目指しました。

 この建物が好きな人が、ここで暮らしてくれたら……

 創り手にとって、これほど嬉しいことはありません。

 現在、3階は埋まったようです。引き続き、多くの人が見にきてくれればと思うのです。

101号室 LDK北向き
101号室 ダイニング 101号室 リビング
101号室 キッチン
101号室 寝室
101号室 洗面
101号室 浴室
101号室 玄関

文責:守谷 昌紀

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