松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐12‐オープン

 オファーを貰ったのは昨年の8月上旬。
 
 天気は生憎の曇天ですが、1年2ヵ月が経ち、何とかこの日を迎えることができました。

 診療開始は8時半ですが、開院前に列が出来上がっていました。

 いよいよ扉が開きました。

 待って下さる方も多いので、日よけとなるようなものが欲しいと院長からリクエストがありました。

 庇では心もとないので、建物の張り出し部を大きく設けたのです。

 自転車止めは腰掛けられるよう丈夫に作ってありますが、これだけ停まればその役割は果たせそうにありません。

 診療開始と共に、院内も見てきました。

 花も続々と届き、受付前に飾られています。

 昨日ものぞきに来ていたのですが、前日に何とかここまで来ました。

 ただ、院長も、医療機器メーカーの方も準備、調整で予断を許さない状況ではあったのです。

 廊下に面して2つトイレがありますが、これらもデザインしました。

 そういう意味では、端から端まで関わらせて貰うのが建築設計の仕事です。

 診察が始まったなら、次のハードルがMRIの撮影です。

 10時に1人目の撮影があることは聞いていました。

 スタッフの方を、医療機器メーカーのオペレーター、現場担当の人達がサポートしてくれます。

 右手にあるCT室は撮影時以外にX線はでません。

 こちらもサポートの方がひとり待機してくれていました。

 クリニックは本当に多くの職種の人達が関わっているのがよく分かります。

 昨日のぞいた時に、その磁場の強さを見せてくれました。

 MRIから3m程離れているとそこまで磁力はありません。

 しかし、1.5mを切れると、大きめのレンチが水平に近い状態で引っ張られているのが分かります。

 大きな磁力が、なぜ詳細な画像を生むのか理解はできていませんが、体へのダメージを最小にし、検査できる最新の医療機器なのです。

 撮影の様子を見ていましたが、上の画像は奥からの映像です。

 患者さんを不安にさせないように、色々な配慮がなされていました。

 11時頃までクリニックに居ましたが、その前まで車の渋滞が伸びてきます。

 本当に人通りの多い活気のある通りで、人口の減少など微塵も感じられません。

 まだ残工事もあり、息をつく余裕はありませんが「うえだクリニック」は新たな章に入りました。

 勤勉な院長、献身的なスタッフに支えられて、地域に愛されるクリニックとなったのですが、その日常をこの建物が少しでもサポートしてくれたらと願うだけです。

 診察室1、2とも、東側のハイサイドとトップライトから自然光が入ってきます。

 もし訪れることがあれば、少し意識して見て下さい。

文責:守谷 昌紀

■■■『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載

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【News】
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐11‐決戦は火曜日

 毎回のことですが、人は何と弱い生き物なのかと思います。

 クリニックの移転オープンが9月24日(火)というのは、何ヶ月も前から決まっていたことです。

 建築は法的なチェックを受けなければ使用できません。

 消防検査をクリアしたのが、20日(金)の2:30pm。その報告を聞いて建築確認申請の審査機関へ直行しました。

 担当者が渋滞に巻き込まれたとのことで、実際に完了検査済証を手にした時には、すっかり日が暮れていました。

 月曜日は祝日なので、どこかで30分遅れていれば、24日(火)8:30amのオープンには敵わなかったことになります。

 「なんとかなる」ではなく「なんとかする」が仕事の本質ですが、考えれば考える程ぞっとします。

 とは言え、ひとつ大きなハードルを越えました。

 昨日は診療時間を示すサインも出来上がっていました。

 コーポレートシンボルのデザインも、仕事として引き受けますが、今回は院長のデザインです。

 普通は素人っぽさが透けてみえるものですが、たたき台から良い感じで「これで行きましょう」となりました。

 フォルムや色感には少し手をいれましたが、とても良いアイコンだと思います。

 「うえだ」のuを囲むCは「クリニック」を示しますが、脳をイメージしたものとのこと。

 ストーリーがしっかりしていると、より活き活きとしてくるのです。

 まだ予断を許さない部分もありますが、吹抜けを備えた待合も形になってきました。

 工事が遅れた分、院長には迷惑をお掛けしています。

 先週土曜日から出ずっぱりで、準備、システムの構築と休む間がありません。

 看護師の方も、休む間もなく動き回っておられますが「こうしていないと落ち着かないんです」と。

 これは受付と診察室1を繋ぐカルテパスと言われる部分。診療における動脈のような、重要な部分です。

 既製品のカルテ棚との隙間は20mmで設計しましたが、実際の残りは5mmほどでしょうか。

 この消えた15mmを読み解くのが経験なのです。

 2階は全てスタッフ専用のエリア。

 廊下にそって、キッチン、スタッフルーム、トレーニングルームと並びます。

 待合上部にあるハイサイドから漏れてくる光が、この廊下をただの暗い通路ではないものにしています。

 「2度おいしい」をいつも心掛けているのです。

 キッチンは1.65m。

 大きくはありませんが、簡単な昼食をつくるには十分なサイズです。

 隣に繋がるのはスタッフルーム。

 さらにトレーニングルームもあります。

 サイクリングマシンも準備済み。

 昼休みにジョギングに出るスタッフも居られるとのこと。

 その意識の高さには頭が下がる思いですが、奥にはシャワー室も備えています。

 院長以外は全て女性の仕事場ですから、スタッフ専用トイレの洗面は大きめにしました。

 前クリニックは、いわゆる「ビル診」で、こういった設備を充実させることが出来なかったのです。

 これらは、全て院長からスタッフへの心遣いなのです。

 院長、スタッフの方々と共に、最も迷惑を掛けてしまったのが、MRIやCTを納入している医療機器メーカーの方達です。

 予定をずらして貰い、前日の23日(祝・月)のまでは、確実に調整に入るとのことでした。

 法のチェックだけでなく、まさに時間との勝負です。

 ベッドが入り、採血・点滴室も体裁が整ってきました。

 診察室2、通称「2診」はほぼ準備OKでしょうか。

 「1診」はまだまだごった返していたので、今回の掲載は見合わせます(笑)

 ベッドは前クリニックからの転用ですが、院長が好きな春先の若葉のをイメージして選んだとのこと。

 その中に、ポツポツと山桜が咲く景色が好きだと聞いていました。

 それで、コーポレートシンボルは、淡い緑と、濃いピンクの組み合わせとしました。

 9月24日(火)の8:30amにオープンするのですが、患者さんと戦う訳では全くありません。

 今から私にできることはほぼないのですが、「決戦は火曜日」という気分です。

 院長が好きな山桜のように、ポツポツと花開くと一番よいのですが、いきなり満開となる可能性もあります。

 朝一番、のぞきに行こうと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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「住吉区歯科医師会館」‐10‐光こそが神、仏

 先週の昼時「住吉区歯科医師会館」に寄ってきました。
 
撮影の確認の為ですが、秋の高い空にそのフォルムが引きたちます。

 6月中旬に竣工写真の撮影をしたのですが、夕景が残っていました。

 撮影の段階になり、地面に埋め込んである照明が点灯しないことが分かったのです。

 監督にはすぐ来て貰いましたが、どうすることもできず、申し訳ないことに写真家にはその場で帰って貰ったのです。

 その後梅雨に入り、この日までずれこんでしまいました。

 暑かった夏を越えたジューンベリーは、一回り大きくなったでしょうか。

 下草のアイビーは枯れている部分もあり、猛暑の影響がこんなところにもでています。

 昨日の夕方、写真家はすでに到着していました。

 このカットが5:25pm。

 事務局の方には何度も撮影日の変更をお願いしたりで、申し訳ない限りです。

 会議の準備をしてある机を、少しの間移動させて貰い撮影の準備に入りました。

 昨日の日没は6:00pm。

 夕景は、日没から20分くらいの間が勝負です。

 6:18pm。

 光が浮き出し、良い感じになってきました。

 このあたりがメインカットでしょうか。

 6:23pmには、ここまで光は落ちます。

 最後に私も正面を1カット抑え、無事終了しました。

 撮影には私が立ち会った方が良い写真が撮れます。

 理由を説明するのは難しいのですが、一番良い写真を撮りたいと思っているのが私だからです。

 当社の人手不足もあり、全てのスケジュール調整から、現場の掃除までを私がするしかなく……

 そんなこともあり、6月の時はかなり頭にきていたのです。

 何でもそうですが諦めたら終わりです。

 敵わなければ何度も、何度もトライするのみ。ただ、それをクライアントが受け入れてくれるかは別問題ですが。

 特別な能力を持っている訳ではない私が、何とかここまでやってこれた一番の理由は「しつこさ」だと思っています。

 光によって建物がここまで表情を変えることは、いまだに新鮮な驚きです。

 そんな場面に立ち会える可能性があるからこそ、しつこく、しつこく仕事に取り組めるのです。

 昨日は、天の神さまが素晴らしい光の演出をしてくれました。

 教会のステンドグラスから落ちてくる光を神々しいと感じるように、人は光自体に神を感じるのかもしれません。

 仏教においては、山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)の通り、全てに仏性が宿るので光もまた仏です。

 いずれにしても、大きなご褒美を貰った気分なのです。

文責:守谷 昌紀

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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐10‐光という移り気な素材

 「うえだクリニック」のオープンまで、残すところ2週間となりました。


 
 外壁が仕上がり、かなり最終形が見えてきました。

 濃い茶が青い空に映えています。

 クリニックの顔とも言える受付。

 やはり人の心象に最も影響を与えるのは人です。

 来訪者が分かりやすく、またスタッフが働きやすいよう、院長と模索した受付カウンター。

 受付時に荷物を置く下段のカウンターも、綿密に設計したつもりです。

 しかし、何と言ってもこの下地です。大工の手数が見てとれますが、建築は見えないところで差がでるのです。

 6m強ある待合の吹き抜け。

 まだ、移動足場が残っていますが、明るく、開放的な空間を演出してくれるはずです。

 診察室は適切な大きさがあり、あまり大きな空間は求められません。

 しかし、院長はここでかなりの時間を過ごすことになるので、少しでも快適な空間を目指しました。

 まず、東面に小振りなハイサイド設けています。

 加えて、患者さんが座る席の横に、トップライトを設けました。

 建物の中央部はどうしても暗くなるからです。

 屋根が高い位置にあるので、見上げると煙突のような形状になっています。

 明るすぎない間接光を、安定して供給してくれるはずです。

 床の仕上げ工事に、職人が休日出勤してくれていました。

 2階では電気工事も。

 待合の大開口の前には、バルコニーのような空間があります。

 この外側に光の入り過ぎを抑えるルーバーを取り付けます。

 明るく、明るすぎない空間を求めて、建築設計の仕事を四半世紀続けてきました。

 建築に失敗は許されないので、動物が巣穴を中心に狩りをするように、少しずつ、少しずつ、その距離を伸ばしてきました。

 待合の開口部には、その経験を全てつぎ込んでいるのです。

 光という形のない移り気な素材を、どこまでリードできたのか。間もなく答え合わせの時間がやってきます。

文責:守谷 昌紀

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【Events】
■9月15日(日) 9:00~12:00 高槻高校文化祭にて
「頼れる卒業生」による無料相談コーナーに参加

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