住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐12‐引っ越してきたニャ

 今週月曜日に、ようやく引き渡しが終わった「H型プランの平屋」。

 計画がスタートしたのは2017年の6月なので、約4年に及ぶプロジェクトになりました。

 最長記録は5年1ヵ月の「四丁目の家」ですが、それに次ぐ長さです。



 南の庭に面するウッドデッキも何とか形になりました。

 が、塗装はまだ。

 足洗い場まで備えたフルバージョンですが、工程監理は永遠のテーマです。

 前回はひっくり返っていたLDKですが、造作家具も据え付けが終わり、ようやく最終形が見れました。

 向かいにあるキッチンは、サンワカンパニー製です。

 コンクリート打ち放しとウォルナットのフローリングに、ステンレスが良く合っています。

 LDKを挟み、東西にあるのが各個室。

 同じく庭を望みますが、北側にウォークインクローゼットを備えています。

 現在は空っぽなのでそれはそれで格好良いのです。

 紆余曲折あった和室もようやく完成。 

 床板はステンレスで、背面には黒皮鉄板です。

 氷ばかり艶なるはなし

 室町時代の僧、心敬の精神を体現してみました。
 
 亭主が客人をもてなすためにあるのが床。一緒に回っていた長男君が、ドラえもんのオモチャを飾ってくれました。

 物の貴賤ではなく、もてなす心が大切なのです。

 浴室もようやく完成。


 脱衣室まわりもすっきり仕上がっています。

 南面の大開口は圧巻はですが、なにやら視線を感じます。

 木の陰から、興味津々にこちらをのぞいていたのは子ネコでした。

 主はこちらだと思っていたら、新参者だったようです。

 そうこうしていると、引越しの準備にご主人が車で見え、少し一緒に中を回りました。

 その後、「銀行との最終打合せがあるので」と出て行く前に、両手をとって「ほんとに有難う」と言ってくれました。

 計画の途中、私から急かしたことは一度もありません。全てはなるようになりますし、行くべきところに行くものです。

 これまでの仕事人生で「建てましょう」とか「建てませんか」という言葉を使ったことはありません。

 「建てたい」人の力のになりたいだけなのです。

 今日から始まる新しい暮らしは、きっと素敵なものになるはず。こちらのお家はオープンハウスを予定しているので、また告知させて貰います。 

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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3台駐車可「3つの庭を持つコートハウス」‐4‐旅芸人と建築家

 梅雨入り前、滑り込みで上棟式が間に合いました。

 スタッフにも早めに来てもらい、会社を8時40分頃には出るのですが、いつも約束の時間ギリギリ。

 現場のほうは準備万端で、クライアントもすでに到着済み。今回も私達が最後になってしまいました。

 建方が終わり、全容が見えてきましたが、右の箱が2階棟、左の箱が駐車場棟です。

 駐車場棟は、車3台がゆったり駐車できます。

 木造でこの大空間をどうやって実現したのかも、また書いて行きたいと思います。

 式典自体は手造り版。クライアントには「洗い米」「粗塩」を持ってきてもらい、監督が進行してくれました。

 エントランスを入ってすぐに階段がありますが、今回も仮設階段を先に掛けてくれました。

 これが有ると無いとでは、現場打合せの精度が全く変わってくるので、とても助かるのです。

 ご夫妻には四方を清めてもらいます。

 東西に長いLDKはこの建物の見せ場となる空間。

 端から端までおよそ13m。10mを越えてくると「広いなあ!」といった反応が多くなるでしょうか。

 この抜け感はいつも意識しています。

 御幣を2階の最も高いところに据えて、皆で二礼二拍一礼。

 式典は無事終了です。

 2階は個室が集まりますが、南の部屋は高い腰壁に囲まれたバルコニーを備えています。
 
 この形状も一工夫したので、仕上がりが楽しみな所です。

 現在はすっぽりシートに囲まれているので、中庭の存在は分かりません。

 しかし、2階から見下ろすとその形状がよく分かります。

 大きな駐車場が前にあるお陰で、プライバシーが保たれています。

 敷地が大きい場合は、特に外部の計画が重要で、今回も価値ある空間になると思います。

 LDKはその中庭に開放されており、解放感ある景色となるはずです。

 工期がタイトなことはいつも気にしていますが、到着が常にギリギリであることも気になっていました。

 今回、距離的には短いが道幅は狭い、抜け道を通ってみました。

 狭いので飛ばすのは御法度です。

 こういったケースは「あまり変わらなかったね」ということが多いと思いますが、3~4分の短縮にはなったと思います。

 その程度かという事無かれ。それでも2分遅刻したので、十分価値はありました。

 スピードが出せなくても、止まらずに進める抜け道が大好きです。

 地域の暮らしが近くで見てとれ、魅力的な景色も多く、抜け道好き歴は30年です。

 その場所へ行き、その場所にいる人を幸せにするのが建築家の仕事です。

 旅芸人も似た仕事ですが、移動が好きな人が選ぶ仕事なのだと思います。

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐11‐ネコと一緒

 敷地が大きいということは、多くの人にとって憧れです。

 代々引き継がれてきたこの敷地は、隠しようがないくらい大きいのです。

 その敷地に、H型にコンクリートの箱を配置することが、この計画の全てのスタートになりました。 

 躯体によって演出される外部が非常に重要なのです。

 エントランスホールに入ると、その奥に見えるのが中庭。

 周囲をぐるりと回ると、樹齢300年は越えている大楠木が見えてきます。

 成長し過ぎたがゆえ、今回かなり枝を落としたのですが、それでもこの時期には青々と葉をつけています。

 この外部空間は、躯体と大楠木によって、プライバシーが保たれています。

 クライアントも「ここはBBQに持ってこいですね」と。

 エントランスの前後にある外部は、この建物にとって非常に大切で、意義のある空間なのです。

 内部は最終盤を迎えごった返してきました。

 南の庭に面するウッドデッキも、下地が出来上がってきました。

 仕上がっている部屋も勿論ありますが。

 今回のファサードのカットには、全てこの職人さんが写っています。

 「写真撮るけど、入っても構わない?」と声を掛けたのですが、「ハイ、大丈夫ですよ」と。

 この日は天気がよく、庇下がとても気持ち良さそうで、昼食後の休憩場所にここを選んでくれたようです。

 ネコはその家の一番気持ちの良い場所を占領すると言いますが、こういった景色を見ると非常に手応えを感じます。
 
 ネコと一緒にするなと言われるかもしれませんが、人もネコも正直なものだと思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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「THE LONGING HOUSE 」‐12‐「井戸」のようなもの

 ゴールデンウィーク明けの定例打合せは「The Longing House」からです。

 正面のガラスがようやく全て入りました。

 室内から見るとこのような景色。

 なかなかに開放的な空間ですが、使い方はまた追々。

 LDKの床養生がとれ、ヘリンボーン貼りが見えてきました。

 キッチンとアプローチの配置は、こういった関係にあります。

 リビング階段ではないものの、お母さんと子供が必ず顔を合わせるような動線になっています。

 またこの階段は、2階からの光を落とす役割も担います。

 何か手を打たなければ、このエリアは真っ暗になってしまうのです。

 トイレのタイル貼りも完了。

 後は手洗いの設置を待つのみです。

 こういったアクセントクロスを採用している部屋がいくつかあります。

 こちらはウォークインクローゼットの最奥ですが、輸入物を支給して貰いました。

 服で言うなら、裏地にまで拘っているといった感じでしょうか。

 1階の北端にある和室には、前庭があります。

 この小さな外部が、室内をとても豊かにしてくれるはずです。

 前庭の背景になっているのがPC版の擁壁ですが、建物を守るように敷地南端まで連続しています。

 高低差のある隣地に対して考えたものですが、支柱を建てる際もかなり苦労しました。

 PC版を吊り込むのも一仕事ですが、微調整をするのに現場はさらに知恵を絞りました。 

 まずはジャッキアップ。

 正しい高さになるようかまし物を入れ替えて、今度はジャッキダウン。

 これらの工事の際、地下に水脈があるようでそれなりの水が噴出してきました。

 折角なら非常時に使えるようにしたいという相談を、クライアントから貰っていたのです。

 そして出来上がったものがこれ。

 本格的な井戸を掘ると100万円では納まりませんが、下水道に使われるヒューム管を使い、深い溜め桝のようなものを作りました。

 私も建築会社もその名と通り建築を専門としていますが、今回は小さな土木工事のようでもありました。

 「餅屋は餅屋」という言葉もあります。また「境界線を越えて行ける人が結果を残す」と聞いたこともあります。

 どちらも正しい警句ですが、その間にある答えを模索したのが、この「井戸」のようなものです。

 プロには最大限の敬意を払いますが、高すぎると実現する可能性は減ります。
 
 金額と言う物差しは、常に大きな決定権限を持っていると知る者が職業建築家だと思っています。 

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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