軒が深いから「おいでよHOUSE」‐6‐集中しやすい環境を!

 会社の営業日は28日(月)までとしています。

 しかし現場は29日(火)まで動いていますし、打合せも入れています。

 今日は日曜日ですし、そもそも休みって何?ということです(笑)

 現場日記は今回が最後になるのか、もう1回書けるのか微妙なところ。

 軒が深いから「おいでよHOUSE」の軒が出来上がってきました。

 細身のファサードが、軒をより引き立ててくれるのですが、デザインでこうしている訳ではありません。

 2階部分の小さな窓を室内から見るとこのような景色になります。

 ここはスタディコーナー。

 お子さんにしっかり勉強して欲しいのは、全ての親の願いです。

 「集中しやすい環境を!」と奥さまから強い要望を頂き、狭すぎず、広すぎず、開きすぎず、閉じすぎずを考えました。

 駐車場が欲しいということと合わせて、このような空間構成になりました。

 天井の高いLDKへ行くと、仮設の床ができていました。

 ベテラン大工のAさんに聞くと、「僕が一番高いところで何とか仕事ができる高さに足場を組んだんですよ」と。

 流石に若い時と同じように体は動かないと思いますが、そこは知識と経験です。

 更に工夫があれば補っておつりが来るのは間違いありません。

 クライアントの奥様が、変わったところに感心していました。

 まずは配管が「カラフル!」と。

 そして手造りの道具置場。

 「大工さんってなんでもできるんですねえ。格好いい!」と。

 ゴミ箱も合板の手造り。

 ゴミを美しく扱える人に、仕事が出来ない人はいない。

 私の持論ですが、あながち外れていないと思うのです。

 美しい現場が、美しい空間を生むのは間違いありません。

 1階を担当してくれている棟梁のMさん。実はバスフィッシングが大好きなのです。

 私が「何とか釣り納めに行きたいと思ってるんですよ」というと「この寒いのに先生も好きですねえ!」と。

 (「先生」が苦手なので「所長」と呼んで欲しいと何でも言っているのですが)

 「いえいえMさんほどでは」という、いつも通りの会話でしたが(笑)

 溌剌と仕事をしている人を見るのは、本当に気分が良いものです。

 下を向きながらの作業は仕事と呼びません。

 良い結果を出すための過程を仕事と呼ぶのです。

 加えて、仕事にはルールも答えもありません。

文責:守谷 昌紀

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「THE LONGING HOUSE 」‐6‐若者は荒野を行け

 現場の風景は日々変化します。

 訪れるタイミングで随分印象が違ってくるものです。

 前回の上棟式の際、クライアントであるお母様は革靴にもかかわらず、ハシゴを途中まで登られました。

 もし何かあってはと皆で止めて、真ん中あたりまでで我慢して頂いたのです。

 監督に「お母様にも登ってもらえるハシゴってないかな」と相談していたら、仮設階段が完成していました。

 早速監督が昇ってみると「ちょっとしなるなあ」と。

 その場で、若い大工が中央に垂直部材を加えてくれた改良版です。

 お母様、奥様にも安心して2階を見てもらえたのです。

 2階の一番奥は、光が差しこんでくるのが良く分かります。

 棟梁が担当のよう。

 1階も南に面した開口はできるだけ高くまで確保しました。

 そこで更に若い大工が加工をしていました。

 聞くと、こちらの若者は棟梁の息子さんとのこと。

 現在は大学に通っていますが、ほぼ授業がないので手伝いに来ているそうなのです。

 それを聞いて、少しは話をしてみました。

 「大工を仕事にはしないの?」と聞くと、「考え中なんです」と。

 なかなかに良い表情をしており、愛嬌も感じます。

 あまり勧めすぎるのも良くないのですが「いい仕事だと思うよ」とだけ伝えたのです。

 家庭での顔は知りませんが、お父さんは「ザ・棟梁」という感じの寡黙な職人肌で、非常に好感が持てます。

 実際、親子大工は非常に多く、1階、2階と別れて仕事をしていることが多いのです。

 もし彼が大工になったなら、大卒サラブレッド大工となる訳で、この職人不足の時代、重宝されることは間違いありません。

 勝手なことを言えば、これから30年位は私も枕を高くして眠れるというものです。

 棟梁はどんな気持ちでいるのだろうと考えてしまいました。

 帰る頃には日が暮れてきました。

 職業選択の自由は、憲法によって保障されています。

 また、人生において、職業の与える影響は本当に大きいとも思います。

 私も人の親で、とても他人事とは思えませんでした。

 ただ、本当はこう思っています。

 「若者は荒野を行け」

 平坦で、行先の分かっている舗装道路は、どうせエリートで一杯ですから。

文責:守谷 昌紀

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐6‐クルクルとハッカー

 ようやく冬らしい気温になってきました。

 と思っていたら、関越道では大雪で多くの車が立ち往生。ほどほどが良いですが、こればっかりは……

 「H型プランの平屋」は、いよいよ工事が佳境に入っています。

 鉄筋コンクリート造の建物は、まず外側の型枠を起し、内側に鉄筋を組んでいきます。

 コンクリートと鉄の長所を組み合わせたこの構造は、大空間を安価に造る為に考えられたと言われています。

 そのコストパフォーマスの良い躯体を、そのまま仕上げにしようというのが「コンクリート打ち放し」です。

 よって、電気の配線、LANの配管、水道など、全て躯体の中に通り道を確保しておかなければなりません。

 一度コンクリートを打設したなら、もうやり替えることは不可能なのです。

 それゆえ、現場には常に緊張感があるのです。

 今日の午前中、定例打合せに行くと屋根スラブの配筋が始まっていました。

 レッカーで鉄筋を仮置き。

 それを人力で配置。

 更に、鉄筋と鉄筋を一本ずつ番線で結束していきます。

 その作業量は膨大……

 職人はキビキビとハッカーという道具をクルクルと回しながら、結束して行きます。

 機敏過ぎて、カメラで追うのも四苦八苦でした。

 何故ハッキングという悪さをする輩と同じ名前なのかは知りませんが、色々な意味で「対極」と言って良いかもしれません。

 型枠は最終的には上部以外全て閉じられてしまいます。

 コンクリートが打設された重さに耐えれるよう、室内は無数のポストで支えられます。

 この暗い、ポストの林がどんな空間になるのか。

 型枠をばらすまでのこのワクワク感も、コンクリート打ち放しの魅力なのです。

文責:守谷 昌紀

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「THE LONGING HOUSE 」‐5‐棟梁プレゼンツ、屋根の上

 先週末に上棟式を迎えた「The Longing House 」。

 横断幕を揚げてみました。

 何とかここまでやってきたのですが、敷地の課題をどう解決したかを昨日の日記にまとめてみました。

 横断幕のある東面こそ細身ですが、T字の敷地だけに中は流石に広い。

 工務店が祭壇と御幣を準備してくれています。

 ご家族が見えると、お子さん達は早速端材を手にとって遊んでいました。

 「トゲだけは気を付けてね」と声を掛けましたが、勿論現場は格好の遊び場。

 ご家族は気が気ではないと思いますが、お子さん達の気持ちは良く分かるのです。

 監督の進行のもと、式典が開始。

 まずは四方を清めてまわります。

 そして御幣が棟梁に託されました。

 2階の一番高い所に掲げ、皆で二礼・二拍・一礼。

 式典が終わるとどこのお子さんもソワソワし始めるもの。

 「2階に上がりたい!」となりました。

 更に「屋根の上にも上ってみたい!」と。

 棟梁の言うことを聞いて貰うという約束で、屋根の上のなかよし兄妹という構図です。

 お兄ちゃんが慎重に匍匐(ほふく)前進する横を、妹さんはスイスイと。

 さらに「ジャンプしてもいい?」と。

 棟梁にOKを貰い、ピョンピョンと。

 こんな所は、女の子の方が案外平気なのでしょうか。

 この日は土曜日だったので、一旦手を止めての式典でした。

 大工4人が、忙しく動き回っている姿を見て貰うのはとても良いことだと思います。

 米と言う字は「八十八もの手間をかけて作られるもの。一粒も残しては駄目」と祖母に言われたことがあります。

 家を建てるには、ざっと20業種くらいの職方が入り、5カ月くらいは掛かります。

 平均3人として延べ2,700人。仮に一日33手間とすれば89,100手間。

 クライアントの奥様が「おそらく人生で一度であろう場面に毎回ワクワクしています」と言ってくれました。

 また「子供たちも、建築中の自宅の屋根に登ったのは強烈な思い出になったことでしょう」とも言って貰いました。

 八万九千百手間。

 稲作より大変というニュアンスではありませんが、現場の過程を見て頂ければ、多くの方は納得してくれると思うのです。

文責:守谷 昌紀

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軒が深いから「おいでよHOUSE」‐5‐上棟式はする?しない?

 先日棟上げを終えた「おいでよhouse」。

 日曜日は上棟式でした。

 この10年くらいで言えば、上棟式をする割合は1/3くらいでしょうか。

 さらに式典を神主さんにお願いするケースが1/3くらい。

 残りの2/3は、略式で監督が神主さんの変わりをするという感じです。

 この日は神主さんが見えたので、立派な祭壇がありました。

 滞りなく式典が終わり、御幣がクライアントから棟梁に手渡されました。

 ちょっと退屈気味だったお子さんも「さあ2階へ!」。

 市街地ではやはり2階LDKプランが有効です。

 こちらの場合は更にロフト付き。

 棟梁に御幣を揚げて貰い、全員で「二礼・二拍・一礼」。

 これで全て終了しました。

 終了と同時に、お子さん達は更に一段上のロフトへ一目散。

 棟梁がサポートしてくれました。

 子供は何故危ないところが好きなのか……

 もっと真ん中に立ってくれると良いのですが、気持ちは分かります。

 このロフト、サイズもかなり大きく、建物のフォルムを決定づけているもので、仕上がりが楽しみです。

 「地鎮祭や上棟式はするほうが良いですか?」

 こう聞かれることは本当に多いので、私なりに書いてみたいと思います。

 上棟式の有無は冒頭に書いた通りで、現代の風潮をよく表していると思います。

 地鎮祭になると、開催の割合が2/3くらいで、神主さんに来て貰うケースが1/2くらいに変わるでしょうか。

 結論で言うと、開催しなくても全く問題ないと思いますし、有無によって工事の仕上がりが変わることもありません。

 「折角の機会だからしてみたい」と言う方が催されればよいと思います。

 また手土産の件も良く聞かれますが、有り、無しが半々くらいでしょうか。

 これも無くても全く問題ありません。

 「おいでよHouse」のクライアントは準備して下さったのですが、以下の3つを頂きました。

 まずはご家族のお名前が入っているお酒。

 そしてお菓子と赤飯です。

 昔は帰省の度に祖母が作ってくれたので、私は赤飯が大好きです。

 (嫌いな食べ物はこの世に1つも無いのですが)

 月曜日の弁当に入れて貰しましたが、懐かしく、そしてとても美味しく頂きました。

 日本酒を飲む機会も最近はめっきり減りましたが、その日の晩に頂きました。

 石川県の大吟醸でとても飲みやすく、美味しく頂いたのです。

 お酒に関しては、お名前だったり、計画のコンセプトだったり、選ぶことを楽しんでおられたクライアントが多かったように思います。

 選ぶのが楽しいと思えば準備して貰えば良いですし、極端に言えば米菓子だけ、「ぱりんこ」だけでも全く問題ないと思います。

 建築は土地に根差したものですし、日本においてのはやはり「お米」に関するものが間違いなさそうです。

 本来は、奥さんのお母さまが見えられる予定でしたが、大阪がこの状況なのでキャンセルとなってしまいました。

 コンセプトの通り、完成したならまずはご親族に遊びに来て貰えればと思うのです。

 文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐5‐プランを上から眺めてみよう

 近代建築の三大巨匠のひとり、ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」と言いました。

 住むという機能を満たす機械であるという意味です。

 快適に住むための機能は多々ありますが、光と風をいかに取り込むかは、最大の課題と言っても良いでしょう。

 旧家であり、敷地が大きなこの計画では、各部屋が全て外部と接するプランを考えました。

 東の中庭にある大楠は、あまりにも成長したため、枝を大きく落としました。

 そこから新芽がでて、更にそれらが紅葉しています。

 若干かわいそうではありますが、あたりがグッと明るくなったのもまた事実なのです。

 コンクリート打ち放しの壁式構造は、なかなかに時間が掛かる構造体です。

 鉄筋を組み、型枠を起し、その中に配管をし、そしてコンクリート打設。

 そこから硬化するまで養生が必要です。

 鉄とコンクリートがそれぞれの短所を補いあう、非常に強い素材で、木造や鉄骨でも基礎として使われます。

 全てが基礎のようなものですから、強いに決まっているのです。

 型枠工事に先駆けて、足場がすでに組まれていました。

 結構高かったのですが、上から見下ろしてみました。

 右手が南となる、H型プランが良く分かります。

 南棟の先には和の庭園が残っています。

 こちらはクライアントのご両親が暮らすエリア。

 この庭は緩衝帯にもなっているのです。

 「機械」という言葉の解釈は色々あります。

 「機械的に」という言葉には、淡々と無感情でといったニユアンスが強いでしょうか。

 しかし、コルビジュエが言ったのは「目的に向かって真っすぐに」と言ったニュアンスではないかと思っています。

 この計画は、方向性がなかなか定まりませんでした。

 「2階建て新築」→「前棟リノベーション」→「平屋新築」と実際に3度企画提案をしています。

 それぞれ、与えられた条件での中で「目的に向かって真っすぐに」と考えれば、どの提案にも迷いはありませんでした。

 ただ、恵まれた敷地条件を最も活かせるのは「平屋新築」だとも思っていましたし、高い足場から見下ろしてそう確信しました。

 水は高い所から低い所に流れるように、最後には行くべきところに行くのだと思っています。

 建築に、誘導や焦りは禁物なのです。

文責:守谷 昌紀

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