「山の手の家」-2-解体調査

 先週の前半、概ね解体が終わったと、監督から連絡がありました。

 木曜日の午前中はクライアントと打合せをして、昼から現場に行くことに。打合せの際、奥さんから「一番高い所に『福の神』のようなのが飾られていました」と聞いていました。

 確かにありました。増築側の新しい棟のところに。

 この地域の風習なのでしょうか。

 クライアントも家族で見に来たとの事で、何とも幸せな気分になりました。

 これは残しておくことにしたのです。

 閑静な住宅街にある一戸建てにつき、解体作業も慎重です。

 私はずっと現場に居る訳ではありませんが、片付けの、職人の身のこなしを見ていれば、大方の仕事は想像できます。

 丁寧に解体されていました。

 古い棟の屋根下地がバラ板だった他は、想像以上ダメージを受けているところは無く、一安心しました。

 改修の仕事は構造体の躯体調査が全てなのです。

 1階のLDKは、その広さと、南の庭に面する環境が素晴らしいのです。
 
 午前中の打合せで、キッチンの仕様も確定しました。

 大きなアイランドキッチンに立ち、ダイニング、リビングを見渡すその景色は。

 きっと素晴らしいものになるはず。

文責:守谷 昌紀

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ビフォーアフター「住之江の元長屋」-1-エピローグ

 先週になりますが、「住之江の元長屋」4ヵ月点検に行ってきました。

 『大改造!!劇的ビフォーアフター』から依頼を受けた改修の仕事です。点検は1ヵ月後あたりが多いのですが、撮影の関係で終盤バタバタしたこともあり、少し先目にしていたのです。

 現場公開が無かったので「現場日記」の1回目がエピローグという稀なケースになりました。

 番組内でも紹介されましたが、クライアントは2人の姉妹でした。

 8人の兄弟が両親と共に暮らしたこの家を、何とか守りたいというのが、番組へ申し込んだ一番の動機だったのです。

 築74年の家は元6軒長屋の中央部で、両隣は切り取られて5階建てのマンションが建っていました。

 当然のごとく日当たりはかなり悪く、家族が増えるたびに増改築されていた家は「天井から雨が降る家」の通り、雨漏りというレベルを超え、相当な量の水が屋内に流れ落ちていました。

 それまで修理し続けてくれた大工さんも高齢となり、屋根屋さんも「もう手におえない」と言い、相談するところが無くなり、番組へ応募したのです。

 バルコニーからの雨漏りを少しでも減らす為、沢山のタライ並べる姿は、コミカルにさえ見えましたが、もちろん真剣に考えた末の行動なのです。

 会った時はいつも笑顔でしたが「以前は大雨が降った時には泣いていたんです」と聞きました。雨が漏らない、頑丈だという事が、家にとってどれ程大切な事かが分ります。

 それらは全て改善する。更に、何とかそこに、小さくても良いから自然を届けたい、というのがこの改修のメインコンセプトになりました。

 多くの友人が見せて欲しいと訪れたそうですが「皆ここで記念写真を撮って帰るんです」と。私達も撮ってみました。

 求め、求められる関係の中で仕事を出来た時、この設計事務所は存在して良いのだと思えます。それこそが、最高の報酬だと分るのです。全く制約が無かった訳ではありませんが、改めて引き受けて良かったと思います。

 放送後、多かった質問に「あれが改修なの」というものがありました。

 柱、梁などの主要構造部の1/2以上を利用しているので、法的根拠もある紛れもない改修です。

文責:守谷 昌紀

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