2017年の6月、「新築、リノベーションの両方を考えている」という相談を貰った。
大阪府内の旧家で、門や蔵等が残っている。
正門は戦前からのもので、背の低い舞良戸が昭和初期の佇まいを残している。
南から正門をくぐると、石畳が北へと誘う。
すると、仏間と呼ばれている棟に突き当たる。
南北に縁側をもつ古き良き日本家屋で、この棟をフルリノベーションするという案もあった。
他の棟も調査し、かなり大規模なリノベーションの提案となったのだ。
軒の深い建物は外と内のつながりが何とも穏やかだ。
良いものになると確信していたが、紆余曲折あって仏間棟を取り壊し、新築することになった。
コンクリート打放しの平屋を建てるという選択肢に行きついたのだ。
少し視点を下げると、蔵に挟まれた門の奥に配置されているのが分かって貰えるだろうか。
深い軒は踏襲する事にした。
特徴は、広い敷地を活かした「H型プラン」だが、この配置なら全ての部屋に光と風が過不足なく届く。
北棟には水廻りや来客スペースを集めた。
南棟は、広い南の庭につながるプラベート空間が3つ並んでいる。
左右に主寝室と子供部屋。中央にLDKという配置だ。
アプローチは北側からで、エントランス前まで車で寄り付けるよう考えている。
旧家と言われるご家族の住宅を何件か設計させて貰った。
大きく意識が違うと感じるのが「住み継ぐ」という考えだ。
曽祖父が豪農だった。祖父が商いで成功した。経緯はそれぞれだが、財を成した先祖へ対する敬意と土地に対する愛着が非常に大きい。
「大きな敷地で羨ましい」というのが、私も含めた庶民の率直な気持ちだが、受け継ぎ、引き継ぐという重圧はかなり大きなものだと感じる。
ここで暮らすのはご夫妻と小さなお子さんだが、彼も含めて、二代、三代と「住み継ぎたい」と思って貰えるようなものを目指した。
解体工事や補修工事もかなりある。竣工は年末か年始あたりだろうか。
安藤忠雄によって広く認知されたコンクリート打放しだが、日本建築の財産でもある。
環境と共に生きる、美しく、幸せな打ち放しの家を必ず実現させたいと思う。
文責:守谷 昌紀
■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に
巻頭インタビューが掲載されました
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