「どこにもない箱」の家‐3‐階段を愛することから始めよう

 暑かった8月も今日で終わり。

 帰宅時に聞く虫の音は、秋の気配も感じさせます。

 まだまだ暑いのが現場ですが、階段の下地がほぼ出来上がりました。

 初期相談に来られる際、自らが描いたプランを持参される方も多々おられます。

 勿論ウェルカムですが、私が描いたプランと大きさが最も違うのが階段です。

 階段は通路なので、出来るかぎり省スペースとしたいという心理が働くからでしょう。

 実際は重要な縦動線なので省くことはできませんし、人間工学上、昇り降りしやすい蹴上と踏み面の寸法は範囲があります。

 ある程度のセオリーがあるのです。

 人も同じですが、嫌ってしまうとその良さは見えてきません。

 まずは、階段を愛することから始めましょうという感じなのです。

 高い位置から光を落とせることは、階段をポジティブに捉える可能性を広げてくれると思います。

 こちらの階段は、8から12段目でぐるっと回り、更に2段ので2階へ昇りきります。

 11段目の蹴込板が、玄関扉を開いたすぐ上にあるのが見てとれるでしょうか。

 もし、10段しか昇れていなかったなら、扉の上部があたってしまうので、平面的、断面的にまさにこの階段しかなかったのです。

 この階段、実は初めての試みで5段で180度を回り切っています。

 45度の4段で回り切れれば良いのですがそれでは段数が足りず。

 また30度の6段にすると、せせこましくなってしまいます。

 30度、45度の複合案もありますが、36度の5段で回り切ることにしました。

 職人不足の建築業界でも、部材はどんどんユニットされる傾向にあります。

 階段も同じで、滅多に使われない36度の5分割ユニットはありません。

 熟練の大工がいなければ実現できない形状なのです。

 5つ割りを使わなければいけない場面かならずあるだろうと思い、10年程前からイメージをつくっていました。

 何度も歩いて確認しましたが、とてもリズムよく昇り降りしやすい階段でした。設計者の私が言うのも何ですが。

 2階建て以上の建物なら、どこにでもあるのが階段ですが、それをより機能的に、より美しく仕上げるのが建築の醍醐味なのです。

 日本は奇数を尊ぶ文化です。

 半分を繰り返す偶数より、割り切れない奇数の方が私も好きです。

 そこには何かしらの意思があるからだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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「どこにもない箱」の家‐2‐どこにもない経験を

 先週はじめ、梨が届きました。

 「千葉の家」のクライアントからでした。

 猫の手も借りたいというところで、夏休み中は娘の手を借りています。

 オープンデスクに参加している学生と並んで仕事中。

 スイッチ、コンセントの型紙を切ったり、CAD上で色を塗ったりと、出来ることが色々あります。

 コーヒーブレイクの際に、皆で頂き物の梨を食べました。

 日本一美味しいので、日本一のご褒美です。

 学生は北陸の大学に通っており、研修期間中はホテルを借りて大阪に滞在しています。

 よって、やる気は十分。

 「どこにもない箱」の大空間に感激していました。

 電気等の配線は壁を張る前の施工です。よって、この状態で位置を決めなければなりません。

 娘が切っている型紙は、壁に貼っての位置確認をするためのもの。

 CG、3Dの時代ですが、実物に勝るものはないのです。

 オープンデスク、インターンシップの申込がこの夏も何件かありました。

 一通、友達に送るようなメールだったので、即刻不合格にしました。

 無報酬でも不合格になった意味を、よく考えて貰いたいと思います。

 大人を、仕事を、どんな理由でこれだけ軽視できるのか。

 はっきり言っておきます。

 「仕事をなめるな」と。

 しかし、同じ学生でも本当に様々です。

 本気で取り組んでくれるなら、どこにもない体験をさせてあげることができます。

 そして、忘れられない夏となるはずです。

文責:守谷 昌紀

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室内の縁に人が集う「平野西の家」‐1‐人は食べるし、住むし、着る

 現在進行中の現場はいくつかありますが、クライアントが「現場日記はちょっと……」とのことで。

 現場日記が全くないのも寂しいので、当社の入る「平野西の家」のことを書いてみます。

 2004年の完成なので14年が経ちました。

 前の駐車場は、道路から閉じれるようになっていますが、これは弟からのリクエストでした。

 ただ閉じるだけなら、シャッターが手っ取り早いのですが、一部に門扉を設けたなら、その間に柱が必要になってきます。

 敷地の間口は5.4mで、門扉をつければ有効開口は4mが精一杯だと思います。

 それで散々考えたのが、この形状です。

 12枚建ての折戸は、右にある門扉の後ろにスライドして、収納できるようになっているのです。

 12枚の折戸を右端に移動し、パタンパタント折り畳んで行きます。

 全てをパネル後ろに移動し、さらに門扉を開ききったのがこの状態。

 開口部は4.8mで、何とか2台の車が駐車できるのです。

 背の高い車にジェットバックを装着しても問題ない高さ、2.6mも確保しています。

 収納された折戸前のパネル部には、電気メーター、ガスメーターが納められ、それをのぞく窓も3つ見えています。

 下に2つ並んだポストまであり、多くの機能が集中しており、最も繊細に考えた部分なのです。

 この大きな門扉が、昨年の夏あたりから折戸に少し干渉するようになってきました。

 アルミなので、この暑さで、想定以上に膨張しているようなのです。その証拠に、朝夕は当たりません。

 職人が調整しにきてくれました。

 独特の金物を使って、ギュッギュッと少しずつ力を加えていきます。

 こんな仕事に教科書など当然ないので、全ては感覚と経験です。

 見事に当たらないよう調整され、さらに2mm程の余裕もできました。

 一緒に見ていると、したたるように汗が出てきます。しかし、終日現場に建つ職人のことを考えると、間違っても暑いなどとは言えません。

 先日、建築会社の社長と話しをしていました。

 「人手不足で大きな会社に人は行ってしまって、うちみたいな小さな会社まで人は来てくれません」というようなことを言っていました。

 更に、この先もどんどん厳しくなって行くと思いますとも。

 「流通やシステムを構築した人が偉いという世の中だけど、実際に食べるトマトが無ければ流通に意味はないものね」

 「どんなに時代が変わっても、人は食べるし、住むし、着るので、物を扱う、物とつくる仕事をもっとリスペクトして貰える時代が必ずやってくると思うよ」と伝えました。

 これは本心です。情報や手段は大切ですが、人は生身の体をもっています。

 汗を流し、「モノ」を扱う仕事にもっと注目せざるを得ない時代が必ずやってくると思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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