暑かった8月も今日で終わり。
帰宅時に聞く虫の音は、秋の気配も感じさせます。
まだまだ暑いのが現場ですが、階段の下地がほぼ出来上がりました。
初期相談に来られる際、自らが描いたプランを持参される方も多々おられます。
勿論ウェルカムですが、私が描いたプランと大きさが最も違うのが階段です。
階段は通路なので、出来るかぎり省スペースとしたいという心理が働くからでしょう。
実際は重要な縦動線なので省くことはできませんし、人間工学上、昇り降りしやすい蹴上と踏み面の寸法は範囲があります。
ある程度のセオリーがあるのです。
人も同じですが、嫌ってしまうとその良さは見えてきません。
まずは、階段を愛することから始めましょうという感じなのです。
高い位置から光を落とせることは、階段をポジティブに捉える可能性を広げてくれると思います。
こちらの階段は、8から12段目でぐるっと回り、更に2段ので2階へ昇りきります。
11段目の蹴込板が、玄関扉を開いたすぐ上にあるのが見てとれるでしょうか。
もし、10段しか昇れていなかったなら、扉の上部があたってしまうので、平面的、断面的にまさにこの階段しかなかったのです。
この階段、実は初めての試みで5段で180度を回り切っています。
45度の4段で回り切れれば良いのですがそれでは段数が足りず。
また30度の6段にすると、せせこましくなってしまいます。
30度、45度の複合案もありますが、36度の5段で回り切ることにしました。
職人不足の建築業界でも、部材はどんどんユニットされる傾向にあります。
階段も同じで、滅多に使われない36度の5分割ユニットはありません。
熟練の大工がいなければ実現できない形状なのです。
5つ割りを使わなければいけない場面かならずあるだろうと思い、10年程前からイメージをつくっていました。
何度も歩いて確認しましたが、とてもリズムよく昇り降りしやすい階段でした。設計者の私が言うのも何ですが。
2階建て以上の建物なら、どこにでもあるのが階段ですが、それをより機能的に、より美しく仕上げるのが建築の醍醐味なのです。
日本は奇数を尊ぶ文化です。
半分を繰り返す偶数より、割り切れない奇数の方が私も好きです。
そこには何かしらの意思があるからだと思っているのです。
文責:守谷 昌紀
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