「住吉区歯科医師会館」‐6‐くちばし現る

 明日からはゴールデンウィークが始まります。

 令和を迎えることもあり世は10連休。告知としては当社もそうしていますが、流石にそこまでは……

 それでも4連休×2の8日間は、過去最長タイでしょうか。

 5月中旬の引き渡しに向けて、「住吉区歯科医師会館」のくちばしがついに現れました。

 玄関回りの塗装はまだですが、足場がほぼなくなり、この建物のフォルムがよく分かります。

 現場と相談して決めたディティールに間違いはないはずです。

 1階の大会議室も仕上げ工事がほぼ終わりました。

 作家の画が飾られるくぼみも仕上がっています。後は作品の設置を待つだけなのです。

 絵画のかかる壁は東面ですが、低い位置に3つ開口があります。

 向かいにある西面の壁では最上部に開口を切りました。

 入口側を振り返るとその高低差が分かりやすいでしょうか。

 昼時に行ったので、職人の皆さんは食事中。失礼して声を掛けると「風がよく流れて気持ちいいね」と。

 高低差のある窓は、積極的に採用してきた手法です。

 2階の廊下においても同じ。

 西面は高い位置にあり、事務室の室内窓を介して光庭へ風が抜けて行きます。

 光庭の先にある東面の外壁も、低い位置に開口を切ってあるのです。

 西面の建物が3階建てなので、その間にある路地で冷やされた風が期待できるので、夏はかなり気持ちよいはずです。

 AI時代ですが、それらの力を借りずとも、空間はよくなると思っています。

 そこまでAIを敵視しなくてもよいのですが、電気もいらず、人工知能がなくとも、自然や環境と真摯に向かい合えば、建築は更に良くなるはずなのです。

 エネルギーが要らないということは、お金も要りません。

 財布にも優しいのですから、少しくらいは言わせて貰ってもよいのかなと。

文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐2‐小さなトップライト2つ

 暑い、熱い4月後半になりました。

 現場では、型枠大工が3名。

 汗を流しながら基礎の立ち上がり部を組み上げています。

 親方は50歳中頃でしょうか。

 若者2人を含めて3名のチームですが、1人はもしかすると10代かもしれません。

 若者の現場離れが進む中、1人でも居てくれると嬉しいですし、一声掛けたくなります。

 「是非またウチの現場にきてよ」と伝えました。

 当然ですが、建物は地面に近いところからでき上がって行きます。

 スポーツでも足腰が大切なように、基礎がしっかりしていなければ、地震に耐えられるはずもありません。

 整理整頓がされた現場に、悪い仕事があることはないのです。

 基礎を見れば、敷地一杯だということと、細かい間仕切壁が沢山あることが分かります。

 クリニックという性格上、多くの機能=部屋が必要になってくるのです。

 その中でも、中枢部であり、かつ司令塔となるのが診察室です。

 経験上ですが、院長は自らの診察に適した空間の大きさをよく把握しています。

 かなりの時間をこの空間で働くので、少し大きめの、ゆったりとした空間を提案するのですが、ジャストサイズを指示して貰うことが殆ど。

 人気のクリニックなら、ナースがテキパキと動いている姿を思い浮かべることが出来ると思います。

 無用に大きい空間では、動きに無駄がでてしまい、診察の質が落ちてしまいかねないのです。

 その空間を少しでも快適にしたいと思い、ある提案をしてみました。

 反対に、待合室はゆったりと大きく確保しています。

 南面のもっともよいエリアを贅沢に使い、吹抜けとしました。

 高い位置にある正面のルーバー越しに、かつ側面から、柔らかい光を取り込むことに注力しています。

 2つある診察室には、小さなトップライトを提案しました。

 模型を俯瞰した写真が分かりやすいでしょうか。

 様々な患者さんが来院するので、明るすぎるのも問題となりえます。

 よって、その光を止めれるような機能を持たせ、望遠鏡のような長いストロークをとりました。

 これによって、より間接光に近いものとなるのです。

 地域の皆さんに長く愛される医院を目指します。

 その為にはここで働く皆さんに、この建物、この空間を好きになって貰わなければなりません。

 そんな大それたことが出来るのかは分かりません。

 それでも目指さなければ、現実となることはないはずです。

 この小さなトップライト2つに、創り手としての気持ちを込めたつもりなのです。

文責:守谷 昌紀

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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐3‐屋根が主役

 昨年の北摂エリアは、地震、豪雨、に台風と厳しい天災が続きました。

 こちらのお家も震災で棟瓦が少しずれ、知り合いの建築会社がブルーシートを掛けてくれたそうです。

 瓦屋根は、葺き替えがしやすく、自然に優しい材でもあります。

 問題が起った部分だけをやり替えれば良い点は、他の材に無い特徴と言えます。

 一昔前なら、少し器用な人は、自分でメンテナンスしていたでしょう。

 焼き物である重さは、台風に対しては優れていますが、地震に対して優れているとは言い難いのが一番の課題でしょうか。

 近くに見える古い民家は、鋼板屋根に変わっていますが、茅葺きの上を覆ったのではと想像します。

 この勾配で瓦で葺くことはほぼないからです。

 この計画でも、瓦屋根を葺き替えるかは、最後の最後までクライアントも悩んでいました。

 コスト面が大きかったのですが、最終的に葺き替えという方向に決まりました。

 2階には屋根上に敷く断熱材が準備されています。

 断熱材の上に通気層をとるのですが、雨を止めると共に、断熱も屋根まわりに求められる重要な機能です。

 長らく大屋根を支えてきた棟束には「への六棟」とあるのでしょうか。

 昔の大工は、通りを「いろはにほへと」で表しました。

 重い瓦屋根を支えてきた丸太の小屋梁です。

 水平に墨が打たれており「三寸上り」とあります。

 建築において、水平、垂直が常に基本となるのです。

 瓦の撤去中で、バラ板の隙間から光が差しています。

 ブルーシートを透過した青い光をステンドグラスのようと言えば過ぎるでしょうか。

 しかし、この強い光を止めるのも屋根の役割なのです。

 解体撤去が進む中、鬼瓦が置いてありました。監督も「立派なので捨てにくかったのでは」と。

 折角葺き替えをさせて貰うことになったので、安全、断熱、遮熱、そして美しさを備えた屋根にしたいと思います。

 雨、風、光を最前線で食い止めているのが屋根です。

 この計画に置いては、ロケーションも含めて、屋根が主役になりえると思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐1‐プロローグ

 南大阪の幹線道路北側に「Uクリニック」の計画地はある。

 間口は15m程あり、日当たりもよい。

 前面道路はひっきりなしに車が往来し、駅が近いこともあって、自転車、歩行者も多い。大変に活気のある通りだ。

 3月末、土地の掘削から工事がスタートした。

 この地に木造2階建ての、クリニックを新築するのだが、本クリニックは脳神経外科・内科が標榜されている。

 院長はドイツ留学などを経て、その職能を研鑽してきた。脳に対しての高い専門性が一番の特徴である。

 設備においての特徴は、CT、レントゲン等とともに、最新鋭のMRIを備えていることだ。

 MRIは、磁石による強い磁波と電波を使って、体の断面映像を撮影するので、被ばくがなく体に優しい医療機器なのである。

 最新鋭の医療機器を導入するために、キュービクルという小さな変電所も敷地内に設ける必要がある。

 建物のコンセプトは回を改めようと思ったのは、現場を視察したからだ。

 良い診療をするためには、最先端の医療機器も必要だし、広い待合も欲しい。

 法が許容する最大の建物を計画することになり、工事車両を止める余白もない。

 しかし、建物西側にはキュービクル置場がある。

 それもギリギリで計画したのだが、職人はここに工事車両を停めるという。

 後輪の半分は、空中を通過しながらも見事に納まった。

 これも日々の研鑽の成果と言える。

 西も北も境界ギリギリ。

 東の奥もギリギリ。

 道路側もギリギリ。

 何もかもギリギリだが、数センチの精度で、ユンボを操る様を見るのはとても楽しい。

 実業の誇らしさを感じる瞬間だ。

 昨年だったか、ある映画監督がITを「虚業」と表現した。それに対し、ITの寵児が牙をむいたというニュースがあった。

 表現の自由は常にあるが、他者を非難する必要はない。ただ、気持ちとしては理解できる。

 この不器用な男たちの力仕事と技術なくして、建築という実業はなりたたないのだ。

 どんなクリニックとするのか?

 ここまでに院長とは20回程の打合せを重ねたが、コンパスは同じ方向を指していると確信している。

 その成果をこの秋に収穫するつもりである。

文責:守谷 昌紀

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朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐2‐春の思い出

 元号の発表もあり、新年度がスタートしました。

 庭木も花をつけ、現場へ向かう道中を楽しませてくれます。

 建築の集合体が街とするなら、良い家を創ることは街へ貢献することにもなるはず。

 どの仕事もそうですが、遣り甲斐はおつりがくるほどあるのです。

 内部の手バラシがほぼ終わりました。

 この建物は築30年と、フルリノベーションの中では比較的新しいほうでしょうか。

 基礎のひび割れもなく、床下も乾燥。状態は良好です。

 浴室は水気が多いので、痛んでいることもありますが、それも問題なさそう。

 こちらの建物は、宮大工が1年程掛けて建てたと教えて貰いました。

 今は亡きクライアントのお父様の知人だったそうですが、構造体はしっかりしています。

 2階の床版がないこの状態は、高い位置からの光が1階まで落ちてきます。

 教会の高窓のような光が差し、空間をドラマチックに演出するのです。

 流石に、2階床版の全部を無くす訳にはいきませんが、1箇所、2階と通じるようにしたいと考えています。

 宮大工が担当しただけあり、下屋の屋根組は極めて複雑。

 この部分をバルコニーにしようと考えており、このあたりは、監督、棟梁の腕のみせどころなのです。

 棟木には御幣がとめられていました。

 周辺は田んぼですが、まだ何も植わっていません。

 下草が生えだし、のどかな景色が広がります。

 私と同年代のクライアントが「写真と言えば、あの辺で撮ったものばかりだったな」と。

 間もなく田植えが始まるはずで、秋までは下に降りられないと思います。

 冬になれば切り株と土ばかりで絵にならないでしょう。

 そう考えれば、この時期の写真だったのかなと想像するのです。

 記憶は景色と共に残ります。誰かの人生の背景をつくっていると考えれば、やはり責任は重大です。

 新芽の匂いとともに、誰にも春の思い出があります。

 その背景を、少しでも美しく彩ってみたいと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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