松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐6‐プロユーズ

 吉田兼好は徒然草の中で「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」と書きました。

 鎌倉時代でさえそうなのですから、温暖化の進む現在ではなおさらです。

 1階の待合には、断熱材が搬入されていました。

 これでこのクリニック1軒分とのこと。

 屋根面にはスタイロフォームも敷設され、二重で断熱層が構成されています。

 2階部分はバックヤードなので、居住空間のようなもの。兼好法師もOKをだしてくれるでしょう。

 現場には屋根があるとは言え、皆汗だくで働いています。

 ファン付きの作業着を着ている職人も増えました。

 風が常にドライな空気を供給することで、蒸発を促進します。

 気化熱が奪われることによって体温を下げてくれるのです。

 床下を乾燥させるために、こんなファンも導入されていました。

 乾燥した所では、菌なども増殖しにくいので、「風≒清潔」と私は考えています。

 プロユーズの道具はタフで格好がよいものですが、マキタの現場用ラジオはその典型でしょう。

 ここまで頑丈である必要があるのか分かりませんが「これなら忘れて帰らないでしょう?」と大工が笑っていました。

 釘を打つガンです。

 円形の部分に釘が入っています。

 コンプレッサーで圧縮した空気の力で打ち付けられるのですが、いつからこれらが主流になったのでしょう。

 腰に付けた道具袋は、クギ袋と言うそう。

 昔はクギしか入ってなかったのでそう言うそうですが、大学時代に現場手伝いに行っていた頃は、間違いなくこちらでした。

 ガラスを運ぶときに、足下にあったクギ箱を足で動かして、大工に随分怒られたので、よく覚えているのです。

 道具は機能を追求したものなので、やはりプロユーズが一番です。

 現場のネットにはセミが張り付いていました。

 いよいよ夏本番です。

 今年の夏も、暑い夏になりそうです。色々な意味で。

文責:守谷 昌紀

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大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
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松原/脳神経外科「うえだクリニック」‐5‐あなたもよくなれ、わたしもよくなれ

 今日は夏を思わせる日差しでした。

 現うえだクリニックから松原警察署へ抜ける長尾街道は、つねに混雑しています。

 活気がある素晴らしい通りと一度書きました。

 クリニック前には多くの自転車が停まっていましたが、地域の皆さんが求めてくれるのには勿論のこと理由があるはずです。

 入口に「新クリニックオープンは9月24日」と張り紙もでていました。

 現場の方も更にギアを上げていかなければなりません。

 屋根の防水工事が終わり、壁の補強工事が進んでいます。

 吹抜けとなっている待合には、足場が組まれていました。

 反対を見ると受付があります。

 このスペースは私が今まで設計してきたクリニックに比べても、かなり大きい方です。

 私は「もう少しコンパクトにしても大丈夫だと思いますよ」と伝えたことがあります。

 しかし、ここはゆったりした空間を確保してあげたいという院長の希望でした。

 反対に診察室は現クリニックより、少し広ければ十分とのこと。

 私としては天井を上げ、トップライトを取り入れることを提案させて貰いました。

 写真の右上の部分から光が落ちてくることになりますが、この空間も楽しみにしています。

 受付の奥にはスタッフ用の動線があります。

 まだ階段はありませんが、階段を上りこの廊下の突き当りがスタッフの更衣室。

 左に曲がると、吹抜けの背面に廊下があります。

 この廊下に面して、キッチン、スタッフルームなどが並んでいるのです。

 現クリニックは、これらのスペースがかなり小さく、院長は何とかしてあげたいと思っていました。

 これらも、クリニックを新築する大きな動機になっているのです。

 この空間にはトレッドミルが置かれる予定。

 ジムにあるランニングマシンと言った方が分かりよいかもしれません。脱衣室、シャワー室も備えています。

 院長はかなり本気のアスリートで、ここでトレーニングをするのですが、スタッフの中にも、昼休憩にジョギングをする方が居られるそう。

 類は友を呼ぶと言いますが、これほど健康的なクリニックはそうは無いかもしれません。

 現場を回っていたら、棟梁がアイスコーヒーを買ってきてくれました。

 最近のコンビニコーヒーの美味しさには驚かされますが、その気持ちが何より嬉しのです。

 監督、棟梁と少し打合せをしてから会社に戻りました。

 衣食足りて礼節を知ると言いますが、よい診療をするためには、やはりスタッフにも働きやすい環境を提供しなければなりません。

 この点が、クリニックを設計する際には特に大切だと考えています。患者さん一番と言うは簡単ですが、それができる理由が必要だと思うからです。

 相手を幸せにするだけで十分という、仏のような人も居るでしょうが、生身の人間は中々そうはいきません。

 しかし、相手を幸せすれば、確実に自分も幸せになります。

 これは尊敬する始道塾塾長の恩田さんに教えて貰った考え方です。

 「あなたもよくなれ、わたしもよくくなれ、みんなよくなれ」なのです。

文責:守谷 昌紀

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