「高台の家 RC打放しの家」‐8‐答え合わせ

 ようやく足場がとれました。

 初めて建物の全容を見る時、緊張もありますが、やはり心躍ります。

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 西側道路を下りながら、全体を確認。

 敷地を読み解けていたのか。自分達の提案は正しかったのか。答え合わせをするような感覚でしょうか。

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 季節によって、太陽高度、日の出、日の入りの位置は正確に分かります。

 冬は取り込み、夏はそれらをいかに防ぐか。

 代わらぬテーマですが、この家は内外コンクイリート打放しの為、特にそれらが需要だと考えました。

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 正面の西側は閉じ、メインの空間は南に開いています。

 1階はダイニングキッチン。

 キッチン設置の前ですが、床材が貼られ、空間の雰囲気が出来上がってきました。

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 2階はP室と呼ぶ部屋。こちらは広いバルコニーと、深い庇に囲まれています。

 P室の「P」に深い意味はありません。空を見上げたり、雨を眺めたりする、余白の部屋なのです。

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 バルコニーのコーナーには開口を切ってあります。

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 南の隣家を気にせず、南東に広がる大阪平野を見下ろす為のものですが、 紅葉した桜が、季節を視覚で感じさせてくれるのです。

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 この敷地は、東にも道路がありますが、4mの高低差があります。

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 クライアントは坂のある街を探し、この土地を選びました。住まい手が求める景色、風景とは。

 それらを感じ、実現する為に、設計という仕事があるはずです。

 「本当にかっこいいですね」と何度も言ってもらいました。私もそう思います。

 残すは外構工事のみ。建物外の部分でありながら、街に一番近いのが外構工事。最後の総仕上げとも言えます。

 建築とは、クライアントとの共同作業です。思いのずれがなければ、失敗はないはずです。

文責:守谷 昌紀

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「阿倍野の長屋」‐11‐写真撮影そしてエピローグ

 11月3日は文化の日。「阿倍野の長屋」の写真撮影でした。

 前日は久し振りの雨でしたが、雲1つない青空が広がりました。

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 とは言え、天気はきまぐれ。

 撮影は早目、早目が鉄則です。

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 屋根上にある月見台から、北に望むあべのハルカス。

 晴れと曇りでは、全く違う景色になります。撮影の時ほど、晴れが嬉しい日はありません。

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 月見台から光庭を降りていくと、ダイニングにつながります。

 この計画は、四軒長屋の中央二軒のリノベーション。この部分は屋内でした。

 ここを減築し、光と風を取り込こむという提案をしたのです。

 これを面白がってくれるクライアントと、それにトライしようという施工会社がなければ、実現することはありませんでした。

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 もと界壁だった壁にも開口をあけ、ロフト部にある子供部屋とLDKが繋がります。

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 撮影の間、人物無しのカットを撮る際は、ここで待機して貰います。

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 それらを繋ぐクライミングウォールは、夫妻の友人も時々登るそう。

 それより、玩具が広がっても気にならない。かつ目は届くロフトを、お母さん友達は評価してくれるとのことでした。

 「こうしておけば良かった、というところは無いんです」と言って貰いました。

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 人物ありのカットは、調理から食事までの撮影です。

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 写真なのにという事無かれ。

 演技ではなく、本当であることが大事なのです。

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 作っている間にお腹一杯になってしまうかもしれませんが。

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 「子供に手伝って貰ってもいいですか」というのは、奥さんのアイデアでした。

 こちらのご家族は、暮らしを楽しもうという気持ちがよく伝わってくるのです。

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 一緒に住む、ご主人のお母さんにも入っていただき、食事の風景も撮影しました。

 これで午前の部は終了。

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 日没後、更に夕景を2カット撮り、この日の撮影は終了しました。

 写真が上がってくるのは3週間後。楽しみですが、間違いのない出来だと確信しています。

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 昼食のおにぎりの上に乗っていた海苔は、恐竜の形をしていました。福井の恐竜博物館で買った、抜き型だそうです。

 計画のスタートは2013年の秋。

 鍼灸整骨院を経営する忙しい中、夜の打合せがほとんどで、お子さんのお弁当を持って来られた事がありました。

 その海苔も、このような抜き型だったのだと分りました。

 暮らしを楽しむ。人生を楽しむ。それは、何かが無ければ出来ないものではありません。

 物創りを生業としている私が言うのも変ですが、物がなくても意思があれば十分だと思うのです。

 「今まではあまり友人を呼ぶことが無かったのですが、4家族までは行けますよ」という言葉に、自分達の存在価値を見出すのですが。

 日々の暮らしに、ささやかな喜びを付加できたらなら。それが私達の仕事です。
 
 この撮影で計画はひと区切りです。ここまで要した時間は2年。振り返ってみればあっと言う間でした。

 次回はおそらくメディアの取材時だと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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■12月12日(土) 2:00pm~4:00pm 天六・住まいの情報センター5Fにて セミナー開催「○○と一緒に暮らす」

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「頑張れる家(イタウバハウス)」-23-5年が過ぎ

 先週ですが、イタウバハウスへ行ってきました。

 僅かに色づいたジューンベリーも、ゆっくりと成長していました。

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 ご主人が施工したイタウバのルーバーは、竣工当時は鮮やかな茶色でした。

 紫外線によって、木は白けてきます。ご主人は、木の屋外遊具等を製作する施工会社の方で、堅木の特性を熟知しています。

 自然の変化を受け入れ、見越したデザインにして欲しいという要望だったのです。

 5年が過ぎ、そのコンセプトが正しかったと実感します。

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 共働きで、お子さんは3人。その中で、これだけ綺麗に片付けて貰い、恐縮します。

 ご主人も「これだけ片付いているのは撮影以来かも」と。日々の暮らしこそが、親を鍛えていくのだと実感するのです。

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 夫妻とも、トラックのファンで、キッチン前の家具が追加されていました。

 トラックの人もこれだけ活かして貰ったなら、本望なのでは。

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 今回伺ったのは、施工して貰ったバルコニーのデッキ材に浮きが出ているとのこと。

 施工会社の社長と一緒に見に行ったのですが、少し水がまわっているかもしれないと。後日調査をして貰うことになりました。

 何も無いのが一番ですが、何か無ければ、建ったあとの住宅に入ることさえありません。

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 お子さんは小学4年、小学2年、そして4歳。

 一番下のお子さんは、もうすぐテーブル付きのイスを卒業でしょうか。

 「ここだけは、シールOKにしているんです」とのことでした。

 どこに貼っても良いという自由も方針の一つです。しかし、この家を大切に思っているという両親の気持ちが、子供には伝わるのではとも思います。

 5年過ぎ、その家の個性は変化して行きます。

 メンテナンスフリーを目指しますが、変化する素材ならでは味わいがあるのも、また確かなことなのです。

文責:守谷 昌紀

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