ようやく足場がとれました。
初めて建物の全容を見る時、緊張もありますが、やはり心躍ります。
西側道路を下りながら、全体を確認。
敷地を読み解けていたのか。自分達の提案は正しかったのか。答え合わせをするような感覚でしょうか。
季節によって、太陽高度、日の出、日の入りの位置は正確に分かります。
冬は取り込み、夏はそれらをいかに防ぐか。
代わらぬテーマですが、この家は内外コンクイリート打放しの為、特にそれらが需要だと考えました。
正面の西側は閉じ、メインの空間は南に開いています。
1階はダイニングキッチン。
キッチン設置の前ですが、床材が貼られ、空間の雰囲気が出来上がってきました。
2階はP室と呼ぶ部屋。こちらは広いバルコニーと、深い庇に囲まれています。
P室の「P」に深い意味はありません。空を見上げたり、雨を眺めたりする、余白の部屋なのです。
バルコニーのコーナーには開口を切ってあります。
南の隣家を気にせず、南東に広がる大阪平野を見下ろす為のものですが、 紅葉した桜が、季節を視覚で感じさせてくれるのです。
この敷地は、東にも道路がありますが、4mの高低差があります。
クライアントは坂のある街を探し、この土地を選びました。住まい手が求める景色、風景とは。
それらを感じ、実現する為に、設計という仕事があるはずです。
「本当にかっこいいですね」と何度も言ってもらいました。私もそう思います。
残すは外構工事のみ。建物外の部分でありながら、街に一番近いのが外構工事。最後の総仕上げとも言えます。
建築とは、クライアントとの共同作業です。思いのずれがなければ、失敗はないはずです。
文責:守谷 昌紀