「あちこちでお茶できる家」-1-プロローグ

 当事務所の設計期間は結構長い。

 決して褒められた事ではないが、恥じるほどでもないと考えている。より多くの会話をかわすことが重要だと考えるからだ。

 本計画は2009年の3月にスタートしたが、着工まで2年4ヵ月掛かっている。しかしこれは上記の理由ではない。

 クライアントは、以前から敷地をもっており「子供が小学校に上がるタイミングで引っ越しを」と考えていたのである。

 ご主人の実家は、農家の家系(現在は兼業)。奥さんの実家は太平洋に面した宇和海の漁師。

 共に土間が大きな役割を果たしていたという。この家にも大きな玄関土間が計画された。

 開け放たれた土間、リビング、ダイニング、そして庭。

 家中のあちこちでお茶の出来る家にしようというテーマが出来あがった。

 内部は思い切った色使いの家具でカラフルに彩られた空間がある。

 「あちこちでお茶できる家」竣工は今年の年末。

 真夏にスタートし、今冬完成する。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-11-けらばと破風と鼻隠し

 関東も梅雨が明けて一週間。

 監督からの写真が送られてきました。屋根の下地、野地板が貼られました。

 前回、7月4日の打合せで、結構時間を使ったのが屋根の納まり。

 屋根は雨を建物に入れないのが最大の役割ですが、他にも色々な要素を含んでいます。

 屋根内の空気の流れは大変重要なところ。

 片流れの場合、温かい空気が水上へと移動し排出するのが理想です。

 そのルートをしっかり確保出来れば、屋根の温度上昇は随分抑えられ、エネルギー負荷の軽減につながるのです。

 また屋根の側面部(妻側とも呼びます)付近を「けらば」と呼びます。

 けらばの一番端にある材が「破風」。

 写真で見ると、水下へ向かって貼られている板材です。

 また、それに直交する正面側の板材は「鼻隠し」と言い名前が変わるのです。

 独特の表現が多いのも屋根部の特徴で、それだけ大切な証拠とも言えるのです。

 一見すると「けらば」部分からの通気は無さそうに見えます。

 この箇所は綿密に打ち合わせし、通気ルートを確保しています。

 「鼻隠し」部分も同様に、出来るだけ無駄は省くという考え方で、細部を構成していきます。

 それが、軽やかで説得力ある表現を生むと考えるからです。

 現場監理という仕事を説明するのは意外に難しいのですが、このような打合せを、監督や職人としているのです。

 簡単に言えば、図面が現実に変わる最後のチェック。

 決断の時なのです。

文責:守谷 昌紀

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「四丁目の家」-10-棟上げ、東京の下町にて

 日曜日は朝一番の新幹線で東京駅へ。

 そのまま地下鉄に乗り換え、現場へ向かいました。

 詳細な模型も作りますが、実際の構造体を見るのは初めて。

 私にとってもファーストコンタクトです。

 まずの印象は「大きい」です。

 前日が建て方だったので、大きな木槌が残っていました。

 2階にも上がってきました。

 休日、人のいないの現場に入るのは、最高に気分がいいのです。
 
 南側は間口いっぱいの一室空間。

 数字以上の広さを確信しました。

 「布団は、バルコニーに思いきり広げて干したい!」が奥さんの要望。

 木造なので、どれだけ張り出せるかと、屋根の形状には特に注意しました。

 現場を見た後、近くにあるクライアントの自宅で打合せ。

 都内のマンションなので、ある程度の狭さをイメージしていたのですが、1階で庭付きなのです。

 しかも広い。

 奥の菜園は奥さんのお父さん作。

 「四丁目の家」では1階に住まれます。

 今は、キュウリ、ナスの季節。

 トマトもそろそろ赤くなり始めていました。

 何とか、鳥や小動物に食べて貰おうと、美味しくなろうと野菜は進化してきました。

 少しでも離れた所に、糞の中にある種が運ばれるとその種は繁栄します。

 自分では動けない分、植物はとても純粋と言えるのです。

 建築も同じく動けないもの。

 動けない、変われないからこそ、特にに純粋であらねばならないと思うのです。

 何に対して純粋か。それは、住まい手の幸せ。
 
文責:守谷 昌紀

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