「頑張れる家(イタウバハウス)」-1-プロローグ

 初めてクラアイントと会ったのは、2007年の10月。

 大阪在住の若いご夫妻で、近くで土地を探しているということだった。

 2度目は2009年の春。「売りに出ている土地がある」と連絡があった。「交渉ごとは焦ったほうが負けです」とアドバイスした。それが原因か分からないが、上手く行かなかったようだ。
 
 今年の2月に「土地が見つかった。4月初めには正式に決定するので、プランをお願いしたい」と連絡があった。

 それから4ヶ月。

 7月31日に、近くの神社へ参拝し、工事の安全を祈願して貰った。

 この神社の創建は1150年。

 クライアントは、この家を建てる全ての過程を、公開しても良いと。

 理由は、予算を抑えても頑張れば自分達の思う家が建てられると、知って欲しいから。

 私達の責任も重大だが、この心強い言葉を借りて、プロジェクト名は「頑張れる家」にしたい。

 クライアント-夢を実現する為に頑張れる

 父親と母親-家族の幸せの為に頑張れる

 設計者-建築は自由なものだと伝えたいから頑張れる
 
 この3つの意味を込めて。

 ご主人が実際に施工する場所もあり、コセンセプト等、詳細は追々。 

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-14-お年寄りにとって

 クライアントと、現場で話しをしていた時のこと。

 「おしゃれだけど、お年寄りにとって居心地は……みたいなのは、避けたいですね」という話になりました。

 お年寄りであっても、子供であっても、居心地の良い、何か楽しみのある、そんな空間にします、と答えました。

 中学生の時、古文の先生が「お子様ランチはダメ。小学生だって、中学生だって、ビフテキが美味しいに決まってるんだから」と言いました。

 何でも本物が良いという話ですが、そんな建築、空間を目指します。

 内部間仕切り壁が随分出来てきました。

 今回は電子カルテが導入されます。そのネットワークは全てメインサーバールームに集まってきます。

 このあたりの設備は、クリニックならではのもの。

 先日のクリニックオープンの横断幕に続いて、当事務所も掛けさせて貰いました。

 相談すると快諾してくれたのです。

 このクリニックの事を、アトリエmのことを街にアピールしたいという気持ちからです。

 私も40歳になりました、迷いなく真っすぐに行動したいと思うのです。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「Epic Games Japan New Office」-2-現場監理1

 朝6時の新幹線で新横浜へ。

 在来線に乗り換えて、15分程でJR桜木町。

 ランドマークタワーを見ながら5分程歩くと、9時過ぎには現場へ着きます。

 着工して6日目。間仕切壁のフレームが出来上がっていました。

 今回は横浜での計画につき、知っている施工会社がありませんでしたが、紹介ではなく、自分達で探すことにしました。

 事務所にある建築の専門誌を片っ端から調べ、まずはメールで計画の概要を送ります。そして、順に電話していったのです。

 およそ10社位までしぼっていたのですが、競争見積を表明したのは2社だけでした。

 6月21日に、初めて現場説明で顔を合わせ。それから3週間程で見積調整。1社に決まったのです。

 後で分かったのですが、2社の社長は知り合いで、「あの設計事務所なら付き合いしてもいかな」と話していたそうです。
 
 2社とも、そうそうたる建築家と仕事をしているだけに、光栄なことでもあります。

 施工会社から上がってき施工図には、考え、悩んだ後がみえます。そして伝えたいという気持ちも。

 この図面が上がって来た時「完璧な納まり」と答えました。

 そして、必ず良い仕事になると確信したのです。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「Shabby House」-5-受入検査

梅雨明け以来、晴天が続きます。

朝からコンクリートの受入検査に行ってきました。

今日は基礎部分の打設です。

生コンが届くまで、ポンプ車のホース位置を調整したり、コンクリートを均すトンボを作っていました。

ミキサー車が到着したら、まず試験用の生コンを準備します。

スランプの計測(軟らかさを示す数値)は、15±2.5cm内でクリア。

空気量も4.5±1.5%の規定量です。

カンタブという試験紙で、塩化物量を測定しました。

塩分量が多い場合、鉄筋を腐食させてしまいます。

強度試験を行う試験体は合計6本、1週間後と4週間後用です。

夏場は気温が高く、打設面の温度も高くなってしまうので、湿らす程度の水をまきながら進めます。

ホースの側でバイブレーターを使って生コンを流し、その後をトンボやコテで均していきました。

基礎が立ち上がり、建物の形が現れ始めるのです。

文責:田辺 幸香
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「Epic Games Japan New Office」-1-プロローグ

 今年のゴールデンウィークに入る直前。ある企業から、連絡を貰った。

 外資系のゲーム開発ツールのメーカーで、webサイトには以下のようなニュースが掲載されていた。

 『今年の4月。世界中のゲームメーカーで使われる統合型ゲーム開発ツール“アンリアル・エンジン”シリーズや、Xbox 360用ソフト『ギアーズ オブ ウォー』シリーズで知られるアメリカのメーカー、Epic Games(エピックゲームズ)が日本進出。

 2010年4月15日に“エピックゲームズ・ジャパン”の設立発表会が行われた』

 「Epic Games Japan」

 更に、横浜で新しい事務所を構えることになり、内装と家具の設計依頼を頂いたのである。

 エンターテイメン企業なので楽しく。

 なんと言っても人材が宝。ここで働きたいと思えるようなオフィスを。

 この2つがメインコンセプト。

 クリアな空間に、様々な色を投げ込んでみた。賑やか過ぎず、クール過ぎず。微妙なところにチャレンジしてみたい。

 完成予定は8月初旬。内装工事の工期はいつも短い。

 現場に行くチャンスは3回。どこで使うか。普段とは違う緊張感もある。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「Shabby House」-4-配筋検査

着工が月6日なので、2週間で基礎の配筋工事まで進みました。

今日は審査機関の中間検査。

クライアントのお子さんが、近くの保育園に通っており、ご夫妻で現場をのぞいてくれました。

基礎の底は、底版とかベースとか言います。

検査員から、ベースの被りが(コンクリート面と鉄筋の距離)大きくなりすぎないよう、指摘がありました。

すぐに改善して、一回目の中間検査は合格。

この土地に出会うまで、2年間探したそうです。

住みたいエリア、街を絞り、2008年に購入。そこから設計事務所を探すのにもう1年。

それだけあって、駅も近く、大きな公園があるのに、静かな街です。

池のある公園に、大きな鳥が居ました。何という鳥でしょうか。

どこの池にも一様に「釣り禁止」の立て札。

危険も含めて、自然と深く係わってこそ、その良さが分かるはずです。

管理責任も分かりますが、水都・大阪の面子を掛けて、何とかならないものでしょうか。

何とかしたい気がします。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-13-横断幕

 現場も待ち望んでいた梅雨明け。

 明けてしまうと、雨が待ちどうしいような猛暑が続きます。

 一雨欲しいと言ったら、勝手過ぎるでしょうか。

 光庭からも完全な青空が。

 クリニックの南、およそ20mにも建築中の現場があります。

 こちらは薬局が建つ予定なのです。

 断熱材が入り、内部の暑さは随分ましになりました。

 ただ雨よけのシートが風を妨げるので、作業は大変です。

 クリニックの天井高さは3.5m。

 一般住宅が2.4~2.5mとすれば、1m高くなります。

 まだ階段がないので、大工さんが作ったハシゴが掛かっていますが、下りる際はちょっと緊張します。

 昼一番に着いた時にはなかった横断幕が、入口の上に付いていました。

 11月にOPENするには9月末に完成し、様々な検査を順次受ける必要があります。

 建築基準法、バリアフリー法、保健医療関係等々。

 全てクリアして、秋の開院を迎えるのです。

文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「伊東内科クリニック」-12-開口部

 今か今かと梅雨明けを待ちますが、日曜日も雨。

 お昼前から打合せがありました。

 地下鉄の野江内代駅を出ると、叩きつけるような雨。

 日曜日の現場はひっそりしたものです。

 壁が出来上がりつつある2階は、随分感じが出てきました。

 しっかり掃除がされていたので、一人ひっそり感を楽しみます。

 クライアントが見え、打合せを始めました。この日は、スイッチ類の位置、開口部が中心です。

 開口部は、建物の目と考えています。

 その建物の感情というか表情を決定付ける重要jな場所。

 「開口部を狙え」は吉村順三の言葉だったでしょうか。

 前々回だったか、現場に積んであった角材に、皆で腰掛けました。

 その時、施工会社の社長が「伊東さん勝手に座ってすみません」と。

 ここにある物は、全てクライントの物。許可も得ずに……という冗談だったのですが、思わず笑ってしまいました。

 しかし考えてみればその通りです。角材であるうちは施工会社のもの、壁になったらクライアントのもの。

 そうではない考え方はとても良いと思うのです。
 
文責:守谷 昌紀
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm

「Shabby House」-3-掘方

 梅雨空の下、着工です。

 雨がパラパラしていましたが、クライアントも現場に。

 工事を始める前に、まず敷地の大きさや高さのチェックをします。

 もともと駐車場だったので、今回は解体工事はありません。

 地盤調査は昨年中に終えています。上町台地に位置するだけあって、1m掘らない内に硬質層がありました。

 地盤も良好で、改良無しで進めます。

 「住宅瑕疵担保保険」では、地盤調査報告書の提出が必要な場合があります。軟弱であれば地盤改良が必要な為、調査を終えるまで安心出来ません。

 まず監督と根切り深さの確認をし、掘方が始まりました。

文責:田辺 幸香
建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm