(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐8‐光と風を振り付ける

 昨日は、今週2回目の定例会議でした。

 最終盤一歩手前。現場にとっては最も大切な時期です。

 運営会社の担当者の方には無理を言っての開催でしたが、その甲斐あって見事な青空。

 ようやく足場が取れましたが、たかどの園には快晴が良く似合います。

 一番の特徴はぐるりと巡らせた軒下空間です。

 フェンスの中に入ると、南にある園庭の価値がよく分かります。

 この日は、ガラスの取付作業をしていました。

 ガラスとアルミサッシの隙間に接着剤を打ち込んで固定して行きますが、この材をコーキングと言います。

 私の実家はガラス屋で、コーキング打ちはよく手伝いました。

 この作業をした後、ガラスに紙テープを貼ります。

 間違ってぶつからないようそうするのですが、それ程ガラスの透明度が高いということです。

 壁下地ができると、室内に光がまわりだします。

 このガラスという材料が普及して、建築は劇的に変化しました。

 光を遮らず、安定した室内空間を生み出すことが出来るからですが、それらが可動することで、欲しい時に風を導くことが出来きます。

 冬のこの時期は、室内深くまで光を入れ、夏は直射を完全に遮断してくれるのが、深い軒の役割。

 建築には無駄な材などありません。

 最も広い「こもれびひろば」につながる園児室。

 曲面壁ができるのを、今か、今かと楽しみにしています。

 この日は、屋外廊下の防水工事も行われていました。

 2階の最奥まで進み園庭を見下ろすと、明るい園だと実感できます。

 『大改造!!劇的ビフォーアフター』で私が貰ったニックネームは「光と風の振付師」

 フィギアスケートと同じで、振付師は主役になれません。

 ここで過ごす、園児、保育士の日常を、振付師としてどう演出できるか。

 光と風を読み、どんな空間を生み出せるかだけで、私たちの職能は評価されるのです。

 幼少期の大切な時期、また職場として人生の多くの時間を過ごす保育士の皆さんに、愛してもらえる園を目指し、工事は最終盤に入って行きます。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

■■■『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐7‐空間に奏でるメロディー

 現場へ向かう途中、耳元でガサッと音がして、飛びのきました。

 見ると子猫が飛び降りてきたよう。

 猫が外に出てくれば、春の足音も多少大きくなってきたということでしょう。

 トレジャーキッズたかどの保育園の園児室は、全部で5部屋あります。

 1階は「0歳児室」「1歳児室」「2歳児室」の3部屋。

 いずれも縁側のような廊下を介して園庭に面しています。

 2階は「3、4歳児室」「5歳児室」の2部屋。

 これらの間に、広いホールがあります。

 それらの仕上げを確定する前に、コンセプトを全て整理してみました。

 こちらの園は、エントランスに入ってすぐのところに、500色の色えんぴつが飾られます。

 それで、こんなメインコンセプトはどうでしょうかと提案してみました。


『人はひといろじゃない。白木の園で自分色をみつけてください。

 たっぷりの太陽を浴びて、立派なげん木に育ってほしい』

 外観は、白木を基調とした、明るく、優しい建物に仕上げていくつもりです。

 年齢とともに、しっかりした色の木に育っていくという物語を考えました。

 園児室も白木を基調としていますが、扉と家具は、その物語に沿った素材をセレクト。場所性を明確にしました。

 扉材、家具材、シート材と違ったメーカーから、素材を探し出すのは、なかなか骨が折れるものです。

 しかし、こんなところから物語が生まれるのだと考えています。

 この部屋は、『もりのひみつきち』。

 コンセプトは以下の通りです。

 園全体を森とするなら、友達同士が集合する隠れ家のような空間。

 全体行動がちょっと苦手な園児くんの遊び場だったり、時にはメソメソしたい園児さんも居るはず。

 先生と父兄だって、狭い場所だからこそ話しやすいこともあるかもしれない。

 森の中にある、小さな野原をイメージしているので、床も壁も草色とした。

  秘密基地らしい物を置いて貰えるとなお良い。

 次は、『あおぞらえほんしつ』。

 ホールから窓をのぞくと、青い壁が見えます。(壁工事はこれからです)

 ここは、トップライトで光を確保している空間なのです。

 コンセプトは以下の通り。

 階段を上がったホール向きに腰窓があり、そこから内部を垣間見ることができる。

 西面の壁のみに、水色のアクセントクロス。

 床は、少し濃い青のフロアリュームを。

 空を連想させる爽やかな空間に。

 青は心を落ち浮かせる色。爽やかな絵本室になると思います。

 そして、お遊戯会などでは園児室と繋がり、大空間となるのが『こもれびひろば』です。

 5.4m半径の柔らかな曲面壁の上部、ハイサイドウィンドウからは、1階へ落ちるトップライトの光が、ホールにもこぼれてくる。

 屋根、壁を透過しての光は、森の木漏れ日に似ている。

 その木漏れ日のもと、あそび、語らって貰えたら……

 曲面壁の部分のみ、優しく鮮やかな黄緑の壁紙を貼り、「木漏れ日広場」としてみたい。

 曲面壁はこれからですが、酸素を供給する緑は、まさに自然の象徴。

 人は緑をみると心癒されるのです。

 デザインとは、誰かと共有できると信じるからこそ意味があると思っています。

 その時に、押しつけすぎず、強引になりすぎないよう心掛けているつもりですが……

 空間に私が奏でたメロディーは、園児のみなへ届くのでしょうか。

 工事は終盤に入っていきます。

文責:守谷 昌紀

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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐6‐園長先生きたる

 寒い中でも、日が差せば見た目は春。

 暦の上では立春を過ぎました。

 「トレジャーキッズたかどの保育園」は4月開園。2月はめまぐるしく現場が進んで行きます。

 定例打合せが週1回あるのですが、その前に現場を見て回ります。

 2階は、3歳から5歳の園児室と大きなホールがあります。

 屋外階段、屋内階段、そしてエレベーターで2階へアプローチできるのです。

 1階のホールから中部を見渡すと、外壁がピンクになっています。

 これは硬い発泡スチロールのような断熱材が吹き付けられたもの。外気に接する壁は、全て断熱が施されています。

 奥へ歩いていくと、ヘの字に曲がっている所が0歳児室になる予定。

 ここにトップライトから光が落ちてくるのです。

 屋内階段から2階へ上がってみます。

 右奥にみえるのがトップライト。この光が1階へ落ちるのです。

 この日は、園長先生が初めて現場にこられ、ぐるりと案内させてもらいました。

 トップライトの前には、曲面壁ができ、その上部にある窓から光がこぼれてきます。

 向かいにはこの大開口があり、とても明るい空間です。

 更に、最も大きな園児室と繋がれるようになっています。

 合せて約80畳の大空間が生まれるのです。

 園長先生から「お遊戯会の舞台として使えるでしょうか?」という質問がありました。

 とてもいい舞台になると思います。

 現場案内が終われば、仕事が終わりではありません。

 そのまま現場事務所へ移動して、定例会議がスタート。

 運営会社の担当者の方と園長先生。施工会社の現場所長と、電気設備、機械設備の担当者、そして私と田辺さんの7人で、打合せは4時間超。

 途中、入れ替わり立ち代わり、他の業者さんもやってきます。

 毎週金曜日の午後は、ほぼこの現場へエネルギーを費やしてきました。

 建築で一番面白いのは、創り上げていく過程です。

 そこにフォーカスしたのが「大改造!!劇的ビフォーアフター」でした。

 全ての工程の、初めと終わりを全てVTRに収め、その素材を編集するのです。

 諸事情により、レギュラー放送はなくなったのですが、匠的に言えば面白いに決まっていると断言できます。

 この舞台がどうやって生れてきたのか、先生方、親御さん、なにより園児の皆さんに知って欲しいと思うのは、創り手のエゴでしょうか。

 そのくらい現場は面白いし、過程が愛着を生むのです。

文責:守谷 昌紀

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