「四世代で暮らす家」‐5‐テイスト

 外壁の塗装がほぼ終わりました。

 黒い外壁が、ようやく見てとれるようになりました。

 こちらの住宅は四世代が暮らすので、各住戸のテイストがかなり違います。

 親世帯は、シックな感じで統一しました。

 アイランドキッチンの横には、1段上がった和室があります。

 中央にあるのは掘り炬燵です。

 こちらの住戸は、縦のスリットを全体のイメージに使っています。

 外部にも縦ルーバーの目隠しをデザインしました。

 これらは、なぜか日本を感じさせます。

 洗面は天板をクウォーツストーンとし、床はタイルとなっています。

 石など横の広がりが強いものは、やはりヨーロッパの香りを感じさせます。

 若夫婦世帯は、よりシンプルな感じでまとめました。

 モールとステンドグラスに、そのテイストが集約されています。

 『住人十色』という番組がありますが、ライフスタイルは住む人によって本当にまちまちです。

 好みと言ってしまえばそれまでですが、その中でも、一番真ん中にあるテイストを見つけたいと思います。

 黒は強い色です。

 それぞれのテイストをまとめ上げるために選択したのですが、功を奏することができるでしょうか。

 こちらの計画も、竣工まで1ヵ月をきりました。

文責:守谷 昌紀

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永住したい打ち放しのマンション「R Grey」‐3‐1フロア1ヵ月

 1階の鉄筋工事が終わったら、型枠大工による工事が本格化します。

 鉄筋を包み込みように、化粧型枠が建て込まれていきます。

 これらの型枠は、コンクリートが硬化したあと取り外されます。

 中でも、剥がれやすいよう、コンクリートの表面が平滑になるよう、塗装がされているのが化粧型枠です。

 黄色いウレタン塗装がされている面が、コンクリートに接するのです。

 これらは全て手仕事。

 型枠を鋼管でしっかり固定したら、いよいよコンクリートの打設です。

 タンクローリーが入れ替わり横づけされ、ポンプ車を介して型枠の中に打ち込まれていきます。

 コンクリートが均等にいきわたるよう、木槌で叩くのも手仕事。

 とにかく人手がかかるのが、コンクリート打ち放しです。

 先週後半から、部分的に型枠の撤去が始まりました。

 住戸内の壁も姿を現しました。

 断熱工事を施すため、壁は打ち放しではありませんが、天井は全て打ち放しになります。

 1階から2階の階段を見下ろしてみます。

 エントランスドアの高さ、上がりやすい階段の高さ、そして法規と、全てギリギリの線を狙って決めました。

 鉄筋コンクリートの建物は、1フロア毎に1ヵ月掛かるといわれます。

 この忙しない時代、ゆっくり進むのが鉄筋コンクリート造の建築。

 固く強いものが、早くできないのが建築の世界ですが、ある意味もっともだと思っています。

文責:守谷 昌紀

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枚方「さかたファミリー歯科クリニック」‐3‐アイコン

 正面に「7月 OPEN」の横断幕がとりつけられました。

 この建物のイメージカラーは白と薄紫。

 それに合わせせて、クライアントが準備してくれたものです。

 横断幕が張られているのは、ちょうど2階の大開口部の位置。

 上品かつシンボリックな建物を目指しています。

 この敷地が台形であるがゆえ、面白い空間が生まれます。

 これは院長室の前にあるバルコニー。

 現在はブルーシートがかかっていますが、休憩時間には、ここから空が見上げられるのです。

 間接照明の真っすぐな光のラインが、斜行する壁をより明確にしてくれるはずです。

 さらに、陰影でそのフォルムを明確にするため、当初は庇をデザインしていました。

 しかし減額調整でそれらは全て中止。何とか実現できないかと、しつこく現場に相談中です。

 パソコンが普及して、アイコンという言葉がよく使われるようになりました。

 もとはイコンが語源で、ギリシャ語でイメージを指すとあります。

 一度訪れてくれた人の頭の中に、アイコンとして、像として残るようなクリニックにしたいのです。

文責:守谷 昌紀

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永住したい打ち放しのマンション「R Grey」‐2‐型枠講座

 基礎が打設され、壁の型枠工事が始まりました。

 鉄筋コンクリートの建物は、硬いプリンをつくるようなものです。

 型枠とはプリンを入れるカップのようなものと考えると分かりやすいでしょうか。

 躯体が出来あがっていく流れを簡単に説明してみます。

 鉄筋コンクリートは、文字通り中に鉄筋が入っているので、内側の型枠でカップを塞いでしまう前に鉄筋を組み上げていきます。

 難易度が高いのが、窓や庇などの部分。

 特に庇は、カップに穴があいているような状態になっています。

 プリンの原液を流し込むと、当然その穴から噴き出してきます。

 コンクリートが時間とともに硬化する性質を利用して、噴き出してくるコンクリートをコテで押さえ付けるのです。

 いかに手作りなプリンかが分かってもらえるでしょうか。

 また、コンクリートはプリント違って、かなりの重さがあります。

 その側圧に耐えるため、型枠は鋼管で支えられています。

 正しい壁の厚みを保持するため、プリンの中ではセパレーターという鉄の棒によって、内外の型枠が固定されるのです。

 横60cm、建て45cmで、このセパレーターをレイアウトしています。

 完全に硬化が終わったあと、型枠を外した段階では、セパレーターの先端の白い樹脂部分が、コンクリートに埋まった状態で残っています。

 この部分をPコーン(通称ピーコン)といいます。

 樹脂性になっているのは、後でコンクリート内から取り出しやすいからです。 

 外部においては、このPコン跡のくぼみは雨漏りの原因になるので、モルタルで埋めてしまいます。

 外壁から5mmの面落ちで仕上げますが、パネルの継ぎ目とこのわずかな陰影が、コンクリート打ち放しの表情を決定付けるのです。

 建築設計と料理は本当に似ていると思います。

 コンクリトー打放しは、手作りプリンとかなり近しいのです。

文責:守谷 昌紀

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