「住吉区歯科医師会館」‐5‐咲きほこる

 世は「平成最後」とかまびすしいですが、新元号が4月1日に発表されると知りました。

 つい先日、娘に教えて貰ったのです。

 そんな世間の喧噪とは関係なく、季節は粛々と進んで行きます。

 現場の近くの長居公園で、早咲きの桜かなと思って近づくと「アーモンド」と表記がありました。

 あのアーモンドなのでしょうか。

 工事も残すところ1ヶ月となり、職人の往来も激しくなってきました。

 来月、クライアントである歯科医師会の皆さんをお迎えする「現場内覧会」を予定しています。

 来客用ヘルメットもすでに準備済。

 壁下地の工事も進んでいますが、全て鉄製のライト・ゲージ・スタッドで構成されています。

 一般にはLGSと呼ばれるもの。

 防火性能に優れていますが、木ではないので加工が簡単ではありません。

 大工ではなく専門の職人の手で施工されるものです。

 トップライト周りの繊細な部分も、LSGで下地をしているのがみてとれます。

 1階の大会議室も随分形になってきました。

 2階の会長室は床下地を施工中。

 トップライトは転落の危険がないように養生中でした。

 「虫歯の鳥などいないのでは」というコンセプトから展開していたったのが、正面の庇です。

 「くちばし」と呼んでいますが、この繊細な部分を鉄骨で構成するのは、なかなかに難しい仕事です。

 最上部のくちばしをどう納めるか、検討している図。

 その直下にあるサッシが、丁度搬入されてきました。

 できる限り外壁と一体化させるため、最後の最後まで検討して貰った部分です。

 建物にとっての顔は、できる限り美しいものにしたいのです。

 バラ科とあったアーモンドの花は、桜に良く似ています。

 冬をやりすごし、今まさに咲き誇る瞬間です。

 日本における近代建築の祖、建築家・前川國男は弟子にこう言ったそうです。

 「自然は美しいね。なぜだと思う。自らに責任を持っているからだよ」

 またこうも言いました。

 「人間は、はかない存在である。頼れる確固たる存在が必要だ。それに建築は応える必要がある」

 建築で一番大切なものは永遠性だと言ったのです。

 この歯科医師会館も、私より長く存在してくれるはずです。永く咲きほこる建築であって欲しいと思うのです。

文責:守谷 昌紀

■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日(月)発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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【News】
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

朝テンションがあがる「北摂のリノベーション」‐1‐プロローグ

 関西において「北摂」と言えば、よい環境をさす。

 そのイメージを更に上回る程、この敷地の周辺環境は抜群だ。

 まず、南からの光を遮るものが一切ない。

 ご主人の実家なのだが、こういったことに住人は無頓着な事が多い。

 「田舎」とか「何もないところ」と表現されるのだ。

 しかし、こと暮らす環境としてはこれに勝るものはない。

 すこし高台になっており、南への眺望は格別だ。

 計画にかなり時間が掛かったが、3月に入りようやく解体がスタートした。

 午前中に到着したのだが、すでにかなり手バラシが進んでいる。

 手バラシの言葉通り、全てが手作業だ。

 現在は、産業廃棄物の分別は極めて厳しい。

 とくに石膏ボード等の不燃物と、木の分別は必須となっており、解体は非常に繊細な仕事となった。

 青銅、鉄と金属の道具ができ、硬いものが切れるようになった。

 さらに電動工具が進化した。

 しかし、最後は手バラシだ。

 この原始的な仕事こそが建築だし、そんなことを誇りに思っている。

 ネット社会、AIを幻想とは言わないが、人は現実に生きる。

 それらを実現するのは人の手であってほしいと思っている。

 そうでなければならないのか分からないがそうあって欲しいのだ。

 ご主人と奥さんから、色々とリクエストを頂いた。

 しかし奥さんからこの言葉を聞いたとき、「タイトルはこれがいいな」と思った。

 「朝起きるとテンションが上がる家」

 朝を制するものは、一日を制す。

 そのオーダー、責任をもってお引き受け致します。

文責:守谷 昌紀

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
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『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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「住吉区歯科医師会館」‐4‐それでも時間は止まらない

 現場には常にシートが掛かっているので、外からみるとあまり変化はありません。

 しかし、内部は違います。

 ようやくサッシが取りつきました。

 洗面、トイレの窓はガラスルーバー窓。

 オペレーターを回すと、ガラスがブラインドのように動く窓のことです。

 また、大会議室のトップライトも取付けが終わりました。

 2階の光庭に上がるとその大きさが良く分かります。

 いずれも、まだガラスは入っていませんが、サッシというものは、建築の中でも非常に重要な部分です。

 窓はどこにでもあるので、特に意識することはないと思いますが、光と風を取り込み、水を止めるということは、実は至難の業です。

 その中で、錆びに強く、成型しやすく、軽いアルミサッシは現代建築では必須となりました。

 特に、屋根面となって雨を受けるトップライトにおいて、その価値はさらに高いのです。

 2階は3人が作業中でした。

 こちらは、会長室から中庭を見た景色。

 事務室も光庭に面しています。

 そして小会議室も。

 平面的にも、立体的にも、光庭を中心にこの建物は構成されているのです。

 2階では、監督が養生のシートを張っているところでした。

 こちらはトップライトの仕舞をしているところです。

 こちら電動ノコギリでボードを裁断しているところでした。やはり、現場は職人が沢山いて、活気があってこそです。

 しかし、ここにいる皆がおそらく皆40オーバー。48歳の私も含めてですが(笑)

 最近の現場で、20代、30代を見ることが極端に減りました。

 また、新聞にもボルトとナットが足らず、鉄骨の建物は工期が何ヶ月も遅れているという記事がでていました。

 こちらの会館では何とか確保できましたが、それでもギリギリ。

 人は足らず、物は足らず、消費税UPの駆け込み需要もあり、現場は40オーバー。

 もうコントの設定レベルですが、それでも時間が止まることはありません。

 何度も、何度もこんな場面を経験してきましたが、人生は困難克服成長ゲームです。

 ここからの2ヵ月。現場には、120%で頑張って貰わなければなりません。

文責:守谷 昌紀

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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐8‐1年点検

 「山本合同事務所」の竣工は昨年の1月でした。

 先週金曜日に、1年点検へ行ってきました。

 実務が始まり、竣工写真通りとは行きませんが、このオフィスが機能していることは間違いありません。

 バームクーヘン型のデスクの位置を少し動かしたいという要望がありました。

 考えに考えて配置したのですが、ダイイングテーブルなども合せて、机の配置は本当に難しいものです。

 しかし、監督ができる限りのことはしますと。

 馬蹄型のデスクの中央にあるシンボルツリーは2代目です。

 初代目は上手く育ってくれず、すぐにやってきた2代目君も、一度病気に掛かってしまったそう。

 しかし懸命の治療のおかげで、元気に1年を迎えることができました。

 シャワーも備えたトイレは、少し暗かったとのことで、照明を変更してもらいました。

 ワーキングスペースも含めて、照明計画は本当に繊細なものです。

 無難な空間なら間違いは起きにくいものです。

 しかし私の仕事は60点から70点を目指すものではないと思っています。だからといって、ある箇所は120点、ある部分は40点では駄目。

 コストバランスも含めて総合点が最も高いところを探すのですが、答えは無限にあります。

 全てが完璧とは言えませんが、良いオフィスだと思います。

 クライアントは大学時代の後輩で、3階の打合せ室兼リビングで四方山話をしていました。

 リーダーであり、司法書士であり、行政書士であり、土地家屋調査士の資格も持っており……電話はひっきりなしです。

 私のほうから話を切り上げて、大阪に向かいました。

 1年点検は私にとって答え合わせの場です。

 良かったところ。もっと違う解釈があったところ。素直に謙虚に受け止めなければなりません。

 これまでに、色々な場所で、本当に色々な建物を建てさせてもらいました。

 いくつになっても、自分の仕事が好きで居れるのは、この上ない喜びです。

 1年後の感想も届いたので、最下に付けておきます。

 年末から春にかけては、特に多くのプロジェクトが進みます。

 クライアントに「本当に良かった」言って貰えるよう、只々ひたむきに仕事に打ち込むしかないと思えるのです。

【1年後の感想】

Y様

1. 使用される方の人数をお願いします。

男性10名、女性2名

2. 建物が完成して何年になりましたか?

約1年

3. 実際に生活されて(使われて)、良かった点はどこですか?

 大きな窓、天窓、吹き抜け、ラウンドテーブル、3Fのリビングのような応接室等、リラックスして仕事ができること

 春・秋・冬に差し込む光が気持ちいい

4. 反対に問題点や、こうしておけば良かったと思う点はどこですか?

 照明についてもう少し検討すればよかった(明るさ・色・ブルーライトの影響等)

 床材をもう少し扱いやすいものにしてもよかったかも(2階だけ床暖を検討してもよかったかも)

 もう少し人が増えることを想定してもよかった

5. 訪れた方々の感想はいかがですか?

 おしゃれと言われる

 外からじろじろ見る人が多い(たぶんおしゃれな建物と思って見てはるんやと思います)

6. 設計の過程、または暮らされて(使われて)、印象に残っていることなどあればお願いします。

 守谷さんとたくさん話しができてよかった(笑)

7. その他、ご意見等ありましたら、お願いします。

 色々無理を言ってすみませんでした

 とにかくいい事務所ができて本当によかったです

 ありがとうございました

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐13‐幸せの青い花

 「碧(あお)の家 」は昨年末が1年点検でした。

 碧はやはり光が当たってこその色。

 全てはそのコンセプトから始まりました。

 夏の日差しで、花壇の花が何度か枯れてしまったそうです。

 クライアントがDIYで日よけを作ってくれました。

 これで、次の夏は元気に育ってくれるでしょうか。

 花壇は左の低い所が花のエリア。

 ブルーデイジーとマーガレットが植わっています。

 リノベーションは、あるものを出来るだけ活かすのですが、側面の路地からは既存の母屋が見えています。

 こんな景色に、この家の年輪を感じることが出来るはずです。

 映画「かもめ食堂」で使われたこのケトル。

 やはり本物は絵になります。

 2階の寝室も、全く変わらずに美しい状態のままでした。

 建物を好きになって貰えたら、少しでも長く使いたいと思って貰えたら、自然と手入れをしたくなるものです。

 そんな気持ちが、空間をよくするのだと思うのです。

 ブルーデイジーの花言葉は「恵まれている」とか「幸福」だそうです。

 その語源は、学名の「felix」がラテン語でそれらを意味するところからきているそうです。

 まさに「幸せの青い花」でした。

 昨日、「1年後の感想」をUPしましたが、ここにも載せてみました。

 私が何を語るより、「碧の家」のことが良く分かって貰えると思うのです。

【1年後の感想】

住んでから一年経っての感想ですが良かったところは殆どそうなので部分的に少し言わせてもらえば…

まず

① サンルーム(室内洗濯干し部屋)が大変便利です。
雨の日のお洗濯も困る事なく不透明ガラス扉を閉めれば視線を遮る事も出来ます。

程よい大きさなので一つの部屋としても十分成り立っています。

「コレは絶対いい!」と来た人は必ず言います。

② 階段下の収納
当初は「収納どうかな?」と思ってましたが階段下を目一杯収納にとってもらったのでかなりの収納スペースになりました。
満足の収納スペースです

③二階の大きな梁
以前は隠れてた大きな梁を今回「見せる」という選択をしてもらったおかげで今まで経た時を感じる事が出来
また、これからも感じる事が出来ると思います。

フローリングを完全無垢にしており上の梁とで更に木の息遣いを感じ癒しになります。

以前の家があまりにも古いので人を呼べる事も出来ませんでしたが既に沢山の友人に来てもらいました。

皆、居心地が良いと言ってくれて「次回は泊まりたい」とさえ言ってくれます。

以前では想像出来ないです 笑

一つ、もう少し考えれば良かったと思ったのがガレージ下のコンクリート?です。

費用をおさえようと思って白っぽいコンクリート?にしたのですが少し汚れが目立つかな?と 思ってきました。
深く考えなく費用で決めたのですが暮らしてみてもう少し考えればと思いました。

現場打ち合わせの時に電気コンセントの位置を決めるのが
こんなに長い時間を費やし大変な作業と解りました。

住んでみて確かに重要かつ時間をかけるのが解りました。

自分の考えからトイレのドアにガラスを入れてトランプの4種類♠️♣️♥️♦️をガラスに貼って欲しいとお願いしました

ガラスにどの様に貼るか守谷さん、現場監督と話しをするのを聞いていたら大変そうでした…

毎回現場打ち合わせでガラスをみたてた画用紙でトランプの種類の大きさを作っていただき大きさを考える…

工事打ち合わせをしてる横の壁には何枚かの大きなトランプを壁に貼ってるのを見ると「こんなに大変な作業だったとは…トイレのドアにここまで時間を費やす家はきっとないのでは…」と考えては感謝をしました。

おかげで他にはない?トイレのドアが出来大変嬉しく思います。

設計から工事、家が出来るまでと自身が携わる事で大変良い経験、楽しい時を過ごす事が出来良かったと思います。

リノベーションして新たな家とまた、これからも時を紡いでいくと思うと微笑ましくなるのは
いうまでもないです✨✨✨✨✨

 


文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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「住吉区歯科医師会館」‐3‐太陽は誰のもとにも降り注ぐ

 2019年の現場日記は「住吉区歯科医師会館」からスタートです。

 昨日の14日は、成人の日を祝うかのような青空でした。

 人気のない現場に入れるのは、設計者の特権かもしれません。

 静かな現場を、ゆっくり回るのは楽しい時間です。

 年末の建方工事を終え、床版となるデッキプレートの設置が終わっていました。

 この館のプランを創り上げていった過程は、第1回目に触れました。

 キーとなった空間は大会議室ですが、それらを法的にも可能としたのが、右奥にある3つのトップライトです。

 階段は広めに設定していますが、2階はどちらかと言えばオフィス的な空間です。

 それらの空間に対しても、光庭に対して窓を設けることで、採光を確保しています。

 その床面にトップライトを設けているので、2倍の価値があると言えるのです。

 デッキプレートの上にはワイヤーメッシュという鉄筋を敷設します。

 これらはコンクリートの中に埋もれるのですが、デッキプレートと接してしまうとその性能を発揮できません。

 よって、少し浮かした位置にセパレーターという部材で固定するのです。

 屋上のワイヤーメッシュも敷設が終わっていました。

 この2度美味しい光庭ですが、建物の中に外部があるとも言えるので、形状としてはかなり複雑です。

 元は3階建てだったのですが、法規の改正で3階建てが不可能であることが分かりました。

 「光と風」は私にとって変わらぬテーマですが、建築は人が使うものである以上、全ての設計者にとって永遠のテーマとも言えます。

 側面からの開口で光と風が十分取り込めれば理想ですが、それが難しいとなったとき、何かしらの案を練らなければなりません。

 そういう意味においては、光庭とトップライトは苦肉の策とも言えます。

 どれだけ暗いと言っても、天空が塞がれることはありません。

 太陽は誰のもとにも、平等に降り注ぐのです。

 これは階段を固定している部分です。

 大工でなければ出来ないような細工を、防火性能を満たすために鉄のプレートを溶接し固定します。

 こんな詳細部の集合体が建築です。

 よって、近代建築の三大巨匠、ミース・ファン・デル・ローエは「神は細部に宿る」と言ったのです。

 神様が応援してくれるよう、細部にこそ手を抜かず、今年も1年物創りに励みたいと思います。

文責:守谷 昌紀

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「住吉区歯科医師会館」‐2‐見た目が良いは、中身も良い

 一昨日、「住吉区歯科医師会館」の建方工事が完了しました。

 青空に赤の鉄骨がよく映えています。

 天気のよい朝のうちに慌てて撮りに行ったのですが。

 建物の顔になる部分をファサードと言います。

 表面の化粧だけでは何ともならないので、やはり中身が大切。

 その点は人も建築も同じです。

 出来上がる前に骨格から化粧までを考えることが建築設計の仕事とも言えるのです。

 11月上旬に掘り方工事がスタート。

 11月末には基礎の一番底、ベースコンクリートを打設しました。

 最終的にはコンクリートしか見えない基礎も、中にある鉄筋が重要です。

 コンクリートは圧縮力には強いのですが、引っ張りに弱く、それを補うのが鉄筋の役割。

 19世紀のヨーロッパで発明された、いわばハイブリッドな構造体です。

 柱を据える基礎柱部は、大きな力が加わるので太い鉄筋が密集します。

 慎重にコンクリートを打設しなければならない箇所なのです。

 12月上旬に基礎の立ち上がり部分のコンクリートを打設。

 一昨日の建方工事に備えていました。

 無事、基礎柱部に柱が固定されました。

 建築設計の世界には「開口と階段を狙え」という言葉があります。

 建築は観るものではなく使うものです。

 よって機能を持っていますが、それらを芸術品のレベルまで昇華させたい。

 それはいつも変わらぬ願望です。

 躯体は月並みだけど、見た目は素晴らしいという建築はありません。

 予算が有り余っていて、張りぼてだけど素晴らしい建築などそうないからです。バブル期なら別かもしれませんが。
 
 建築において、良いものを創りたければ、構造体にこだわるしかありません。

 今年は本当色々なことがあった年でした。

 1月のコンペからスタートしたこの計画も、何とか棟上げまでたどり着くことができました。

 来年は亥年。

 今年の分も取り戻すつもりで、直進して行きたいと思います。

文責:守谷 昌紀

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「どこにもない箱」の家‐4‐まもなく着岸

 ようやく足場がとれました。

 何度経験しても、変わることのない期待感と緊張感。

 色のはっきりした建築は、やはり青空の下に限ります。

 クライアントも外観に関してとても喜んでくれました。

 現場はミキサー車から生コンを運び、外部の床を仕上げている最中。

 外構工事も仕上げ段階に入っています。

 側面からみると、それぞれの箱がどういう構成になっているのかがよく分かります。

 多くのクライアントが、決まった予算の中で夢を実現したいと願っています。

 色というものはそれ程金額差がでるものではありません。しかし、無秩序に使えばただうるさい建築になってしまいます。

 ただ「本当に好き」という部分を外さなければ、背骨のようなストーリーが常に貫かれると思っています。

 そのストーリーは、この現場日記の第1回目に書きました。

 夢を実現すると書きましたが、夢だけは人から貰うことはできません。また、押し付けることもできません。

 そういう意味でいえば、私の仕事は夢の水先案内人のようなものです。

 あくまで建築においてですが。

 「どこにもない箱」という最終目的地は計画のスタート時に示してもらいました。

 その港がもうすぐ目の前に迫ってきました。

 水先案内人としては、ここは焦らず、慎重に着岸させなければならないのです。

文責:守谷 昌紀

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「住吉区歯科医師会館」‐1‐プロローグ

 歯科医院を開業すると、地域の歯科医師会に入るのが一般的だ。

 住吉区歯科医師会のwebサイトには以下のような説明がある。

 歯科医同士で情報を共有し、歯科治療に関する知識を深めるための講習を開催しています。時には、地区の医療・福祉団体や他地区の歯科医師会と合同セミナーを開催するなど、積極的に技術向上に取り組んでいます

 小学校で歯科検診を受けたことがある人も多いと思うが、これらも歯科医師会が窓口となっての社会貢献活動のひとつである。

 旧会館は築38年となっており、耐震基準を満たしていないことが建て替えの動機となった。

 パブリックな建物ゆえ、コンペで設計者を選ぶことになったそうだ。

 新築住宅ガイドというサイトからコンペ開催の連絡があり、当社も参加させて貰うことにした。

 まずは書類選考で10社に絞られ、当社が2次選考に提出した案は以下のようなものだ。

 歯科医師会館なので黒はない。やはり、白く清潔な建物がよい。

 白い箱状の建物中央に、大きな開口を開け、くちばし状の庇を設けた。

 「虫歯の鳥などいないのでは」というメッセージだ。

 旧会館は暗く、寒いとお聞きしていた。

 隣地も迫り窓を開けることもままならない。

 光と風に満ち、地域の歯科医師の皆さんが足を運ぶ際に、楽しみにして貰えるような会館を模索した。

 プランを決定する上で、最も影響を与えたのは大会議室だ。

 多くの方々が訪れることもあり、非常時の避難経路を考えると1階が適切だと考えた。

 建築基準法上の「採光」を確保するのが難しいのだが、2階の一部を光庭とし、トップライトを採用する案を提案した。

 これらが、1階の北奥の最も暗い部分に、安定した光を与える。

 ドラマティックな風景を演出してくれるはずだ。

 2階においては、その光庭を囲むように各室を配置。

 季節の良い時期には、隣地を気にせず掃き出し窓を全開にできる。また、夏の暑い時期には裏路地の冷たい風が通り抜ける。

 歯科医師会館だけに健康な建物を目指したのだ。

 白いくちばしをくぐってエントランスホールへ。

 オープンな階段からは光が落ちてくる。

 再び、住吉区歯科医師会のwebサイトから引いてみる。

 「地域の皆さまの歯の健康を守ることができるのは私たちだけ」という誇りをもって、より歯科医療現場の最前線で活躍できるよう努力していきます。

 その気概にお応えできるような、建築を目指したい。

 また地域の皆さんとの交流の場となればこれほど嬉しいことはない。

 住吉区は、これまでに一番多くの仕事をさせて貰った地域でもある。

 仕事人としての気概をもって、歯科医師会の皆さん、地域の皆さんの幸せに何とか貢献したいと思うのだ。

文責:守谷 昌紀

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「どこにもない箱」の家‐3‐階段を愛することから始めよう

 暑かった8月も今日で終わり。

 帰宅時に聞く虫の音は、秋の気配も感じさせます。

 まだまだ暑いのが現場ですが、階段の下地がほぼ出来上がりました。

 初期相談に来られる際、自らが描いたプランを持参される方も多々おられます。

 勿論ウェルカムですが、私が描いたプランと大きさが最も違うのが階段です。

 階段は通路なので、出来るかぎり省スペースとしたいという心理が働くからでしょう。

 実際は重要な縦動線なので省くことはできませんし、人間工学上、昇り降りしやすい蹴上と踏み面の寸法は範囲があります。

 ある程度のセオリーがあるのです。

 人も同じですが、嫌ってしまうとその良さは見えてきません。

 まずは、階段を愛することから始めましょうという感じなのです。

 高い位置から光を落とせることは、階段をポジティブに捉える可能性を広げてくれると思います。

 こちらの階段は、8から12段目でぐるっと回り、更に2段ので2階へ昇りきります。

 11段目の蹴込板が、玄関扉を開いたすぐ上にあるのが見てとれるでしょうか。

 もし、10段しか昇れていなかったなら、扉の上部があたってしまうので、平面的、断面的にまさにこの階段しかなかったのです。

 この階段、実は初めての試みで5段で180度を回り切っています。

 45度の4段で回り切れれば良いのですがそれでは段数が足りず。

 また30度の6段にすると、せせこましくなってしまいます。

 30度、45度の複合案もありますが、36度の5段で回り切ることにしました。

 職人不足の建築業界でも、部材はどんどんユニットされる傾向にあります。

 階段も同じで、滅多に使われない36度の5分割ユニットはありません。

 熟練の大工がいなければ実現できない形状なのです。

 5つ割りを使わなければいけない場面かならずあるだろうと思い、10年程前からイメージをつくっていました。

 何度も歩いて確認しましたが、とてもリズムよく昇り降りしやすい階段でした。設計者の私が言うのも何ですが。

 2階建て以上の建物なら、どこにでもあるのが階段ですが、それをより機能的に、より美しく仕上げるのが建築の醍醐味なのです。

 日本は奇数を尊ぶ文化です。

 半分を繰り返す偶数より、割り切れない奇数の方が私も好きです。

 そこには何かしらの意思があるからだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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