タグ別アーカイブ: 階段

「住吉区歯科医師会館」‐8‐そして開館

 昨年の2月にスタートしたこの計画も、ようやく引渡しを迎えました。

 エントランス上のロゴも入りましたが、今週末にはお披露目の公演会が開催されます。

 「虫歯の鳥などいないのでは」という多少コミカルなコンセプトでプレゼンテーションをしました。

 14社のコンペと聞いていましたが、他社のことを気にしていても仕方がありません。

 歯科医師会から選ばれた「会館建設委員会」のみなさんはすんなりと受け入れてくれました。

 そういう意味では、正面にあるくちばし状の庇は、この館を誕生させてくれた原動力でもあるのです。

 建築は機能を持っています。

 機能あるものを少しでも美しくすることだけが、私の使命です。

 階段は特に集中してデザイン、監理をしました。

 委員会のある方が、この景色を見て「教会みたいだね」と言ってくれました。

 創り手としてはとても嬉しいコメントなのです。

 作家のmarianeさんと苦労して取りつけた作品は、大会議室の右奥にあります。

 この場所に導かれてきたかのように、ピタリと納まっています。

 光はその場所を神聖なものにしてくれる力を持っているのです。

 作品には銀箔が貼られているところがあります。

 その部分が、光の変化を刻々と映します。

 そういう意味でも自然光が照らすこの場所を、大変気にいってくれました。

 ホールから2階に上がるとオフィスフロアになっています。

 ガラスの手摺は、2階からの光を遮りません。

 最も階段寄りにあるのが会長室兼応接室。

 そして光庭を囲むように、事務所、小会議室が並びます。

 4月10日(火)午後8時からのプレゼンテーション時に提出したパースです。

 そのパースと寸分違わずとは言いませんが、軸はぶれていないと思います。

 むしろ、実物の方が美しいかもしれませんと言えば、厚かましいでしょうか。

 100名近い歯科医師が在籍する歯科医師会ですので、全員の方々が喜んで下さるかは分かりません。

 同じクライアントと2度仕事をすることは極めて稀なこの仕事において、一期一会の精神で取り組んできたつもりではあります。

 創り続けることだけが私の仕事です。

 イノベーション等の言葉とは程遠い、この原始的な仕事がやはり好きなんだと改めて思うのです。


文責:守谷 昌紀

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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■『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
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「トレジャーキッズたかどの保育園」
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大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

「住吉区歯科医師会館」‐2‐見た目が良いは、中身も良い

 一昨日、「住吉区歯科医師会館」の建方工事が完了しました。

 青空に赤の鉄骨がよく映えています。

 天気のよい朝のうちに慌てて撮りに行ったのですが。

 建物の顔になる部分をファサードと言います。

 表面の化粧だけでは何ともならないので、やはり中身が大切。

 その点は人も建築も同じです。

 出来上がる前に骨格から化粧までを考えることが建築設計の仕事とも言えるのです。

 11月上旬に掘り方工事がスタート。

 11月末には基礎の一番底、ベースコンクリートを打設しました。

 最終的にはコンクリートしか見えない基礎も、中にある鉄筋が重要です。

 コンクリートは圧縮力には強いのですが、引っ張りに弱く、それを補うのが鉄筋の役割。

 19世紀のヨーロッパで発明された、いわばハイブリッドな構造体です。

 柱を据える基礎柱部は、大きな力が加わるので太い鉄筋が密集します。

 慎重にコンクリートを打設しなければならない箇所なのです。

 12月上旬に基礎の立ち上がり部分のコンクリートを打設。

 一昨日の建方工事に備えていました。

 無事、基礎柱部に柱が固定されました。

 建築設計の世界には「開口と階段を狙え」という言葉があります。

 建築は観るものではなく使うものです。

 よって機能を持っていますが、それらを芸術品のレベルまで昇華させたい。

 それはいつも変わらぬ願望です。

 躯体は月並みだけど、見た目は素晴らしいという建築はありません。

 予算が有り余っていて、張りぼてだけど素晴らしい建築などそうないからです。バブル期なら別かもしれませんが。
 
 建築において、良いものを創りたければ、構造体にこだわるしかありません。

 今年は本当色々なことがあった年でした。

 1月のコンペからスタートしたこの計画も、何とか棟上げまでたどり着くことができました。

 来年は亥年。

 今年の分も取り戻すつもりで、直進して行きたいと思います。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映
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「どこにもない箱」の家‐3‐階段を愛することから始めよう

 暑かった8月も今日で終わり。

 帰宅時に聞く虫の音は、秋の気配も感じさせます。

 まだまだ暑いのが現場ですが、階段の下地がほぼ出来上がりました。

 初期相談に来られる際、自らが描いたプランを持参される方も多々おられます。

 勿論ウェルカムですが、私が描いたプランと大きさが最も違うのが階段です。

 階段は通路なので、出来るかぎり省スペースとしたいという心理が働くからでしょう。

 実際は重要な縦動線なので省くことはできませんし、人間工学上、昇り降りしやすい蹴上と踏み面の寸法は範囲があります。

 ある程度のセオリーがあるのです。

 人も同じですが、嫌ってしまうとその良さは見えてきません。

 まずは、階段を愛することから始めましょうという感じなのです。

 高い位置から光を落とせることは、階段をポジティブに捉える可能性を広げてくれると思います。

 こちらの階段は、8から12段目でぐるっと回り、更に2段ので2階へ昇りきります。

 11段目の蹴込板が、玄関扉を開いたすぐ上にあるのが見てとれるでしょうか。

 もし、10段しか昇れていなかったなら、扉の上部があたってしまうので、平面的、断面的にまさにこの階段しかなかったのです。

 この階段、実は初めての試みで5段で180度を回り切っています。

 45度の4段で回り切れれば良いのですがそれでは段数が足りず。

 また30度の6段にすると、せせこましくなってしまいます。

 30度、45度の複合案もありますが、36度の5段で回り切ることにしました。

 職人不足の建築業界でも、部材はどんどんユニットされる傾向にあります。

 階段も同じで、滅多に使われない36度の5分割ユニットはありません。

 熟練の大工がいなければ実現できない形状なのです。

 5つ割りを使わなければいけない場面かならずあるだろうと思い、10年程前からイメージをつくっていました。

 何度も歩いて確認しましたが、とてもリズムよく昇り降りしやすい階段でした。設計者の私が言うのも何ですが。

 2階建て以上の建物なら、どこにでもあるのが階段ですが、それをより機能的に、より美しく仕上げるのが建築の醍醐味なのです。

 日本は奇数を尊ぶ文化です。

 半分を繰り返す偶数より、割り切れない奇数の方が私も好きです。

 そこには何かしらの意思があるからだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐7‐無い所からなら別

 今日は雲ひとつない秋晴れでした。

 快晴の定義は、雲の量が全天に対して1割以下。今日は0だったので完全なる快晴でした。

 週末の嵐が嘘のような天気ですが、それが自然というものです。

 どの現場もですが、台風と秋雨前線の停滞で外壁工事がやや遅れ気味。

 今日の目的は、本格的に工事が始まる外壁の色を決定することでした。

 直射が当たる壁にあてたり、影の部分にあてがったりと、慎重に検討し、残った見本がこの2つ。

 どちらになったかは、完成後のお楽しみということで。

 工事も終盤に入り、棚の割り付けなどの詳細を詰めてきました。

 ようやく階段が完成しました。

 踏面210mm、プラス蹴込30mm、蹴上200mmの登りやすい階段です。

 かつ美しく仕上がっていると思います。

 元の階段と比べると、その差は一目瞭然。

 重力のある地球で、3m上に登り、そこで暮らすということは、かなりの危険が伴うということです。

 3m、木登りする姿を想像して貰えれば分かりやすいでしょうか。

 それを安全に、スムーズな移動を可能にするのが階段です。

 初めからあれば、階段の有り難さを感じることはありませんが、無い所から出来上がったならそれは別。

 クライアントには、 何度も現場用のハシゴで登ってもらったので、「感激もひとしおですね」という話をしていました。

 これなら、お母様にも上がってもらえそうということで、次回打合せに参加して頂くことになりました。

 階段室から出ると、2階は大きな1室空間です。

 そして、右上に見えるのがロフト。

 この高低差は2.5m。ここはハシゴでつながります。

 重力のある地球において、上下の動線は常に重要で、腕のみせどころでもあるのです。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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家事動線がコンパクトな「白のコートハウス」‐4‐家の中の大動脈

 10月中旬は、雨の日が続きました。

 前々回の現場行は10月初旬。秋晴れの一日でした。

 こんな日は、1階の光庭も価値が増します。

 この時は、まだ階段ができておらず、現場で打合せをしてきました。

 今回行くと、階段がほぼ出来上がった状態に。

 この階段は繊細に設計しました。

 10段目の下を通って家事室に抜けるため、出来るかぎり薄く仕上る必要があります。

 また、階段を上がるとファミリールームがあり、キッチンに立つ奥さんとお子さんが、互いに気配を感じれるよう考えました。

 それで、段板を鉄筋で吊ることにしたのです。

 階段は、上下階を繋ぐいわば大動脈です。

 LDKが少しでも大きいほうが高く売れるだろうと、階段を軽視したプランは、中央に方形でまとめられがちです。

 それでは、家の中での縦方向の繋がりが分断されてしまい、ひいては、血流が悪くなるのです。

 血の流れは勿論人の流れ。階段のよい家はやはり元気で健康な家なのです。

文責:守谷 昌紀

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「Shabby House」-15-階段

終盤になってくると、塗装部は色を決定しなければなりません。

意外と難しいのが軒天の色。

軒天とは、外部にある天井部分を言います。

外部で直接光の当たらない天井部は、明るめの色が無難です。

しかし玄関先の軒天は、外壁を追いかけることにしました。

2階にはキッチン、造り付けの家具が据え付けられ、ダイニングらしくなってきました。

名古屋の家具屋さんで造られ、送られて来た造り付けの家具。

エイジング加工がなされています。

出来上がった日から、年代物の風合いを持っているのです。

たったの一つも、こだわりのないものなどありませんが、床材も精査に精査を重ねまた。

階段が取り付くと、上下の動きが出てきます。

それだけに、階段というのはとても重要で、繊細な部分です。

公共建築のように、広さの制限がなければ違うかもしれませんが、市内に建つ住宅に、無駄に出来るスペースなどありません

しかも快適に美しく。

例えば階段の壁に付く照明。

昇り降りの邪魔にならず、電球を替えられなければなりません。

その2つの候補が右手と左手。

とても原始的な方法ですが、これが一番確実です。

事務所内で基準値は持っていますが、クライアントの身長、誰が交換するかによって、微妙に変化します。

高い位置のときは、ご主人の仕事になったのかもしれません。

文責:守谷 昌紀

建築家 / 大阪  一級建築士事務所 アトリエm