能の大成者、世阿弥はこう言いました。
花とは命がけの熱意
創り手として、エゴイスティックになったり、技自慢に陥っていまわないよう、いつも心の奥に留めているつもりです。
コンクリート打ち放しの外壁がようやく全面見えるようになりました。
H型プランのへこんだ部分は、車寄せでありアプローチとなっています。
見上げるとコンクリートと空が対象的ですが、空部分はガラス屋根で覆われるのです。
上から見るとこうなっていますが、中央にあるエントランスホールの向こうも、光庭となっているのです。
ホールから見るとこのような景色に。
反対側から見返してみますが、この空間はエントランスホールだけでなく、北棟にある和室、南棟にあるLDKへも光を供給してくれます。
LDKは南から十分光が入りますが、北側からの光は柔らかく、風通しは各段によくなるはず。
見上げるとこの地に数百年は鎮座する大楠木が。
これほど恵まれた平屋は、そうはないでしょう。
南の大開口からは旧家としての正門と、日本庭園を望みます。
こちらには深い庇を設け、夏の日差しは完全に遮るのです。
折角の大開口も、都心部の暮らしではなかなかフルオープンにはできないものです。
それを解決する為、高い塀を設けた後ろに光庭を設けたり、リノベーションにおいては、建物に大きな穴を開けたりもしました。
光と風という自然のダイナミズムを、いかにして安定した内部に引き込めるか。それこそが、建築設計の命題と言って良いと思うのです。
しかしこの敷地においては、悩んだり、迷ったりすることは全くありませんでした。
素直に敷地を受け入れ、必要な空間に、必要な光を風を与えることができたからです。
そういう意味においては、私の物創りのキャリアの中で、平屋住宅のひとつの完成形だと思っています。
先述した世阿弥は、こうも言いました。
花は観手に咲く
クライアントの心に花を咲かせることができるのか。審判の時が徐々に近づいてくるのです。
文責:守谷 昌紀
■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
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