タグ別アーカイブ: 一生添い遂げる

住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐9‐勝負は一度きり

 彼岸を過ぎ、ようやく寒さも一段落です。

 南棟はほぼ全面コンクリート打ち放しなので、寒さ対策として床暖房を採用しています。

 銀色のパネルがその部分。

 床が出来上がると、ボリュームはほぼ最終形です。

 打合せの後、ガラスが搬入されてきました。

 実家がガラス屋だったので、アルバイトでよくガラスは搬入したものです。

  

 ガラスが入ると、ぐっと家らしくなります。

 野外と屋内の境界線となるのが外部建具なのです。

 ダンボールで養生されている前あたりにキッチンが据え付けられます。 

 キッチン後方の壁側面には、インターホンをはじめ、さまざまなスイッチ等が集中しています。

 これらの位置や、配管もコンクリートの中に打ち込まれているので、全て先に決定しておかなければならないのがコンクリート打ち放しです。

 ダウンライトを取り付けるヘコミも先に作っています。

 スポットライトを取り付けるダクトレールも同じ。

 この緊張感が魅力ではあるのですが、はやくライトが灯っているところを確認したいものです。

 エントランスには、小さな腰掛があります。

 後から既製品をつくるほうが融通はききますが、躯体と一体となっているコンクリート椅子は、一味違った潔さがあるでしょうか。

 建築は、何十年にもわたって家族の安全を守る役目を負います。よって、頑丈であることは最重要事項です。

 頑丈ではあるが、後で遣り替えが可能ということはほぼありません。その最たるものが、コンクリート打ち放しなのです。

 それゆえ、クライアントとの打合せでどれだけ先に詰めておけるかがとても重要です。

 今回打合せで、数えること43回目。

 計画がスタートし、4度目の春を迎えました。

 様々な曲折がありましたが、ついに最終局面に入ってきました。

 ゴールデンウィークには引っ越しして貰えるはずです。 

 文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐8‐花は観手に咲く

 能の大成者、世阿弥はこう言いました。

 花とは命がけの熱意

 創り手として、エゴイスティックになったり、技自慢に陥っていまわないよう、いつも心の奥に留めているつもりです。

 コンクリート打ち放しの外壁がようやく全面見えるようになりました。

 H型プランのへこんだ部分は、車寄せでありアプローチとなっています。

 見上げるとコンクリートと空が対象的ですが、空部分はガラス屋根で覆われるのです。

 上から見るとこうなっていますが、中央にあるエントランスホールの向こうも、光庭となっているのです。

 ホールから見るとこのような景色に。

 反対側から見返してみますが、この空間はエントランスホールだけでなく、北棟にある和室、南棟にあるLDKへも光を供給してくれます。

 LDKは南から十分光が入りますが、北側からの光は柔らかく、風通しは各段によくなるはず。

 見上げるとこの地に数百年は鎮座する大楠木が。

 これほど恵まれた平屋は、そうはないでしょう。

 南の大開口からは旧家としての正門と、日本庭園を望みます。

 こちらには深い庇を設け、夏の日差しは完全に遮るのです。

 

 折角の大開口も、都心部の暮らしではなかなかフルオープンにはできないものです。

 それを解決する為、高い塀を設けた後ろに光庭を設けたり、リノベーションにおいては、建物に大きな穴を開けたりもしました。

 光と風という自然のダイナミズムを、いかにして安定した内部に引き込めるか。それこそが、建築設計の命題と言って良いと思うのです。

 しかしこの敷地においては、悩んだり、迷ったりすることは全くありませんでした。

 素直に敷地を受け入れ、必要な空間に、必要な光を風を与えることができたからです。

 そういう意味においては、私の物創りのキャリアの中で、平屋住宅のひとつの完成形だと思っています。

 先述した世阿弥は、こうも言いました。 

 花は観手に咲く

 クライアントの心に花を咲かせることができるのか。審判の時が徐々に近づいてくるのです。 

文責:守谷 昌紀

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐7‐祭だ、祭

 2021年の現場日記。

 初回はコンクリート打設の風景からスタートです。

 12月28日(月)、29日(火)の2日に渡っての打設で、28日(月)の朝方まで降っていた雨も完全に上がりました。

 コンクリートは生ものにつき、出来るなら1日で打ち上げたいところです。

 しかし、こちらの敷地はアクセスが非常に厳しいのです。

 前面道路は4m、かつクランクして幹線道路に繋がります。途中、商店街も通過しなければならず、昼間は車両進入禁止という厳しいの3乗です。

 警察署に相談へ行き、近隣とよく話し合った上で、商店街の一部をミキサー車が通ることを許可して貰いました。

 苦労をして、ここまでやって来たミキサー車です。

 ミキサー車、ポンプ車、そして圧送工へ。

 様々な工事種別がある中で、コンクリート打設は最も人手がかかる工事と言えます。

 はっきり言って祭です。

 圧送工はこの日の主役。

 誰だってそうですが、一生懸命働く姿はやはり美しいものです。

 この道具はトントンと呼ばれるもの。

 圧送工が主役なら、コンクリートを円滑に打ち込むため、この木槌で型枠をトントンと叩くのは、裏方仕事と言って良いでしょう。

 建築現場は、常にチーム戦なのです。

 打設したあとを追いかけるように左官職人がコテで押さえていきます。

 コンクリート面に高低差があるのが分かるでしょうか。

 時間とともに硬化する特性があるから、こういった形状を形成できるのです。

 更にベテランの職人が平滑に仕上げて行きます。

 最後にトンボのような道具で広い面を押えるのですが、コンクリートが波打つ景色を是非ご覧ください。

 徐々に硬化して行く特性と、最後に水分が浮き上がってくることまで踏まえ、更に気温、湿度なども経験に照らしあわせながら、鉄筋コンクリートの躯体は形作られて行くのです。

 庇の端部も美しく仕上がっていました。

 11時過ぎ、午前の部が終了し、最後のミキサー車が現場を後にしました。

 職人たちも安堵の顔で、三々五々昼食へ向かいます。

 体を動かした後の昼食は、間違いなく美味しいはず。

 生コンのしずる感。

 人の手では成しえないことを実現する重機。

 そして、各職人の熟練の技術。

 職人にとっては日常ですが、物創りの現場は全てが非日常。毎日が祭だとも言えるのです。

 動画が簡単にUPできるようになり、そんな彼らの日常を伝えるのも私の仕事かなと思うようになりました。

 現在はゲツモク日記と同じサイトにUPしています。

 現場で写真を撮っていて、腰の据わっている職人を見ると、美しいとさえ感じます。

 トップアスリートの映像が美しいのと同じですが、彼らはほぼ一生現場で働きます。

 そんなフレッシュで、美しく、祭な現場を、今年も届けて行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。

文責:守谷 昌紀

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐6‐クルクルとハッカー

 ようやく冬らしい気温になってきました。

 と思っていたら、関越道では大雪で多くの車が立ち往生。ほどほどが良いですが、こればっかりは……

 「H型プランの平屋」は、いよいよ工事が佳境に入っています。

 鉄筋コンクリート造の建物は、まず外側の型枠を起し、内側に鉄筋を組んでいきます。

 コンクリートと鉄の長所を組み合わせたこの構造は、大空間を安価に造る為に考えられたと言われています。

 そのコストパフォーマスの良い躯体を、そのまま仕上げにしようというのが「コンクリート打ち放し」です。

 よって、電気の配線、LANの配管、水道など、全て躯体の中に通り道を確保しておかなければなりません。

 一度コンクリートを打設したなら、もうやり替えることは不可能なのです。

 それゆえ、現場には常に緊張感があるのです。

 今日の午前中、定例打合せに行くと屋根スラブの配筋が始まっていました。

 レッカーで鉄筋を仮置き。

 それを人力で配置。

 更に、鉄筋と鉄筋を一本ずつ番線で結束していきます。

 その作業量は膨大……

 職人はキビキビとハッカーという道具をクルクルと回しながら、結束して行きます。

 機敏過ぎて、カメラで追うのも四苦八苦でした。

 何故ハッキングという悪さをする輩と同じ名前なのかは知りませんが、色々な意味で「対極」と言って良いかもしれません。

 型枠は最終的には上部以外全て閉じられてしまいます。

 コンクリートが打設された重さに耐えれるよう、室内は無数のポストで支えられます。

 この暗い、ポストの林がどんな空間になるのか。

 型枠をばらすまでのこのワクワク感も、コンクリート打ち放しの魅力なのです。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐4‐ソリッド感と透明感

 先週、基礎の打設が終わった「コンクリート打放し H型プランの平屋」。

 週末、定例打合せがありました。

 Hの横線が二つの棟を繋ぐので、そこがエントランスになります。

 エントランス奥には裏庭があり、この空間もなかなか魅力的な空間です。

 南には、旧家としての和の庭が残っています。

 LDKの開口は、これらに面して開かれています。

 灯篭があったり、カエル石があったり。

 ミニマルな建物とこれらの外部を、どう結び付けるかも腕の見せどころです。

 CGのアニメーションをUPしてみます。

 打ち放しの建築は、コンクリートのソリッド感、ガラスの透明感をどう連続させるかが大切です。

 コンクリートの強度を活かし、かつ閉鎖的にならないよう腐心するのです。

 南からは光を取り込むために、ガラスの透明感が主役になります。

 俯瞰で見ると、そのリズムが分かりよいでしょうか。

 エントランスからの景色。

 90度右に曲がるとLDK。


西にキッチン。

 東にはテレビを含めた飾り棚があります。

 子供部屋も、出来る限りコンクリート打ち放しの良さを引き出したいと考えました。

 キッチン裏には奥さんの家事室も。

 極めてシンプルに、2つの棟を中央の動線でつないだコンクリート打放しの平屋。

 打ち放しはやり直しが効かないだけに慎重に現場は進んでいます。

 連続するソリッド感と透明感。

 これこそが打ち放しの魅力だと思うのです。

文責:守谷 昌紀

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住み継ぐ「コンクリート打放し H型プランの平屋」‐2‐解体でGO

 4月にプロローグを書いたにも関わらず、本日ようやく解体が始まりました。

 「コンクリート打放し H型プランの平屋」も、今回の新型肺炎の影響をまともに受けてしまいました。

 銀行の業務がストップし、なんだかんだとあっという間に3ヵ月が経過。

 なぜここまで時間が掛かったのかは分かりませんが、ようやくスタートが切れました。

 東隅にあるこお大楠木。

 こちらも倒壊の危険有とのことで、かなりの低さまで伐採が来まりました。

 これは前半戦のメインイベントとも言えます。実況中継レベルでお伝えする価値があるかもしれません。

 側面に回ると、「碧の家」で仕事をした監督がいました。聞くと解体だけの担当とのこと。

 折角、この計画を楽しみ尽くして貰おうと思ったのですが残念です。

 心なしか、ほっとした表情に見えたのは気のせいのはずですが。

 まずは瓦の解体から始まります。

 一枚一枚の手仕事で、暑い中本当に大変な仕事です。

 今日のビールは飛び切り美味しいはず。

 軒の深い室内から、南の庭をみるとの日本家屋の良さが良く分かります。

 一度は、フルリノベーション案も提出しているので、愛着がない訳ではありません。

 反対側に回ると、影の正体は骨董品の山でした。

 南庭の先にある正門はこの構えです。

 これらは間違いなくお宝のはず。

 何なのかは分かりませんが、古いという迫力だけは伝わってきます。

 鶴の置物の繊細なこと。

 箱の側面には大正9年の文字と○○所有という文字も読み取れました。

 良い空間を創り上げる為には、物が少ない方が良いのは間違いありません。

 それで、クライアントには「迷ったら捨てて下さい」とお願いします。「絶対に必要な物は迷いませんから」とも。

 反対に、買うときは「一生添い遂げられるか」という観点でお願いしますとも言っています。

 そういう意味においては、これらは一生どころか三代に渡って引き継がれてきたものです。

 ということは残すべきもの?

 しかし、1年の間に1度も着ていない服も、処分でお願いしますとも伝えます。

 そう考えれば処分すべきもの?

 勿論判断に正解はありません。迷い、悩むことが一番大事なのです。

 禅問答のようですが、これも真理です。答えが出ないくらい悩むなら、それはどちらも正解なのです。

 解体が進まなければ、新家屋が建つことはありません。

 この旧家に思い入れのあるお父様、お母様にとっては、とても寂しいことだと理解しているつもりです、

 しかし、その寂しさより若夫婦家族が、本当に幸せだと感じられる建物にすれば、何とか理解して貰えるのではと思っているのです。

 スタートが遅れた分、年内竣工は難しいでしょうか。

 兎にも角にも、解体でGOなのです。

文責:守谷 昌紀

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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